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『子どもへのお手伝い』どこまで手伝えばいい?現役園長が解説します。※発表用資料のみ有料

皆さんは子育てや保育の中で、『子どもへのお手伝い』に困ったことはありませんか?

「やって~!」と言われた時に、どこまで手伝えばいいんだろう?できれば自分でやって欲しいけど……子どもは「やって」って言うし……。これって過保護?それとも放任?どこまで手伝えばいいの?

子どもへのお手伝いは、知識を学んだ保育士でさえ、日々悩みながらおこなっています。大人がやりすぎては、子どもが挑戦する機会を奪ってしまいますし、やらなさすぎると、やる気がなくなってしまいます。

子どもの学びは「できる」と「できない」の間にあります。そこを上手に援助してあげることが大切です。

今回は、保育士が養成課程で学んでいる『こどもへのお手伝い』の距離感について解説します。この記事を最後まで読むと、子どもへのお手伝いが少しやりやすくなるかもしれません。ぜひ、最後までご覧ください。

※有料部分は保育士向けに資料(PowerPoint)がダウンロードできるようになっています。園内研修や保護者会で「発達の最近接領域」を取り扱いたい方は有料記事の購入をお願いします。PowerPointには台本も記載されていますので、そのまま発表用の資料として使用できます。

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園長コマツ
とある私立認可保育所の園長です。 子どもや保護者、職員みんなが活き活きと暮らせる保育園へ向けて悩みながら改革中。 自分の取り組みや学びをNoteを通して発信します。 プライベートでは二児の父。 好物はハンバーグ。



発達の最近接領域について

発達の最近接領域とは?

保育の用語に『発達の最近接領域』という言葉があります。保育業界では比較的メジャーな言葉なのですが、この考え方を知ると、子育ての場面でも役に立つ時があります。

発達の最近接領域とは?
ロシアの心理学者であるヴィゴツキー(Vygotsky)によって提唱された理論です。発達の最近接領域とは、"現時点で自力で課題を解決できる水準"と"他者の助けを借りれば解決できる水準"の差の領域を指します。

この言葉だけ聞くと、なんだか難しく感じますよね。もう少しわかりやすい言葉にすると、次のようになります。

子どもへのお手伝いを考える時に…
「自分でできること(完成した水準)」
「自分ではできないこと(未完成な水準)」
「自分の力では無理だけど、誰かの力を借りればできること(可能的水準)」⇒発達の最近接領域
の3つの領域に分けて考える。

この「自分の力では無理だけど、誰かの力を借りればできること(可能的水準)」が発達の最近接領域です。

子どもへのお手伝いの具体例があるとわかりやすいので、「着替え」を参考に解説します。


子どものTシャツを着替える場合

ともや君へTシャツを着るお手伝いをすることになりました。ともや君は一人ではTシャツを着ることはできません。ここから、ともや君の着替え能力をもう少し分析し、発達の最近接領域に当てはめて考えます。

自分ではできないこと(未完成な水準)
着替えを一人でおこなう
自分の力では無理だけど、誰かの力を借りればできること(可能的水準)
首を通してもらえば、一人でTシャツを着れる
自分でできること(完成した水準)
袖の中に腕を通す

ともや君はTシャツを一人で全部着る事はできません。ただ、袖の中に腕を通すことはできます。つまり、Tシャツの首を誰かに通してもらえば、Tシャツを着ることができます。

首を通す作業はともや君には大変な作業です。そもそも頭の出口は見えませんし、両手の力加減を平等にかけ、首も固定しなくてはなりません。

ここを大人のお手伝いをしてもらいながら、粘り強く挑むことによって、ともや君はちょっぴり器用になったり、Tシャツを着るコツが分かったり……達成感を味わったりします。こうやって『発達の最近接領域』の中で、ともや君は発達していくわけです。

「その子にとって、ちょうど良い挑戦」それが発達の最近接領域と言えます。そして子どもが自信を持ちながら、ちょうど良い挑戦を繰り返していく事が、発達において最も望ましい、とヴィゴツキーは説いています。


放任と過保護の境目は?

