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「本質」を意識して生きていきたい

佐藤可士和さんと21人の方との対談集です。
様々な種類の話から、その本質に迫っていきます。


書籍に記載のあった佐藤可士和さんのプロフィールをここでご紹介させていただきます。

クリエイティブディレクター。
博報堂を経て「SAMURAI」設立。主な仕事に国立新美術館のシンボルマークデザイン、ユニクロ、楽天グループのブランドクリエイティブディレクション、「カップヌードルミュージアム」「ふじようちえん」のトータルプロデュースなど。近年は武田グローバル本社、日清食品関西新工場など大規模な空間デザインプロジェクトにも多く従事。」文化庁、文化交流使(2016年度)慶應義塾大学特別招聘教授(2012-2020)毎日デザイン賞ほか多数受賞。
2021年春に国立新美術館で「佐藤可士和展」を開催。

「佐藤可士和の対話ノート」プロフィールより

興味深い佐藤可士和さんと対談されている方の中で、
私は中野京子さんとのそれを読みたくてこの本を手に取りました。

中野さんは作家であり、ドイツ文学者の肩書をお持ちです。著者に「怖い絵」シリーズがあり、絵画やその作家の面白いエピソードをふんだんに書き記していらっしゃいます。
中野さんはご自身の書作にも至る所に書かれているのですが、絵画を「見て感じる」よりも「読み解く力」が大事だとおっしゃっています。

感性で絵を楽しむという、もっともらしい鑑賞法をばっさりときりすて、日本の美術教育に対する自論を佐藤さんと熱く語られる個所などには、私もとても共感するところがあり、中野さんの著作からも、その説得力の強さを感じました。



このほかにも、対談されている方は素晴らしい経歴の方々ばかりで、興味深い展開に目が離せないという表現は少しもおおげさではありません。

人工知能を専門とする東京大学大学院工学系研究科教授の松尾豊さんは、人工知能の精度がどんなに高まっても人工知能にはできないというものをあげ、人間の能力の高さや細やかさに立ち返ってゆかれる点などを述べられています。

人工知能が発展すればするほど、人間とはなにか、人間がつくりたい社会はどういうものかということが問いかけられるのは間違いないといいます。

では今後人間が学ぶべきことは何か。

人工知能を扱っていくうえで最も難しいことは、目的を達成することなのだそうです。相反するメリットがあったとき、どちらを選ぶのか、社会的合意をどう得ていくのかということを解決するのは、人間のコミュニケーション力なのだといいます。そして、その力を発揮するためにも「本質はなにか」ということの答えをだしていくこと。
人間が学ぶべきことはそこではないか、とおっしゃっています。


しかし、そのコミュニケーション力に問題があるのだという話になる方が何人かいらっしゃいました。


ジャーナリストの中元三千代さんは、日本のコミュニケーション力というのは外国人に理解されにくいと指摘します。
英語力よりも会話力が大事だということや、自分の意見をはっきりいわない日本人は不気味だと思われているという話。

あわせて、フレンチシェフの吉武広樹さんのお話の中でもフランスで子育てをする中で「はっきり物事を言えない日本人」のデメリットを述べ、日本人の教育にも触れていらっしゃいます。

また、伊勢丹常務執行役員の鷹野正明さんの対談のなかでもコミュニケーション力の重要さを述べられ、
日本の良さをもっと世界に発信する能力を高めることが大事であり、人とのつながりが大切だとおっしゃっています。

最初にご紹介した中野京子さんもその点では同じご意見をおっしゃっていて、日本人のコミュニケーション力の問題は今後の大きな課題といえそうです。

今現代を生きる私たちにとっても大問題ではありますが、
同時に、これからの子供たちの教育をも
考えずにはいられません。


また、若い人たちだけでなく、年齢が高くてもやりたいことやろうという話には、わたしにもまだ未来があるのかと思え、うれしくなりました。

アートディレクターの千原徹也さんは「れもんらいふデザイン塾」というものを続けていらっしゃるのですが、これはデザインをやってみたいという人が挑戦できるデザイン塾で、ほとんどがデザイナーさんが受講されているようではありますが、様々なお仕事の方もウエルカムで、年齢も10代から50代など幅広く、クリエイティブの「本質」を学ぶとのこと。

人生100年時代といわれて、元気な時間が増えたことを喜べるような人生にするには、
挑戦するという場があるということにひとつの希望を感じます。

目指したい目標を作り、やり遂げる達成感とそれを誰かに認めてもらえる機会というのは、どんな年代であっても生き甲斐になるのではないでしょうか。
老年期に入って、なにもそこまでがんばらなくてもという空気を感じるかもしれませんが、家族も含めて、死ぬまで人間関係は続くことを考えたら、人間関係が円滑であることがなによりの幸せと感じます。


生涯コミュニケーション力!
まさにそこにこそ「本質」があるのかもしれません。



佐藤可士和さんは、あとがきのなかで「本質」についてこんなふうに書かれています。

同じ時代に同じものを見ていても、視点によって見え方、解釈の仕方は千差万別だ。多様な視点を手に入れることは、厳しい社会を生き抜いていくうえで最も重要な事の一つだとおもう。多様な視点が持てないと、物事を一次元的にしか捉えられない。事象の表層しか見ることが出来ず、裏側でささえているものやその中心をなすもの、いわゆる「本質」をつかむことができない。本質とは、人と対話していくことでつかめてるようになっていくのだと僕は思っている。(中略)どんなに時代が激変しても、人と人が対話することにより、何か新しいことが生まれていくのだと僕は信じている。

佐藤可士和の対話ノート「あとがき」より

佐藤さんは、同時に「雑談」の大事さを力説されているのですが、それこそ人工知能ができないこと。データーではくくれない人間の能力の奥深さを改めて考えさせられます。

この対談もきっとたくさんの雑談をされながら「本質」を引き出されているのだろうなあ!

興味深い内容の対話は、
どれもコンパクトにまとめられていて、
且つ大事なものがつまっていました。


自分は「本質」をどんな風に考えているのだろう。

どんな生き方がしたいのだろう。

お二人の対談を読みながら
いつのまにか私も一緒になって意見を重ねていました。


これからも「本質」を考えながら生きていきたい。
そんなことを考えさせられる本でした。


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