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「掛け捨ての保険」VS「貯まる保険」~「りんご」と「みかん」どちらがよい?

二十四節気:大暑 七十二候:桐始花結(初候)

生命保険には「掛け捨ての保険」と「お金がたまる保険」があり、どちらがよいのかが話題になります。しかし、どちらがよいのかという議論はナンセンスであり、「りんご」と「みかん」の良し悪しを議論するようなものです。


▶「掛け捨ての保険」VS「お金がたまる保険」

生命保険に関して、昔から話題になることがあります。それは「掛け捨ての保険」と「お金がたまる保険」のどちらがよいのかという問題です。「掛け捨ての保険」は定期保険といい、期間の定めがある保険です。保険期間が終われば保障はなくなります。「お金がたまる保険」の代表例は「終身保険」です。保険期間は「終身」で、加入した人が生きている限り、保障が続きます。 

定期保険と終身保険(イメージ)

「定期保険」は保険期間が終わると、何も残りません。健康なまま、保険のお世話にならなければ、払った掛け金は一円も戻ってきません。「終身保険」はずっと保障が続いているので、途中で解約するとお金が戻ってきます。
 
「定期保険派(掛け捨て擁護派)」の人たちは、少ない掛け金で大きな保障を得られる「定期保険」のメリットを強調します。お金をためるのは保険でなくてもできるので、「終身保険」のような保険に加入するのは賢い選択ではないと主張します。それに対して、「終身保険派(お金がたまる保険擁護派)」の人たちは、ほとんどの人は長生きをするのだから、一定の保障を確保しつつ、お金がたまる保険のほうがよいと強調します。お金が戻ってこない「定期保険」は掛け金がもったいないと主張します。 

はたして、どちらの主張が正しいのでしょうか?

▶「りんご」と「みかん」のどちらがよい?

結論からいいますね。
その質問がナンセンスです。
 
いいも悪いもありません。「定期保険」には「定期保険」の役割があり、「終身保険」には「終身保険」の役割があります。このような議論は、「りんご」と「みかん」のどちらがよいかといった議論と同じです。 

りんごとみかんを比べる意味は?

 「りんご」と「みかん」のどちらが好きかというのは、好き嫌いの問題として「あり」だと思います。けれども、「りんご」と「みかん」のどちらがよいかという議論はないでしょう。それぞれ別の果物なのですから。
 
「定期保険」と「終身保険」のどちらが好きかという話なら、それは好き嫌いの問題なので、お客さんが自由に決めればよいことです。しかし、良い悪いの話になると、価値観の問題になってしまいます。少なくとも、保険を取り扱う人たちは、どちらか一方の肩を持つということは、よいことではないと思います(実際には、けっこう行われていることですが)。
 
「定期保険」と「終身保険」は役割が違うので、その役割にふさわしい活躍の場所を与えてあげればよいのです。「りんご」を食べたいときは「りんご」を食べ、「みかん」が食べたいときは「みかん」を食べればよいのです。好き嫌いがなければ、どちらも食べればよいのです。
 
たとえば、働いているときの保障を充実させたいのであれば、期間限定の「定期保険」に加入します。お金はたまりませんが、安い掛け金で大きな保障を得ることができます。リタイアした後もずっと続くような保障が欲しいのであれば、「終身保険」に加入します。「終身保険」はお金がたまっているので、歳をとってからお金が必要になれば、解約することで、たまったお金を使うことができます。
 
どちらの保険も保険なので、保障をメインに考えれば、どこで使えばよいのかがわかります。どちらがよいかという議論をするよりも、シンプルな話です。

▶保険でお金がたまるしくみ

ところで、「終身保険」は、なぜお金がたまるのでしょうか?「終身保険には、何か特別なしくみでもあるのかな?」と思うかも知れません。
 
実をいうと、「終身保険」に特別なしくみはありません。保険の性質上、「終身保険」はお金がたまるようにできています。
 
下の図をご覧ください。青い線(右上がりの線)は、年齢に応じた掛け金(保険料)を示しています。年齢を重ねると死亡率も高くなります。したがって、死亡率をそのまま保険料に反映させると、図のように右上がりの線を描きます。 

保険でお金がたまるしくみ(イメージ)

毎年掛け金が値上がりすると、負担がたいへんです。そこで、毎年同じ金額になるように掛け金(保険料)を調整します。調整後の掛け金が赤い線で示されています。このように調整すると、若いときは実際に必要な保険料よりも、多めの金額を払うことになります。この払いすぎた差額が将来のためにプールされて、年齢が上がったときの負担を補います。
 
つまり、余分に払った分のお金が保険の中にたまっている、ということです。だから保険を途中でやめるとお金が戻ります。なお、プールされたお金は一定の利率で運用されます。
 
期間の長い保険の場合、年齢を重ねるほど、年齢に応じた掛け金のカーブは急になります。その分、プールする金額も大きなものになります。人の一生において最長の期間は「終身」なので、「終身保険」はプールする機能が最大になります。
 
注意して欲しいのは、期間の長い保険は金利の影響を受けることです。一般的な「終身保険」は固定金利で運用されています。将来金利が上昇したときは不利な契約になってしまいます。なので、保険のプランを考えるときは、まず「保障」をメインに考えたほうがよいでしょう。必要な保障をしっかり確保した上で、「終身保険」のような長めの保険を検討するのがよいと思います。

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