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イ・ラン「神様ごっこ」の全曲の和訳まとめ

韓国のフォークシンガー、イ・ランの2枚目のアルバム「神様ごっこ (신의 놀이)」の和訳をまとめました。


2016年のアルバムということで結構前の作品にはなりますが、歌詞と演奏の持つ雰囲気に興味を持ち、歌詞を和訳してみました(一部引用)。和訳部分のみを記載しています。

1枚目のアルバム「ヨンヨンスン (욘욘슨)」、3枚目のアルバム「オオカミが現れた (늑대가 나타났다)」の間に挟まれる形の作品であり、割と過渡期的な作風だったりします。1枚目の爽やかなフォーク的な曲と3枚目の神秘的な不思議な雰囲気の曲が混在していて、とっつきやすさと一聴しただけでは捉えられない緻密な雰囲気の両面があります。

(追記)



まずタイトルについて、直訳すると「神の遊び」みたいになると思うのですが、「神様ごっこ」とすることで的確に世界観が表されています。


1. 神様ごっこ (신의 놀이)

韓国で生まれて暮らしているのだがどんな意味を持っていらっしゃいますか
時には砂漠に放り出されるようなそんな感じがありますか
良い物語があっても作られはしないのなら、その良い物語について
信念が崩れ落ちる瞬間がやって来もしますか
最近も恐ろしく起きていることに向き合っていらっしゃいますか
中年の年齢でも絶望と挫折の重さはいつも同じですか
そうであるにもかかわらず偶然に会ったような物語を期待して
今日も彼らの隣の席で食事をされますか

聖杯を見つけようとする人と人と復習をしようとする人
結局はみなが家を飛び出し始まるそんな物語
単純な英雄は人々に代わって生贄として捧げられ
死を迎えて人々は彼のために涙を流し帰りますね
依然として人々は良い物語が出てくるのを待っているのでしょう
良い物語は香りを漂わせ人々はその匂いを嗅ぐのでしょう
すべての物語は生贄として捧げられるに作られる悲劇
喜劇は生贄が流した血を受ける入り口の広い形の皿

もしかすると私は映画を作ることで
神様ごっこをしようとしているのかもしれない
もしかすると私は映画を作ることで
神様ごっこをしようとしているのかも
依然として人々は良い物語が出てくるのを待っているのでしょう
依然として人々は良い物語が出てくるのを待っているのでしょう
依然として人々は良い物語が出てくるのを待っているのでしょう
依然として人々は良い物語が出てくるのを待っているのでしょう
私は良い物語を通じて神様ごっこをしようとしているのかもしれない

https://lyricstranslate.com/ko/sin-ui-nol-i-shen-yang-gotuko.html

「神様」「英雄」「生贄」「聖杯」と物語的、神話的な雰囲気を前面に出している曲。抽象的な歌詞と三拍子の牧歌的な演奏。

2. 家族を探して (가족을 찾아서)

私の中にあるその歌を探して
私が住みたいその家を探して
私が愛したいその人を探して
私がなりたいその家族を探して

私の中にあるその歌を探して
私が住みたいその家を探して
私が愛したいその人を探して
私がなりたいその家族を探して

私はいつか後悔するだろうか
今日のお母さんの電話を取らなかったこと
一生お父さんを許さなかったこと
育てている猫を強く叩いたこと

私はいつか後悔するだろうな
(私はいつか後悔するだろうな)
今日のお母さんの電話を取らなかったこと
一生お父さんを許さなかったこと
育てているジュンイチを強く叩いたこと
(育てている猫を強く叩いたこと)

(これは何かとても大きく間違ったこと)
私の中にあるその歌を探して
(のようだ これは何かとても大きく間違)
私が住みたいその家を探して
(ったことのようだ これは何かとても大きく)
私が愛したいその人を探して
(間違ったことのようだ 間違ったことのようだ)

私がなりたいその家族を探して
(これは何かとても大きく間違ったこと)
私の中にあるその歌を探して
(のようだ これは何かとても大きく間違)
私が住みたいその家を探して
(ったことのようだ これは何かとても大きく)

私が愛したいその人を探して
(間違ったことのようだ 間違ったことのようだ)
私がなりたいその家族を探して

https://lyricstranslate.com/ko/gajog-eul-chaj-aseo-jia-zu-wotan-site.html

あえてコーラスで歌詞を少しだけ変えたり、小節ごとに歌詞が少しずつずれていく作りになっている面白い曲。割と日常的なことを歌っているように見える歌詞とこちらも三拍子のスローな演奏。

「ジュンイチ」というのはイ・ラン氏が飼っている猫の名前


3. 物語の中で (이야기속으로)

夜遅く木の上に上がって大きな声で泣いただろう
誰かが聞いて探して来てくれることを望んだのだが
誰も私を探しに出てくる人はいなかった
私を好きだと好きだと
言った人もいたはずだったんだが