上記で解説してきたように、子どもにとっての発達は「発達の最近接領域」の中が最適です。大人が子どもへのお手伝いを考える場合、放任と過保護の境目に迷う方も多いと思います。

この発達の最近接領域の考え方を当てはめれば、少し気持ちが楽になるかもしれません。先ほどの、ともや君のTシャツを着るお手伝いを例にします。

ともや君は、一人でTシャツを着ることは難しいです。その状態で「一人で着なさい」とやらせようとするのは放任と言えます。明らかに一人でするのが難しいのを知っていて手伝わないわけなので、援助者としては少し無責任ですよね。

反対に、ともや君ができる部分まで全てやってしまうのは過保護です。ともや君の本当の育ちを考えると、ゆくゆくはTシャツを一人で着れる方が望ましいですからね。

その子にとって、ちょうど良い挑戦をできるようにしてあげることが支援と言えます。親や保育者はこの部分を見極める事が重要です。


『子どものお手伝い』を適切にするには?

それでは、子どものお手伝い、支援を適切におこなうためには、どのような事に気を付ければよいのでしょうか?


子どもの出来ること、出来ないことをよく観察する

まず大切なことは、子どものことをよく観察することです。この子は何ができて、何ができないのか?完成の水準と未完成の水準を分類できなければ、適切な支援はできないでしょう。

子どもの出来ることと出来ないことを観察するためには、子どもが挑戦しようとする事を見守る姿勢が必要です。挑戦を早めにストップをかけてしまっては、出来るのか出来ないのかが判断できません。しかし、挑戦には怪我などのリスクがつきものです。

子どもの安全を確保しつつ、挑戦を見守る。そしてよく観察する。
それが適切な支援をおこなうための1歩と言えるでしょう。


発達の知識を学ぶ

子どもの発達には順序があります。赤ちゃんで言えば、まずは寝返りをし、ずり這いをし、ハイハイをし、やがて歩きます。個人差があるものの、順序は同じです。
大人が、発達の最近接発達領域の部分を支援するためには、「ずり這いがきたから、次はハイハイかな……?」のように、先の発達を知っておくと必要な支援方法が見えてきます。

保育士向けの本ですが、子どもの発達を写真付きでわかりやすく解説している本もあるので、オススメのものをご紹介します。

オススメポイント
① 0歳~6歳児の生活習慣の支援方法がまとまっています。
② 排せつ・食事・睡眠・着脱・清潔の5つの項目にわかれていて見やすいです。
③ きめ細かい内容がてんこ盛りなので、お手伝いの具体的な方法も理解できます。


「"気持ち"によって、できることは上下する」ことを受け入れる

最後に大切なのは、発達の最近接領域は子どもの心情によって上下するということです。支援をする上で、発達の最近接領域を意識することは大切です。しかし、子どもはその時の状況によって、できることと、できないことが変化します。

疲れた、甘えたい、手伝ってほしい……そのような状態の時は、どうぞ十分に気持ちに寄り添ってあげてください。心に寄り添う事も、支援の1つです。また、支援しようと肩に力が入りすぎると、子どもも大人も疲れてしまいます。

子どもはできること、できないことを行ったり来たりしながら……少しずつ前に進んでいきます。ちゃんと自分で成長できる力を持っています。大人は子どもの心の安全基地として、寄り添うことを大切にしてあげてください。


まとめ

発達の最近接領域とは?
「自分でできること(完成した水準)」「自分ではできないこと(未完成な水準)」「自分の力では無理だけど、誰かの力を借りればできること(可能的水準)」の3つの領域に分けて考える理論。

放任・支援・過保護の違いは?
明らかに一人ではできない事をやらせようとすることが放任
・できることまでやってあげすぎる事が過保護
・本人にとって「ちょうど良い挑戦」の見守りが支援

『子どものお手伝い』を適切にするには?
子どもの出来ること、出来ないことをよく観察する
発達の知識を学ぶ
"気持ち"によって出来ることは上下することを受け入れる

以上です。お役に立てれば幸いです。

「発達の最近接領域」について、園内研修や保護者会で取り扱いたい方は、有料記事の購入をお願いします。PowerPointには台本も記載されていますので、そのまま資料として使用できます!

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