一つ歳を重ねて
見えない何かに守られていた幼少期。
大抵のことは許されたし、大抵のものは手に入った。
22時半を過ぎるとちょっぴりソワソワもしたし、
23時を過ぎたらそれはもう立派な夜更かしだった。
投げたボールを取ってはくるけど、
咥えたまま離してくれなかった今は亡き愛しき飼い犬。
私を見つけるなり擦り寄ってきた近所の飼い猫。
実家の近くにあったケーキ屋さんのフランボワーズ。
祖母におつかいを頼まれて何度も通った
お団子屋さんのみたらし団子とお稲荷さん。
大人になると、許されないことが増える。
ある程度のものは手に入るけど、
色々と考えることが多いなりに妥協を覚えた。
それでもやっぱり好きなものは好きなままだし、
小さい頃に見たものや感じたことは、
真空パックされた状態で私の中に眠ったまま。
箒に跨って遊んでいた幼少期。
赤い口紅や靴に憧れたし、
靴の踵を3回打ち鳴らすのが癖だった。
年甲斐もなく、いつまでも何かに憧れていたい。
何かを信じていたい。
有栖川リル
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