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仕事と不妊治療の両立はどうする? 30代正社員女の私が実際にやってみました

(こちらの記事は2020年5月17日に公開した記事を加筆したものです)

 『仕事をしながら不妊治療をはじめると、どれくらいの頻度で仕事を休む必要があるのか?』と疑問に思う方は多いですね。

 今回は、正社員の私が体外受精を実施するために実際にどれくらい仕事を休んだのかをレポートします。仕事と両立しやすいクリニックの選び方のポイントもお伝えしますので、これから体外受精以降の高度不妊治療を検討している方の参考になれば幸いです。

タイミング法や人工授精は通院回数は月2〜3回程度

 妊娠を希望する世のなかの働く女性が、自己流か治療かにかかわらず、タイミング法や人工授精(AIH)での自然妊娠をどれほど望んでいることでしょう。その理由は、タイミング法や人工授精は時間的な側面で仕事に支障がない(あっても低い)レベルで実施できるからです。

 妊活中の方はすでにご存知かと思いますが、そうでない方向けに簡単に説明すると、2つの違いは医療的介入があるか/ないかです。

タイミング法
= 排卵日を予測して、その前後で医療的介入なく交渉をもつこと

人工授精(AIH)
= 排卵日を予測して、その前後で医療的介入により精子を子宮内へ注入すること

 これらには、①卵胞の大きさを確認するための超音波検査 ②施術(人工授精の場合) ③排卵確認のための超音波検査のための通院が必要となり、どちらであっても私の場合の通院回数は1周期あたりで2〜3回程度でした。

 もしも上記2つの方法で授かれなかった場合、つまり体外受精・顕微授精に進んだ場合は通院回数とクリニック滞在時間が段違いで増加します。

 すると『不妊治療と仕事との両立できなくない? 無理じゃない?』問題が発生します。

 金銭的な負担もそうですが、働く女性、特に正社員の方は不妊治療に割く時間を捻出することに不安を感じているのではないでしょうか。

治療方針によって通院回数は大きく変わります

 世間一般で考えられる不妊治療の中でも体外受精とは、最も象徴的なイメージとして捉えられがちですが、実際にはその体外受精前後には異なったステージが存在します。

▶︎ 受精卵移植までの流れ(凍結胚での場合)
① 卵巣刺激(排卵誘発)の治療
② 採卵、そのあとで体外受精/顕微授精
 ( 状況によっては同日に新鮮胚移植を行うこともある )
③ 受精卵の培養と凍結保存
④ 凍結胚を解凍し、移植

 上記4つの段階をすべて経ることで治療は完了します。

 そしてこの中で圧倒的に通院回数が多いのが①の時期、すなわち採卵日を決めるまでの時期です。なぜなら、こまめに超音波検査で卵巣内の様子を観察する必要があるためです。

卵巣刺激方法は何通りかあり、以下の条件でも通院回数が変わってきます。
a :ホルモン剤注射を打つか/打たないか、打つなら何回か
b :自分で注射するか/クリニックで注射してもらうか
c :いくつの卵子を採ることをねらうか 

 私はこれまで2回の体外受精を経験していて、どちらも自宅でホルモン注射を自分で行う方法(自己注射)をとりました。どちらも注射回数と通院回数から考えると、卵巣刺激法は高刺激法ではなかった、ということだけわかります。

 というのも、卵巣刺激法に関しては不妊治療クリニック毎、個人個人により治療の組み合わせ方が異なるので、私が行ったものは「○○法」とわからないのが本音です。種類については、今回の趣旨から外れるので詳細は割愛します。

体外受精のために1周期あたり計2〜3日間の有給を使いました

 下の表2つは私が体外受精(もしくは顕微授精)を行った周期の通院履歴です。

体外受精を行った周期の通院の様子_1

※ D は生理周期での何日目かを示しています

 D9までが①の時期なため、刻んで通院しています。半日の有給休暇で済みました。
 D11は採卵日です。クリニック滞在時間と身体への負担を考え、1日間の有給が無難です。
 D14は受精卵の培養状況を確認するための通院です。残念ながら正常に発育しておらず、この周期はここで治療が終了しました。

有給消化の日数:合計2日間、回数で数えると3日間

 凍結保存するための受精卵がつくれず、移植することもできなかったので、上記の表は移植以外の治療による通院日数の記録になります。

 通院日2回がたまたま休日に重なったことを考慮すると、5日間は通院する=5日に分けて仕事を休む必要があったと言えなくもないです。

体外受精を行った周期の通院の様子_2


D12までが①の時期、D14が採卵び、D17が受精確認日です。

有給消化の日数:合計2日間、回数で数えると3日間

 2回目の周期では採卵数を多くねらいに治療していたので、1回目の周期よりも卵巣刺激を強めました。そのため通院回数が増え、有給も増えました。しかも、卵巣刺激により私の卵巣が腫れてしまったため、体調不良で通院とは別の有給消化が発生しています(D13)。

 このときもまた結果的に受精卵が全滅してしまったため、移植以外の治療通院日数の記録となります。そして、仕事本来の休日が重ならなければ6日間に分けて通院する必要があるということです。

これらをまとめると移植以外の不妊治療は1周期あたりで有給を合計で2〜3日間、回数で3〜4日間消化しました。通院自体は5〜6日間でした。

 次は、働きながら不妊治療を行ってみて、私が感じた仕事と不妊治療の両立のためのポイントをお話します。

不妊治療と仕事を両立するために大事な要素 ①有給を取りやすいか

 医療職正社員である私の労働環境は以下になります。

❶ 土日祝休み
❷ 9時ー17時までの就業
❸ 有給は最悪当日でも取得可能
❹ 午前・午後に分けて休むこともできる(時間休はない)

