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子どものご飯、好き嫌いにどう向き合う?

皆さんは子どもが急に好き嫌いが多くなって、戸惑ったことはありますか?前まではパクパク食べてくれたのに……急にイヤイヤして野菜も食べてくれない。そうなると栄養面でも不安になりますよね。

しかし、子どもの好き嫌いにはちゃんと理由があります。その理由は味覚を感じる器官”味蕾(みらい)”にあると言われています。味蕾の発達や好き嫌いにどのように対応していったら良いのかを解説します!


園長コマツ
とある私立認可保育所の園長です。 子どもや保護者、職員みんなが活き活きと暮らせる保育園へ向けて悩みながら改革中。 自分の取り組みや学びをNoteを通して発信します。 プライベートでは二児の父。 好物はハンバーグ。

人間が持つ力の1つ「味蕾(みらい)」って知ってる?

味覚の種類と仕組み

人間が持つ味覚は5つあると言われています。皆さん、全部言えるでしょうか?

・甘味
・塩味
・酸味
・苦味
・うま味

この5つの味覚をどこで感じると思いますか?もちろん舌!と答える方が多いでしょうが、それは半分正解です。口の中には味蕾(みらい)という小さな細胞があり、ここで味を感じていると言われています。

味蕾(みらい)は舌だけではなく、上あごや喉の奥にもあると言われています。味蕾(みらい)の数は5,000~10,000個ほどあると言われています。所説ありますが、この味蕾(みらい)が一番多い時期が乳幼児期と言われています。味蕾(みらい)は年齢を重ねるにつれて、変化していきます。決定的な説は確定していませんが、一般社団法人日本味覚協会はこの味蕾の変化について2つの説を唱えています。

年齢を重ねることによる未来の変化説
・乳幼児期の子どもに比べて高齢者は味蕾の数が1/3まで減少する。
・味蕾の数は減少しないが、味覚を伝える情報伝達系が変化する。

一般社団法人日本味覚協会

味覚について、まだわかっていない事があるなんて、人体の神秘に溢れていますね。


味蕾(みらい)が感じる五味のシンパシー

人間が物を食べた時、味蕾(みらい)で五味を感じ取り、その情報を脳に送ります。味蕾(みらい)が五味を感じ、脳に情報を送る際にこんな風に情報を送っているそうです。

・甘味⇒エネルギー源のシグナル
・塩味⇒ミネラルのシグナル
・うま味⇒タンパク質のシグナル
・酸味⇒腐敗したもののシグナル
・苦味⇒毒のシグナル

例えば、ピーマンの苦味は毒、トマトの酸味は腐敗、と感じ取ってる可能性があるのですね。


子どもの好き嫌いはちゃんと理由がある

"好き嫌い"の視点を変えてみよう。

これまで人間が味を感じる仕組みについて解説してきました。「好き嫌いが増えた」という事はもしかしたらネガティブに感じる人も多いかもしれません。しかし、見方を変えれば次のような見方もできるのです。

  • ちゃんと味を感じる機能が発達している。

  • 苦味・酸味など”もしかしては食べてはいけないもの”として判断をちゃんとしている。

食育のガイドラインに「好き嫌いをなくす」という言葉は出てこない。

子どもの好き嫌いが増えることで大人がイライラしてしまうのは、自分が提供したご飯を拒否されるイラ立ちと、好き嫌いなく満遍なく栄養を摂って欲しいという成長への願いが込められていると思います。

しかし、厚生労働省が発表している、保育園や家庭で取り組む『食育推進基本計画』には「様々な食べ物への興味や関心を持つ」と標記はありますが、”苦手な物を頑張って食べる”のような表現はありません。

むしろ、食べない事で保育士や親が不安になる、イライラするなどの影響は食を楽しむこととは逆効果に繋がりかねません。乳幼児期は色々な物を食べる経験よりも、食事の時間が楽しく、豊かな時間であることが求められます。

