読書 - 「大きな嘘の木の下で」から学ぶビジネスにおけるマインドセット
以前ミャンマーに出張中、夜kindleで面白いなぁと思いながらあっという間に読み終えてしまった破天荒フェニックス。OWNDAYSの社長による買収から現在に至るまでの現実とフィクションの境目が絶妙なボリューミーな小説です。
田中さんは構成の練り上げも用意周到ですごいなと思いました。YouTubeか何かで、小説も読み漁って研究に研究を重ねたと仰っていたので、思考と行動力の重要性を「背中で見せる」漢です。
今回の「大きな嘘の木の下で」は、テーマ別に世の中の常識的な考えに対して、経営の実体験に基づき異論を唱える示唆に富む内容でした。天と地の差ですが同じ経営者として多くを学びました。個人的に刺さった内容をシェアします。
■ 仕事と労働の違い
第一に仕事と労働の違いについてです。ざっくりまとめると以下です。
ポジティブ、プロアクティブに取り組む = 仕事
嫌々、仕方ないから等の理由でネガティブに取り組む = 労働
プロアクティブに取り組んでいる仕事は本人にとっては遊びであったり、趣味といったものと感覚としては変わらなくなるということです。
一般的な近しい話では、3人のレンガを積み立ててる職人の話ですよね。何してるんですかという問いに対して、作業自体のファクトだけの回答からその先を想い描いている回答まであり、視点の違いでこうも人って変わるんだよ、転じて君はどうだい?そしてどれを目指すの?といった話です。
ただ、やはり田中さんが言うから説得力があり、響くものがありました。自分に照らして考えた時に、複数事業をしているので9割の事業は仕事、1割の事業は労働だと分かりました。さてこの1割の事業どうしようかと考えていると残りの二つで解が明確になりました。
■ 目的と目標と手段
次に、目的と目標と手段の違いについて。これは特に深かったです。田中さんが伝えたいのは単なる言葉の定義の違いではなく、各々が達成可能か否かをきちんと理解しないと、本末転倒になりドツボにはまる可能性があるよ、と警鐘を鳴らしている点です。
要は目標だけ達成できるが、目的と手段は達成できない、ゆえに目的と手段は混同されやすいということでした。
混同しても別に大したことないんじゃないかと思うかもしれませんが、例えばOWNDAYSの場合だと以下になります。
見ての通り、目的と手段は明確な終わりがなくエンドレスです。そして手段がいつの間にか目的になってしまっていると。世界的なアイウェアブランドを作ることに必死になるあまり、当初目的の関わる人たちがいつの間にか疲弊しきって豊かになるどころか、真逆の状態になる可能性があると、そのように指摘しています。
これは、経営理論でよく取り扱われるようなアメリカの鉄道会社が自分たちを鉄道の会社だと考えずに、人を移動させるための会社だと考えれば衰退を免れたいう話とも通ずるものがあると思います。
個人的には、また自分の会社においても、目的、目標、手段は本当に難しくて、この世の中、日本なら何でも取り組もうと思えば取り組めるので(成功するかはさておき)、自分にとっての腹落ち感を得る各々の設定は難しいなぁと日々感じます。
■ 選択
しかし、田中さんの「選択」に対する考え方により、この手の一連の「考える=生産性がある」というよりは「悩む=生産性がない」事柄に対して、どのように取り組むべきかのマインド面からのアプローチが概ねクリアになりました。
田中さんは「選択」を自分の中で必要以上に重要なことだと思うなと言っています。例えば、孫さんや三木谷さん、どちらもほぼ対極的な人生を歩んでいるが、ともに成功しているだろうと。イチローだって野球やってなくても他の業界で一流になってるはずだと。
結局やる奴はやるということで、選択自体に意味はなく、選択を正解だったと思えるように努力するだけだと結論付けていました。
いろいろとすっきりしました。たった1500円でこういう出会いがある読書は素晴らしいです。