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一人暮らしのはじまり:自転車に乗れない自分とチャリ通の街

今春、私はようやく一人暮らしを始めた。

「ようやく」とつけたのは、3年ほど前から計画自体はあったものの、実行が延び延びになっていたから。緊急事態宣言で行動を阻まれたり、仕事も立て込んだりしてなかなか踏み切れずにいたのだ。


やっとの一人暮らしに対し、ワクワクした気持ちや高揚感があるかというと、これが案外そうでもなかった。もろもろの審査や支払いを終え入居日が確定した日、私の口から出たのは「やった!」や「わーい」といった歓声ではなく、「うむ」だったのだ。嬉しいは嬉しいが、浮かれることはなかった。

3年前の自分だったら、もっとはしゃいでいただろう。その変化が、自分でも少し寂しいように感じた。


さて入居したのは、駅から徒歩20分ほどの距離にあるアパートである。
目の前の歩道はあまり道幅がないが、自転車がビュンビュン通る。駅から距離があるぶん、自転車人口が多いのだろう。

特に通勤・通学ラッシュの時間帯には、1分に自転車3〜4台とすれ違っているように思う。その種類もママチャリにロードバイクにミニベロとさまざまだ。



初めてこの歩道を一緒に歩いたとき、母は眉をひそめ私に言った。
「あんたは自転車乗れないから、歩くしかないよね。自転車とぶつからないよう気をつけて」



何を言っているのだ、と私は返した。
確かに10年以上自転車には触ってもいないが、乗"れ"ないかどうかはやってみないと分からないだろう。そりゃ10年ブランクがあれば安定して乗れる自信があるとはいえないけど…いや、ないに等しいけど…乗っていたときもよく転んでたし…


ただ幸いなことに、私は歩くのが好きな方だ。気候と腹の調子さえ問題なければ、20分や30分歩くのは苦ではない。

だから自転車に乗れず(乗らず)とも、新しいこの通勤路を楽しく歩いていけたらと思う。
もちろん、行き交う自転車には気をつけつつ。


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