そのためには、大人が知識を学び、視点を変えていくことが求められていくでしょう。


子どもの食事、好き嫌いへの向き合い方の例

それでは、子どもの食事にはどのように向き合っていけばよいのでしょうか?具体例を挙げていきたいと思います。しかし、子どもの好き嫌いの理由は年齢やその子の個性によっても異なります。あくまで参考程度にして頂けると幸いです。

子どもの自己裁量を増やす。

1つ目の考え方は子どもの自己裁量できる部分を増やす、ということです。自己裁量とは自分で考え、自分で判断し、自分で処理することを指します。何を、どれだけ食べるか、子どもと相談して食事をすることを心がけてみましょう。"食事を自分ごと"として捉える感覚を養うことが大切です。

食べるという事は生きるという事、生きる主体は子どもです。したがって、何をどれくらい食べるかは本来、自分自身で決めていくべきことなのです。
とはいえ、自分自身の力で食事を作ることができない子ども達は、提供された食事の中で食べる/食べないを決めています。「これくらいは食べて欲しい」という親心はとても理解できますが、子ども達が自分で決めた量や食べようと決めたもの、その意思決定を尊重してあげてもらいたいです。

食べる食べないはともかく、苦手な物でも出して、「食べる機会」は保障する。

子どもと相談して食べる物や食べる量は決める。ただ、注意して欲しいのは「食べる機会」は保障してあげるという点です。「相談しても、いつもいらないって言うから……出すのをやめました」という事態はできれば避けてください。

なぜなら、子どもの味蕾はまだ発展途上であり、その子なりに食べられる物を少しずつ増やしていっている途中です。どんなキッカケでその食材を食べるかは、本人にもわかっていません。だからこそ、一口分だけでも良いので食卓に並べるようにしてみましょう。

「それまでは苦手だったけど…ある事をきっかけに一口食べてみたら美味しかった」そのような経験は大人にもあります。食べようと思えた時に、その場にあるという事は大切なことなのです。

大人も同じ物を食べ、美味しい表情を見せて、興味をもらうように働きかける。

先ほども少し触れましたが、子どもの食は発展途上であり、どのようなきっかけで食べられるようになるかは本人にもわかっていません。ただ、きっかけの1つに「身近な人が美味しそうに食べていた」という事は要因としては大きいでしょう。

私はアルコールが苦手で、進められてもずっと飲むことを避けていました。ただ、大学生の時、夏のアルバイト後にスタッフが美味しそうにビールを飲む姿を見て「美味しそうだな…一口飲んでみようかな…」と思ったものです。(結果的に苦手なのは変わりませんでしたが。)

食への興味は、その場の環境によって大きく変動します。子ども達にとって保育者や親は、安心できる大事な人的環境です。その人達が美味しそうに食べている食材であれば「自分も一口食べてみようかな」と自分から興味を持つようになります。そのために子どもと同じものを美味しそうに食べている姿を見せていくことは効果的なのです。


まとめ

・人間は口の中の細胞である味蕾(みらい)で味を判断し、脳に情報を送っている。
・味蕾(みらい)が一番多い時期が乳幼児期と言われている。
・味蕾(みらい)は年齢を重ねるごとに、変化していく。

年齢を重ねることによる未来の変化説
・乳幼児期の子どもに比べて高齢者は味蕾の数が1/3まで減少する。
・味蕾の数は減少しないが、味覚を伝える情報伝達系が変化する。

一般社団法人日本味覚協会

・味蕾は次のように味の情報を脳へ送っている。

・甘味⇒エネルギー源のシグナル
・塩味⇒ミネラルのシグナル
・うま味⇒タンパク質のシグナル
・酸味⇒腐敗したもののシグナル
・苦味⇒毒のシグナル

・子どもの好き嫌いには理由がある。酸味や苦味は「身体にいれてはいけないもの」とちゃんと判断している見方もできる。

・食育のガイドラインには「好き嫌いをなくす」という文言はない。

・子どもの食事、好き嫌いへの向き合い方の具体例
①自己裁量の部分を増やす。
②食べる食べないはともかく、食卓には並べる。
③身近な人が美味しそうに食べている姿を見せる。

少しでもお役に立てれば幸いです。
よかったら試してみてください!


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