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映画日記その311 「コヴェナント 約束の救出」


2018年、アフガニスタン。アメリカ軍の曹長ジョン・キンリー(ジェイク・ギレンホール)は、部隊を率いてタリバンの武器や弾薬の隠し場所を探していた。部隊は爆発物製造工場を突き止めるが、そこに多数のタリバン兵が現れ、キンリーと彼が雇ったアフガン人通訳のアーメッド(ダール・サリム)以外が命を落とす。腕と足に被弾して動けないキンリーだったが、アーメッドによってアメリカ軍のもとへ運ばれる。その後回復し、家族のもとへ戻ったキンリーはアーメッドと彼の家族がタリバンに追われていることを知る。

シネマトゥデイ

2021年、米国はアフガニスタンからの撤退を完了した。しかしこれで平和が訪れるのかというと、残念ながらそんなことはない。アフガニスタンに米軍がいなくなったことで、政権はタリバンが掌握することとなる。

そして米軍に協力してきたアフガン人は家族もろとも虐殺されるという悲惨な事件がおきることとなる。それは国連が把握しているだけでも160件にのぼるというのだ。

そんなアフガニスタンでは今なお数千人(映画ではたしか約3千人とか?)のアフガン人が家族とともに身を隠して、怯えながら生活しているそうだ。身を隠している者からしたら、こんな思いが募るだろう。

「おまえら(米英)を信用して命を預け、あれだけ協力してやったのに、なにを今さら置き去りかよッ、裏切られたッ!」

本作の舞台は2018年、アフガニスタン。前述のアフガン情勢を背景にした、ひとりの米国人によるアフガン人通訳の救出劇である。いくつかの実話を集めてつくったフィクションというので、おそらく背景やひとつひとつのエピソードは実際のものでも、救出劇は創作だろうか(←個人的な憶測)。

戦争は始めることより終わらすほうがむずかしい、とよく云われる。そして仮に終わらせたとしても必ず遺恨が残り、それがつぎの戦争の火種ともなるのだ。

またこのように人類の歴史に争いが絶えないのは、残念ながらわれわれホモ・サピエンスの悲しい性でもあるんだな。本作はそんな戦争のやるせなさの一端が垣間見れる。

とはいえ、ラストはアメリカ映画らしいお約束の展開で、映画としてはスッキリ。そしてエンドロールでは今なお続くアフガニスタンの現実が記されて流れてくる。そういう意味では、本作は映画としても楽しめるし、また中東問題を考えるいいきっかけにもなるのでは。


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