 この中で一番大事な要素は、❸ 有給は最悪当日でも取得可能 です。実は、これが仕事と不妊治療の両立において最大にして最低限のポイントになります。

 なぜなら、卵巣刺激(排卵誘発)の治療の時期は、同時にいつ採卵を行うかを超音波検査で卵胞の発育状況を確認しながら決める時期でもあり、育ちが悪いと「また○○日後に来てください」と予定になかった通院を促されるためです。

 もちろん私の場合も、私が休んだことで残された職員に負担が増えてしまう現実がありました。これについては申し訳なさもあり、日頃の勤務態度や良好な人間関係の構築への努力により補うほかありませんでした。

② 自宅・職場・クリニックの3箇所同士の柔軟なアクセスが可能か

 もしも通院のための仕事の急な休みが取れない場合、つまり1日間の有給が取れない場合は、以下のどれかのパターンでの往来が生まれます。

a :自宅 → 職場 → CL → 自宅
b :自宅 → CL → 職場 → 自宅
c :自宅 → 職場 → CL → 職場 → 自宅

 不妊治療クリニックはほぼ『予約制』を取っており、そこから逆算して元いた場所の出発時間を決める必要があります。そのため不妊治療クリニックを選ぶ際は、職場と不妊治療クリニック間の移動手段に無理がないか?も調べなくてはなりません。

 それぞれの位置関係が遠すぎたり、または自家用車や交通機関でのアクセスが不便であると、ただでさえ身体的・精神的負担の多い不妊治療を維持することが余計に困難になってしまいます。

 私の場合は、職場がわりとのどかな地域(田舎)にありますので自家用車で通勤しています。そして駐車場のある不妊治療クリニックを選び、すべて車で移動していました。

③ 不妊治療クリニックの営業時間は長く、営業日は多いほど良い

 両立のためには、不妊治療クリニックの立地と同じくらい重要なのは営業時間と営業日の多さです。

 中でも不妊治療クリニックの営業日の多さより営業時間の長さがポイントになるかと思います。つまり、仕事に間に合うように午前の早い時間から営業しているか、仕事後でも間に合うほど遅くまで営業しているかということです。

 午前中は働き、午後休をとって不妊治療クリニックへ行く場合、到着した頃には予約の時間が過ぎていた、もしくは営業自体が終わっていた…となればせっかくのお休みが無駄になってしまいます。

 私は不妊治療クリニックを合計で3箇所利用しました。

A 木曜・日祝休み/平日17時まで受付

 Aクリニックでは、タイミング法から人工授精(AIH)の段階で通院をやめました。平日では仕事を終えてからではとても間に合わず、基本的には午前休・午後休をとる必要がありました。
 このクリニックの近隣に提携の駐車場があり、受診すると1時間の無料駐車券がもらえました。

B 木・日祝休み/平日19時まで受付

 5回の人工授精(AIH)で通っていた2つ目のBクリニックは、平日遅くまで営業したいたので仕事を終えてから通院することができました。Bクリニックも無料の駐車場がありました。

C 月曜・祝日以外は営業/平日16時まで受付

 体外受精を2回行ったCクリニックです。体外受精レベルまで進むともはや、治療内容も濃くなり一回あたりのクリニック滞在時間も増えたため、積極的に有給を使っていきました。
 職場の方には不妊治療をしていることを告げ、直前の有給申請にもなんとか対応していただきました。Cクリニックも無料の駐車場がありました。

 東京都心の不妊治療クリニックに通う方の中で『就業前にクリニックに行った』『仕事の終わりに通院した』と話す方をよくツイッターでみかけました。

 これならば労働時間は削ることなく両立可能です。ただ、そのスタイルを希望する方も大勢いらっしゃいますので希望枠で予約が取れるかは別問題になります。

産休・育休制度を使うためにも仕事はなんとかしてつづけたい

 会社員として働く女性が妊娠し、出産をすると得られる制度が出産手当金(産休)と育児休業給付金(育休)です。

産休:取得条件なし、加入していれば必ず利用できる。健康保険の管轄。

育休:「週2日以上、1年以上、同じ事業主で雇用されていて、出産1年後も継続して雇用される予定がある」場合に取得できる。雇用保険の管轄。

 『不妊治療で今の職場で働き続けることが難しいから両立できそうな仕事へ転職しよう…』。その選択は慎重にならざるを得ません。なぜなら、転職後すぐに妊娠できても、育休を取得することはできないのです。

 不妊治療のために仕事を完全に辞めてしまった場合は、本来働きつづけていればもらえるはずの育休が取得できなくなることで、出産後の収入が途絶えてしまいます。この事態は避けたいですよね。正社員と不妊治療の両立が困難だとしたら、働き方をパートに変えるというのも手だと思います。

 産休・育休は正社員でなくパートであっても、上記の条件を満たせば利用できるのです。

まとめ:『終わり』も考えながら仕事と不妊治療を行うべき

 実際に体外受精以降の高度不妊治療と正社員での仕事を同時に行ってみた感想は、「ひたすら疲れた」その一点です。

 いくら有給が取りやすい職場であっても、突然休んでしまうことに対して後ろめたさを感じたり、治療がうまくいかなければ「こんなに頑張っているのにどうして???」と行動に対する見返りのなさに虚無感を覚えたりしました。

 2022年度から不妊治療の保険適応に向けて整備されつつあるので、金銭的な負担が軽くなる兆しがようやく見えてきました。しかし、労働環境はその変化に伴っておらず、各事業主への裁量に任せている部分が多いのではないでしょうか。

 不妊治療と仕事が両立できるような労働環境に変わるのを待っていては、時すでに遅しとなる可能性があります。だからこそ、夫婦2人中でも自分たちの働き方を見つめ直す必要があり、不妊治療の「終わり」も見据えて行動することがポイントかと思います。

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