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掌編小説マガジン 『at』

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掌編小説マガジン at(あっと)。 これまで、ななくさつゆりがwebに投稿した掌編小説を紹介していきます。 とりあえず、100本! ※2024.6.18 いったん目標の記事10…
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2023年9月の記事一覧

情景102,103.「後ろの同級生」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「後ろの同級生男子」と「後ろの同級生女子」です。 電車通学。気になるひと。 ……話しかけるのって、アリか? イヤ……うーん。 両片思いってヤツなんですかね。 それぞれの視点で、淡い想いの行き先を覗いてみましょう。 こういう、視点が変わって見え方も変わってくる情景のお話、かなり好きです。 情景の醍醐味ですね。 お楽しみください。 ※※『あなたが見た情景』は、目の前の景色を眺めるように情景を思い描ける、ちょ

情景147.「鳴り止まない音」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「鳴り止まない音」です。 興奮冷めやらぬ感覚が日を跨いでなお後ろ髪を引く。 鮮烈な記憶のこと。 自分の内側にしばらく留まりつづけるあざやかな出来事。 それに心を奪われている間、外はとても静かで、余韻やこだまのように響く内側の音ばかりに耳を傾ける。 そんな経験、ありますか。 私も、なくはないです。 自分が何かをしたあとの余韻。 それに引きずられる感じでしょうか。 それに引っ張られるようにして外へと駆け出す

情景257.「海に碧を溶かした」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「海に碧を溶かした」です。 せっかくなら、気持ちがいい一日を過ごしていたいものですね。 晴れてゆく様子。それから晴れ模様を目にしたときの情景。 海を見て、山に登りたくなった。 もっと高いところから、見下ろしてみたかったのでしょうか。 見晴らしが広がっていく情景、お楽しみください。 ※※『あなたが見た情景』は、目の前の景色を眺めるように情景を思い描ける、ちょっとしたお話のあつまりです。※※ も大丈夫。 ぜ

情景260.「微睡みながら進みゆく」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「微睡みながら進みゆく」です。 昼下がりに雨が降っていた。 電車に乗ってシートに深く座りこむ。しだいに馴染んで、つい。 朝の電車とか、帰りの電車とか。 つい、窓の外を眺めているうちに、とか。 余談ながら、電車で居眠りというのは日本でこそごくありふれていますが、海外では諸々の事情からかなり珍しいことのようです。 でも、うとうとしちゃいますよね。 寝過ごすこともしばしば。 微睡み(まどろみ)ながら進みゆく情

情景213.「珈琲、飲むかい」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「珈琲、飲むかい。」です。 外がよく見える透明感あるオフィス。 静かで穏やかで、陽ざしや風の音すら拾えそう。 ふいに、はっとする瞬間を情景に納めてみたかった。 こちらの情景、白紙に素材を広げてイチから組み立てるイメージで書いてみたものです。 結果、できあがったのはよく晴れた朝の情景でした。 ふたりの関係性はゆるやかに良好でなおかつあいまいですが、大人の掛け合いって、えてしてそういうものが含まれることもあり

情景141.「この子は笑いの沸点が低い」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「この子は笑いの沸点が低い」です。 学校の帰り道。押しチャリをして歩く男子女子。 ところで、笑いの燃費ってなにさ。 帰り道。たまたま女子と一緒になった……。 ホントにたまたまだったかは、ともかくとして。 話してはじめて知る一面って、いっぱいありますよね。 笑いの沸点低くしてどんどん笑っていく日があってもいい。 というわけで、よい一日を。 よく笑ってる女子の情景、お楽しみください。 ※※『あなたが見た情景

情景132.「松風。或る寺を訪ねて」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「松風。或る寺を訪ねて」です。 急に涼しくなるものだから。 季節は移り変わるものよね、とか思いつつ。 松籟(しょうらい)とは松に吹く風のことです。 博多には承天寺という臨済宗の古刹(歴史あるお寺)があって、そこの号は万松山と言うそうです。 博多は海に近く、当時の承天寺は海辺もより近かったでしょうから、海風に馴染む松原の、と言った雰囲気があったのでしょうね。 と言うわけで、これは都市に一角に構えたお寺で松の

