アラサーからはじめるバイオリン

夏だ。

なんとなく新しいことを始めたいなと思っていた。

語学の勉強でも楽器でも何か始めたいなと思っていると、ふと思いだした。

もらったバイオリンが数年放置してあることを。

高校を出るときにもらって、時間があったら練習しようと思ってそのままになってしまい、全く手をつけずにいた。

ケースを見つけ、どのような状態になっているか恐る恐る開けると、当然メンテナンスも何もしていなかったのでペグの木も回らず、弦は緩く、弓の毛は切れている。

画像1

そもそもバイオリンに疎すぎて現状どういった状態なのかもわからないし、せっかくもらったものをそのままにしておいても気がひける(今更)ので、修理に出してから練習をしてみようと思いたった。

専門店にて

修理をしようと思ってから1、2週間後、御茶ノ水付近を通る都合があったのでバイオリン専門店に寄り、修理を依頼することにした。

自分がバイオリンを背負っていることへの違和感を感じながら駅に降りると、すぐにバイオリン専門店があった。

バイオリン専門店に入ることはたぶん初めてで、普段来ることがない場所の雰囲気になかなかの緊張感を覚えながらも、店員さんにバイオリンの修理をお願いしたいです。というと、席にてバイオリンの状態を確認させてほしいです〜とのことだった。

席について、バイオリンを見てもらっている間に、自分の現状、バイオリンを修理してもらってからバイオリンを始めようと思っていること、バイオリンの知識は全くないことなどを伝えた。

ざっくり状態を見てもらったあと、上の階にいるリペア担当に渡してくるので少し待っていてほしいと言われ、店内で待機していた。まあ落ち着かない。隣の席では上品なご家庭がお子さんにあったバイオリンを調整しているし、壁に並んだバイオリンも10万円台から100万円台のものもある。いかにも御茶ノ水にいそうなバンドTを着て入店した身としては大変肩身が狭い思いをしていた。

15分〜20分ほど待った後、店員さんから修理箇所の説明があった。

まずペグの調整、ある程度固くかつ回るように交換が必要とのことでそれを4本分(全部)と、弦の張り替えも全部。そしてチューニングをしやすくするようにパーツの交換、ボディも5箇所剥がれがあるためそこの補修、最後に弓の毛の張り替えとともに毛がケース内の虫食いによって切れている部分もあるためケースの天日干しもするようにお願いされた。大修理。

これほどのことを修理をするとなったらどのぐらい期間がかかるのかと思い聞いてみたところ、金曜に預けて日曜には出来上がるとのことだった。意外にも早い。

ただ問題はもう一つある。修理代だ。

全く相場がわからないので不安に思ってはいた。勝手なイメージではあるがバイオリンとかそういった弦楽器は修理代が多くかかるから敷居が高いようなきがしていた。値段を気にしていることがわかってしまうのが恥ずかしくはあったが、だいたいの金額を聞いてみた。約25,000円とのことであった。

あくまでも個々人の感覚ではあるとは思うものの、想定の半額で安心した。想定の倍までは覚悟をしていたところ、安心できた。

代金は受け取り時で構わないとのことだったので、預かり伝票だけもらって店を後にした。もらった伝票にはKarl Hofner VNと書いてある。これが持ち込んだバイオリンのブランド名だということをその時に初めて知った。

2日後の日曜日、楽器店に受け取りに行くと既に出来上がっていた。しかも修理が当初見積もりより軽度であったとのことで、少し安く済んだ。安くすんだ分だけバイオリンを弾くための備品、松脂と消音器も追加で購入することにした。それらも合わせても総額¥25,000ほどだ。

バイオリンを始めるための準備が整ったところで、店員さんに質問をした。「何から始めればいいですか?」と。

そうしたところ、ペルソナ4の主人公似の店員さんはこう答えてくれた。「今はYouTubeとか色々ありますけども、やはりちゃんと一年ぐらいはバイオリン教室に通ってやったほうがいいですよ」と。至極真っ当な意見である。きっと他の店員さんたちもそうやって習ってきたのであろう。

「みなさんそうしてきたでしょうからね〜考えておきます〜」といった曖昧な返事をし、その話題は終わりにしたものの、内心教室に通ってまで練習するモチベーションをずっと維持できるかは不安ではあったので、一旦ネットやYouTubeで調べてみて練習してみることにした。

独学

帰宅し早速YouTubeで調べると、バイオリンを買ってから7日間の練習メニューという動画があった。これを見てとりあえずできるところまですぐにやってみようかと思った。

1日目 バイオリンの準備、チューニングなど。これは問題なくできた。

2日目 バイオリンの持ち方。これも(たぶん)大丈夫。

3日目 音を出してみよう。

音が鳴らない。


動画通り弓に松脂を3〜4往復程度塗っても音が鳴らず、鳴らない理由もわからない。塗りが足らないのかと思って何回も塗っても状態は変わらず、やっぱり難しい楽器なのかと思い、その日は練習をやめた。

とは言えどうして鳴らなかったのか気になる部分が多く、寝る前に調べていると新品の松脂と弓に関して衝撃の事実が記載されていた。

新品の松脂は固く、松脂が全く弓につかないことがあるので表面をカッターナイフなどで削ってから使いましょう!
毛を張り替えた弓は松脂が全くないので、数回ではなく毛が粉っぽくなるかならないか程度まで塗りましょう!

これでは鳴るはずはないと納得して、その日は寝た。

次の日、早速松脂の表面をカッターナイフで削り、松脂を出しやすくした。

画像2

こうなっていたものを


画像3

こうして、弓に塗っていった。

全体に塗り込んだあと、音が出るかどうか試しに弾いてみることにした。


音が出る。



音を出せるということがここまで気持ちのよいものであると初めて感じた。

きっと動画で松脂を2〜3往復塗って欲しいと言っていた理由は、動画を投稿した方が使う松脂と弓が新品ではなく、始める際のルーティン的な扱いとして紹介したのだと鳴らすことができた後に思った。

超初心者とプロの埋められない差を感じた。

練習

音は出せた。ただ何も押さえていない状態でしか満足いく音は出せていないし、弓を動かして音を出すときも音が安定しないし、指で弦を押さえて音階を決めるのもまだ正確にはできない。

曲の練習をする前に練習しなければならないことがたくさんある。楽しい。

何事も始めたてのころ特有の、目に見えて少しずつできるようになっていく感覚。それを少しずつではあるだろうが、味わっていきたい。

新しいことを始めるのは、いいものだ。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?