道の上で毛をばたばたさせて座り、直ちに出発する旅行の話に
浮き立って話した話をまたしたその日も
私の記憶の中で私の時間の中で私の歴史の中で消えていき
無理やり思い浮かべて考えてみても何の感情も無いものだ

私を好きだと好きだと言った君だったんだが
君を好きだと好きだと言った私だったんだがということだ

https://lyricstranslate.com/ko/iyagisog-eulo-wu-yu-nozhong-de.html

シンプルな弾き語りと私的かつ抽象的な歌詞

4. 悲しくて腹が立つ (슬프게 화가 난다)

狭い部屋で絵だけ描いた
古いかばんに絵を集めた
友達と会えば楽しくて手を取った
親しく過ごしたかった私はみんなと
暗い部屋の中にいても私は花と木のことしか考えなかった
暗い部屋の中にいても私は花と木のことしか考えなかった
悲しくて腹が立つ 悲しくて腹が立つ
悲しくて腹が立つ 悲しくて腹が立つ
暗い部屋の中にいても私は花と木のことしか考えなかった
暗い部屋の中にいても私は花と木のことしか考えなかった
悲しくて絵を描いた怒りがあっちに飛んでいくね
暗い部屋の中にいて私は花と木の絵だけを描いた

https://lyricstranslate.com/ko/seulpeuge-hwaga-nanda-bei-sikutefu-gali-tu.html

このアルバムでは珍しくバックでずっとオルガンみたいな音が鳴っている。

5. 笑え、ユーモアに (웃어, 유머에)

ハーハーハーハーハーハーハーハーハーハーハーハー
ヒーヒーヒーヒーヒーヒーヒーヒーヒーヒーヒーヒー
ホーホーホーホーホーホーホーホーホーホーホーホー
ヘーヘーヘーヘーヘーヘーヘーヘーヘーヘーヘーヘー

(ハーハーハーハーハーハーハーハーハーハーハーハー)
笑え、えーえーえーえーえーえーえーえー
(ヒーヒーヒーヒーヒーヒーヒーヒーヒーヒーヒーヒー)
ユーモアに、にーにーにー
(ホーホーホーホーホーホーホーホーホーホーホーホー)
笑え、えーえーえーえーえーえーえーえー
(ヘーヘーヘーヘーヘーヘーヘーヘーヘーヘーヘーヘー)
ユーモアに、にーにーにー

https://lyricstranslate.com/ko/us-eo-yumeoe-xiao-eyumoani.html

歌詞を訳すような曲ではないですが… この曲のようなバラエティに富んだ作風が1枚目との違い

6. 東京の友達 (도쿄의 친구)

私はあなたに会いに仕事を放って泊まってるのに
あなたは仕事をしに沖縄に行ってしまっていて
私たちは仕事をしてこその人間で
仕事をしなかったら会うこともできない仲だろう
だから仕事をしてあなたに会いに東京に来た
あなたは仕事をしにどこかに行ってしまうだろう
私たちは仕事をしなければダメみたいだ
仕事をしなかったら会うこともできなかったから
あなたは仕事をしに沖縄に行ってしまった

私たちは仕事をして会い仕事をして別れるだろう
私たちは仕事をして会い仕事をして別れるだろう
私はあなたの仕事をする姿を見にここまで来たのだろか
私はあなたの仕事をする姿を見にここまで来たのだろか

あなたの名前はそのまま歌みたいだ
東京の仕事をしている可愛い人

https://lyricstranslate.com/ko/dokyoui-chingu-dong-jing-noyou-da.html

このアルバムの中で最も1枚目の作風に(特に歌詞が)近い曲だと思います。ただギターを弾くことはなくチェロの演奏と歌のみ

7. 普通の人 (평범한 사람)

普通の人が私は好きです
普通のカフェで会います
普通の服と靴を履いて
他の人たちと比べて目立つことはありません
普通の人が私は好きです
普通の日常を一緒に過ごします

かっこいい人は朝に起きて
鏡を見ながらどんなことを考えるのか
普通の人は鏡を見たら
突然ふと悲しくなるときがあるんですよ
普通の人の日記の中には
自身についての質問でいっぱいです
なぜ誰かがいつも注目を集め
なぜ私の話は私の耳にも入ってこないのか
道端を通り過ぎる動物も
私よりも良いものを掛けているみたいで
私の母親父親がいつか死んで消えたら
私は家も礼儀もない独居人になるんだろうか
そんな不安な質問と恐れがかわいそうだ
その話を聞いてあげたいです
普通の人が私は好きです
通り過ぎる道にその家に入ってみたいです

https://lyricstranslate.com/ko/pyeongbeomhan-salam-pu-tong-noren.html

日常に浮かぶ思いを比較的シンプルに書かれているような感じがする

8. 世界中の人々が私を憎みはじめた (세상 모든 사람들이 나를 미워하기 시작했다)

世界中の人々が私を憎みはじめた
私が彼らを愛していると言いはじめた時から
人々はおかしなものを褒めはじめた
例えば私がよく知っていることについて
実際に私がどんなことを話すかは重要とせず
人々は言葉と言葉の間のユーモア探しにだけ熱中した

