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芸人って偉大だ。

いわゆる定職と呼ばれる職業ではない仕事をしている人の中で、芸人がずば抜けて不安の中で生きているような気がして、芸人にリスペクトを感じている。

ここでの「定職」は正社員という意味ではない。なので定職の対義語、「定職ではない職業」はアルバイト・パートのことではない。

一言で形容し難いので、それの特徴を挙げてみる。
・社会的なレールのない仕事、
・これさえやっときゃいいがない仕事、
・個人の能力に依存する仕事、
・自分のしたいことをやれる仕事、
・夢と呼ばれる仕事、
そんな仕事。

代表的な例として今思い描いているのは、ミュージシャン、バンド、アーティスト、芸術家、漫画家、カメラマン、スポーツ選手、モデル、俳優、エトセトラ、エトセトラ、エトセトラ、そして芸人。

芸人が一番、無形のスキルで、成果が形として残りづらく、時代の変化が早くて技術は確立しづらく風化しやすく、お金になりづらく、転職しづらい仕事なように思う。芸人で飯を食えるよう生きるということは、それらを覚悟して夢を見なければいけないということ。そう考えると芸歴が10年20年なんて話を聞いただけで、苦労や不安が伺える。子供の頃、なんとなく見ていたテレビの中の芸人がそんな先の見えない暗闇を歩いてきた人たちとは想像すらしなかった。

別になくてもいい仕事と揶揄されても、比較によって他の定職に簡単に負けてしまいそうな仕事だ。必要不必要で言われると不必要な部類に多くの人は入れるのではないか。

学校の委員会と部活動のようなものだ。委員会は学校の運営にほぼ確実に必要な仕事であるのに対して、部活動は個人の趣味的扱いでほぼ確実に必要ない。もちろん心身の発育のためにとっては〜〜などそういう話で言えば必要性を説くことはできるが、なくても学校は存続できてしまう。

「定職的な仕事」ほど他者への機能的・物質的な提供をしており必要視されやすい。一方で「非定職的な仕事」ほど心理的な働きかけであることが多く、数値化されない・評価しづらい・主観的なもので必要性は定職の下位に回されやすい。


本当にすごい。
自営業やフリーター、フリーランス、起業家、定職の道から逸れ、理想を追う人はみな芸人に似た生き様をしている。彼らだけじゃない。程度の問題であって、実は先ほど箇条書きで挙げた「定職ではない職業」の特徴はどの職業でも当てはまるのではないか。そう考えると、研究職や、新規事業立案、業務改善、新技術・新制度導入、もっとこうしたらいいんじゃないか、これではダメなんじゃないか、現状を変えようとしたり、先に進もうとしたり、見晴らしのない藪の中を進むような人もきっと「非定職的な仕事」をしている。見えているのに見えないところに、すごい人たちは生きている。

彼らの仕事は笑い、ならびに驚きや喜び、感動や心地よさなどの感情を与える。
彼らの仕事を「記憶に残る仕事」と呼びたい。




P.S.

ぼくは建築家なのだが、建築家という職業もまた非定職的であり定職的でもある。いや言い直そう、非定職的であれるし定職的でもあれるズルい職業だ。頼まれたことをその通りやり遂げてしまえば、形になって完成して、お金がもらえてしまう。安価で効率的に作ればお給料は高くなる。お金持ちから仕事を請け負えばお金持ち向けだがよりよいデザインができる。前と同じように作れば楽に済ませれる。

かといって考えれば考えるほど時間はなくなるし、氷山の一角の割合は小さくなって形にならない形で沈んでいく。そもそもお金が少ないと生活が苦しくなる。

今一度、芸人さんの鬼メンタルに倣いたい。





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