山本弘ありがとう


 小学3年生の頃、私は地球が滅亡する事を恐れていました。

1999年7か月、
空から恐怖の大王が来るだろう、
アンゴルモアの大王を蘇らせ、
マルスの前後に首尾よく支配するために。

ミシェル・ノストラダムス百詩篇 第10巻72番

 当時は「MMR マガジンミステリー調査班」という漫画が少年マガジンで人気でした。その中では「1999年に人類は滅亡する」「人類が666の印で支配される等」非常に恐ろしい予言があたかも事実のように紹介されていました。当時は今と違って非常にオカルトが流行っていたんです。図書館で読んだ核戦争の恐怖に関する本のせいもあり、僕は核ミサイルや巨大隕石で自分が死んでしまう事を恐れていたんです。

 そんな自分が小学5年生だった頃、偶然本屋で「トンデモ本の世界」という本を発見しました。これは故・山本弘さんが会長をされていた"と学会"による本で、前述のノストラダムスやUFO・常温核融合のようなオカルトを笑い飛ばす本でした。これを読んで僕はやっとMMRって全部ウソだったんだとわかって安心して生きられるようになり、霊感商法やカルト宗教にも騙されず今まで生きてこれる事ができました。トンデモ本の世界と、柳田理科男の「空想科学読本」は当時の自分にとっての宝物でした。(ただし山本弘自身は柳田理科男を嫌悪していました。仲良くしてよ。)

 山本弘ファンの僕は中学生でも引き続き山本の本を探しました。そこで「山本弘のハマリもの」という本や、山本弘と岡田斗司夫の対談本「ヨイコ」「メバエ」という本に巡り合いました。そこには三重県のクソ田舎に住んでいる中坊には全く知らない世界が広がっていました。映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲(原恵一)』が如何に面白いか、戦隊モノや特ソンの魅力、コミケには珍しくて面白い同人誌が沢山あるという事、「MADテープ」という物の存在などなど……。MADテープは元々「キチガイテープ」と呼ばれていて、それこそ80年代前半からビデオテープでアナログでダビングされていたんです。その文化がニコニコ動画を経て現在でも大人気だなんてすごいですよね。

↑70年代のアニメが2024年現在でもMADテープの題材なのもすごいですね。本当に貴重な音源ありがとうございます。

 私は山本と岡田からオタクとしての薫陶を受けました。そして、オタクって何て知識が豊富でウィットに富んでいるんだ。今は田舎に住んでいるけど、大人になったらオタクになってこの世の全ての名作アニメ・珍作アニメを見たいと夢見ていたんです。

 私は昔「オタクを名乗る以上、頭が良くなくてはいけない」と考えてはいました。それは、岡田や天国の山本に認められるような人間になりたいという意識も薄っすらとありました。今はもちろん、推し活もライトオタクもオタクの新しい形態だよねと思っているんですが、自分のホームスタンスは中学生の頃のオタク第一世代の人への憧れなんです。意識していませんでしたが、当時の自分が感じた夢がこのブログを始めたきっかけだったのかもしれません。
 山本弘様、あなたの本がきっかけで私はオタクになってしまいました。素晴らしい世界を教えてくれた事への感謝。えらい物を教えてくれたという、部活の悪いOBを見るような感情。その両方があります。このブログをもって山本弘様への手向けに代えさせていただきます。

  晩年には闘病や人間トラブルで慨嘆される事も多かったでしょう。本当にお疲れ様でした。自分は大人になってと学会のいろいろな良くない風潮も聞き、自然とと学会や山本氏からは卒業しました。山本氏の小説も一切読んでいません。ここ10年間、私の目にはずっと山本氏は「苦悩する人」として映っていました。
 鳥山明さん・いのまたむつみさん・TARAKOさんのように、1か月の間にたくさんの偉人が亡くなりめまいがするようです。その中でも山本さんは、自分だけが知っている偉人が死んだような気がして、私にとってはショックでした。
 せめて三重県の片田舎に山本さんを尊敬する元ファンがいた事を天国へのお土産にしてください。

 最後に山本さんが好きで僕も好きだったアニソンをBGMにしてお送りします。この曲は転調がすごくてカラオケではとても歌えないと言っていましたね。思えば僕がアニソンを好きになったのもこの曲がきっかけの一つでした。