私が行かなくてもいいパーティーに招待された
招待客名簿には 私の名前が間違って書かれていた

私は自主的に生きようと考えた
だから私が選択しない事柄について2回ずつ考えてみた
でも日常という名のもとに 食べたり飲んだりすることや
寝たり動いたりすることは 私にはどうすることもできなかった
無気力感や恐怖心がやってきたら
私は泣く代わりに自転車に乗って外を走った
私のように泣き方を 失くした多くの人々が
どこかに金をつぎこみ いっしょうけんめい汗を流していた

周りの人たちは 払い落せとよく言った
ヨガの先生も最後には手足を力いっぱい振り 払い落す動作をさせた
でもなぜ人々が私を憎みはじめたのかという考えだけは
簡単に払い落すことはできなかった
運動してお茶を飲んでも眠りはやってこず
私はキッチンの食卓に座り 友だちの帰りだけを待った
友だちが帰ってきて2階にあがり
ぼおっとしているうちに だんだん眠りがやってきた
ぼやっとしているうちに 友だちが帰ってきたら だんだんだんだん眠りがやってきた

おじいちゃんがニンニクをむいていたベランダで
お父さんがニンニクをむいているよ
おばあちゃんが掃除していた冷蔵庫を
お母さんが掃除しているよ
お母さんの服は私によく似あい
お姉ちゃんはだんだん私と違っていき
弟は太っちょになり酒をよく飲むようになり
ひょっとして私が死ぬ前に ひょっとしてお父さんが死ぬ前に
私たちは一度だけでも話しあえるだろうか
いつか私が 人に聞かなくても答えを知っているぐらいの大人になって
結局 私を傷つけたいくつかの事件には 実は何の理由もなかったということを
何の意図もなかったということを知ることになれば
そのまま私たちは

そのまま私たちは
顔を合わせればひたすら悲しくなり どんな会話もせず
あの時、ひょっとしたら一番楽しかった1時間あるいは2時間 いや1日の
その記憶を ふたりのどちらかが持ち偶然出会ったとしても
ただ笑って挨拶するだろうけど

実は私は全てを覚えているよ

あの時輝いていた髪の毛たちと
輝いていた歯たちと
あの時輝いていた単語たちと
あの時を思い出す手振りたちと
あの時を映していた鏡たちと
あの時と同じ習慣

起きるなり低い声で呼びかけた いくつかの名前たち

https://lyricstranslate.com/ko/sesang-modeun-salamdeul-i-naleul-miwohagi-sijaghae.html

上の和訳は以下の映像からの引用です。

アルバムの中でも印象的な歌詞。時間が経っていくことの描写が素晴らしい

9. 私はなぜ知っているの (나는 왜 알아요)

神は座っている
神は幸福だ
神は作る神を
それに幸せを伝えたいから

今は二人の神が座っている
二人の神は幸福だ
何もしないでいる
時々飛び回ってみたりもする

そして二人の神はお互いを眺めた
しかしなにも見えてこなかった
しかしそこには幸福があった
彼らの存在がそのようにあるから

私たちは幸福を知ることができない
私たちの存在がそのようにあるから
うんざりしながら食べ生きて見た
呪いを受けたかのように老いていく

そうしてときどき上を見上げてみた
そこにははっきりと何かがあった

私たちの存在は重く辛いのです
耐え難き量の人々に会うことになり
一人の人を感銘させることも難しくて
もう一度会うことのない人々と挨拶をかわし
理解することができる感情たちは少しずつ増えていき

それを話したり歌ったりすることはより辛くなっていきます

だけど
私はなぜすべて知っているの?

https://lyricstranslate.com/ko/naneun-wae-alayo-si-hanazezhi-tuteiruno.html

ここで再び神の登場。神と私たちの対比

10. 良い知らせ、悪い知らせ (좋은 소식, 나쁜 소식)

若者よ この地球へようこそ
夏は暑くて 冬は寒いところさ
丸くて湿っぽくてごたごたしてるところさ
そこの君 長く生きて100年くらいかな

セックスは安全に いのちを勝手に生み出すな
地球は神様じゃなくて サタンがつくったとさ
信じられないやつは 新聞を買って読め
いつの新聞でも どこの新聞でもいい

https://lyricstranslate.com/ko/joh-eun-sosig-nappeun-sosig-liang-izhi-rasee-izh.html

以下のページからの引用になります。

カート・ヴォネガット「国のない男」という作品からの引用の歌詞のようです。

おわりに

歌詞の面で言うと「神様ごっこ」や「世界中の人々が私を憎みはじめた」「私はなぜ知っているの」のような寓話的で抽象的なものと、「家族を探して」「東京の友達」「普通の人」のような私的で日常的なものと二つの大きな側面が感じられるように思います。

p.s.
ジャケットがローラ・ニーロっぽい

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