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米国再輸出規制 重要技術の輸出管理規則における「許可例外適用輸出管理(IEC:License Exception Implemented Export Controls)」2024年11月4日【STC Legal Expert試験対策】

概要

米国商務省産業安全保障局(BIS)は9月5日、量子や半導体など重要・新興技術の輸出管理に関する新たな暫定最終規則(IFR)を発表した。翌6日付の官報で公示し、即日発効した。なお、BISは最終規則(FR)の策定に向けて、官報公示日から60日間、パブリックコメントを受け付ける(注1)。

BISは今回発表したIFRについて、有志国との関係を強化し、悪用されれば国家安全保障に深刻な脅威を及ぼし得る技術の急速な進展に米国の輸出管理の仕組みを適合させるものだとしている。主に重要・新興技術に関連する品目について、(1)規制品目リスト(CCL)に新たな輸出管理分類番号(ECCN)を追加するほか、(2)既存のECCNを改定する。また、これらの品目について、(3)米国と同等の管理措置を講じている有志国に向けて輸出・再輸出する際に、BISの輸出許可の事前取得を例外的に不要とする制度「許可例外適用輸出管理(IEC:License Exception Implemented Export Controls)」を設ける。一方で、(4)国家安全保障を理由に規制する品目(ECCNの3桁目が0の品目)と、地域安定を理由に規制する品目(ECCNの3桁目が9の品目で、規制理由にRS:Regional Stabilityが記載される品目)に関して、輸出管理規則(EAR)の許可取得要件を追加する。

許可例外適用輸出管理(IEC:License Exception Implemented Export Controls)

対象仕向国

米国内での国内移転のほか、日本、英国、イタリア、フランス、ドイツ、スペイン、オーストラリア、カナダの8カ国。

対象品目

量子コンピュータ品目:量子コンピュータ、関連機器・部品・材料、ソフトウエア、量子コンピュータの開発・保守に使用可能な技術。

先端半導体製造装置:先端半導体デバイスの製造に不可欠な装置や機器。

全周ゲートFET(GAAFET)技術:スーパーコンピュータに使用可能な高性能コンピューティングチップの製造・開発技術。

積層造形品目(いわゆる3Dプリンター):金属または金属合金部品を製造するために設計された装置・部品・関連技術およびソフトウエア。

BIS対象品目表


STC Legal Expert試験対策

以前も許可例外改正を取り上げましたが、頻出事項です。


<問題23>(配点:2)
米国輸出管理規則(EAR)に基づく技術又はソフトウェアの輸出・再輸出に
関する記述として、正しいものを後記1から5までの中から全て選びなさい。
1.日本国内にあるコンピュータに搭載されている米国原産ソフトウェアをダウンロードさせることなく海外から使用させることは当該ソフトウェアの再輸出にあたるため、米国政府の許可が必要となる場合がある。
2.日本で開発した技術を、日本にあるサーバーから米国子会社にダウンロードさせている。米国子会社では米国の永住権を持たない外国籍従業員にもこの技術を取り扱わせているが、日本で開発した技術なのでみなし輸出にはあたらないと考え、米国政府の許可の要否は確認していない。
3.3月号として出版される予定の学会誌に米国原産技術に該当する原稿を投稿する場合は、原稿提出の時点では出版されていないため、公知の技術として規制対象から除外することはできない。
4.日本国内で、日本の永住権を持たない外国籍者にEAR規制対象の貨物を提供することは、みなし再輸出にはあたらない。
5.米国原産の半導体設計ソフトウェアを、日本の永住権を持たない外国籍従業員に使用させることは、当該ソフトウェアのみなし再輸出にあたるため、米国政府の許可が必要となる場合がある。

https://www.cistec.or.jp/nintei/kakomon/expert/2022-Expert-hourei-seikai.pdf

2024年許可例外問題は前回ご紹介したので、2022年の試験を参照します。
この問題では、EARに基づく技術管理について出題されています。

なお、正しいものは選択肢4の一つだけです。
貨物はみなし再輸出の定義には当たりません。

〇§734.14 再輸出
(a) §734.18 及び§734.20 で規定される場合を除いて、再輸出とは以下を意味する:
(1) いかなる方法においても、外国の 1 箇国から他の外国に EAR 対象品目を実際に出荷又は伝送すること(上記の国に向けて又は上記の国から品目を送付したり搬送することを含む);
(2) 提供又は移転が実行される外国以外の国の外国人に EAR 対象の"技術"又はソースコードを提供したり、その他の形態で転送すること(みなし再輸出)

 

初見では全く解けませんでした。
選択肢1は正しいと見せかけて、§734.14 (a)(1)は伝送とあるので、ダウンロードさせることなくであればセーフ。
選択肢5も正しいかと思いきや、ソフトウェアはソースコードではないのでみなし輸出に当たりません。

今回改正となる重要技術の輸出管理規則は、上記のようなEAR技術管理の問題の選択肢に盛り込まれる可能性があります。

米国と同等の管理措置を講じている有志国に向けて輸出・再輸出する際に、BISの輸出許可の事前取得を例外的に不要とする制度「許可例外適用輸出管理(IEC:License Exception Implemented Export Controls)」

対象国はピンとくるように把握しておきたいです。

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