情景52.「陽だまりとピアノ」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「陽だまりとピアノ」です。 駅の改札を抜けた先。浅黄色の陽だまり。 一台のピアノがそこで静かに時を過ごしている。 通りがかった、野良のピアノ弾きたち。 この情景は、情景51「降車駅のピアノ」から情景53「野良のピアノ弾きたち」の続き物になります。 ぜひ情景51から読んでみてくださいね。 駅や広場にあるストリートピアノ。 実はこの情景にはモデルとなった駅があって、 故郷の福岡県糸島市にある、筑前前原駅です。

情景290.「夏の音」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「 夏の音」です。 月日が移ろいでいたことで、耳慣れていた音にも変化が起こります。 ふいに、もう“そうなっていた”ことに気づく。 そういえば……。 体操座り。 体育座り。 どちらの言葉の方が馴染みがありますか。 両膝を抱えるようにして座るあの座り方のことです。 私は「体操座り」の方が馴染みがありますね。 体育座りって、発音しづらくない? なんて、ふと思ってみたり。 軽く調べてみたら、やはり地域差がある

情景289.「自惚れと自省。それでも」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「自惚れと自省。それでも」です。 創作をする以上、こういう気持ちの揺らぎってあるんだと思う。 少なくとも、私はある。 司馬遼太郎御大のエッセイの中で、「作家は割符を書く」というくだりがあります。 小説を将棋の駒とすれば、書き手が作れるのは半分まで。 もう半分は読み手の方々が持っていて、それが一致することはごくまれで、書き手がどれだけ工夫を凝らして書こうと、出来は半分。 だから作家は常に不安でいるのだと。 「

情景291.「朝、起きようと」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「朝、起きようと」です。 起きなきゃねいけないって、早起きしたほうがゼッタイいいって、 わかっているんですけどね。 とつぜんですが、私は二度寝積極派です。 毎日あえて朝5:00にアラームを仕掛け、パチっと目が覚めてからもう一度寝ます。 今回は朝の目覚めに関する情景。 目を覚ましてから、こうなっちゃうなって人もいるのかも。 とりわけ私はちょっと低血圧の気があるので、朝起きてからしばらくはずーんと重たい頭と眠

情景246.「土曜日のお昼」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「土曜日のお昼」です。 土曜日のお昼の空気感が好き。 曜日感覚を思い出させてくれます。 それはそれとして、書き物作業にも調子やノリの良し悪しって、ありますよね。 今回の「土曜日のお昼」は、その感覚を拾ったときのワンシーンを綴った情景です。 私はこの情景に出てくる「指が軽い」という感覚をとても大事にしています。 書き始めたとき——キーボードで文字を打ち始めたときですが——あきらかに違いがあるんですよ。 打

情景27.「遥か空の向こう」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「遥か空の向こう」です。 好きで、使ってみたかったフレーズ。 言葉の響きそのままの情景に、お洗濯ものが乗ります。 不思議なんですけどね。 昔から(小説を書くようになるずっと前から)、この“遥か空の向こう”ってフレーズが妙に頭に残ってるんですよ。 きっかけが思い出せないんですよね。 でもなぜか、私は“遥か空の向こう”を声に出して読みたい日本語として認識しています。 リズムよく、ポジティブな言葉で、奥行きを感

情景104.「夕陽と影」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「夕陽と影」です。 自分の足元で影と夕陽がじゃれあう。 影に覆い隠されていく中に差す陽光が一瞬のハイライトをつくる。 谷崎潤一郎の随筆で「陰翳礼讃」ってありますよね。 それを意識して、とまではいいませんが、暗がりの奥にある何か美しいものを、光の当たらない部分におかしみや一種の美しさみたいなものを感じに共感しながらこの情景を書いていました。 なんとなく、わかります。 からの、一瞬ひざしが差し入ってきて表情をあ