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カール・マルクス 著『資本論 』(118)  読書メモ

第三巻 資本主義的生産の総過程
 第一篇 剰余価値の利潤への転化と剰余価値率
     へ転化  
  第三章 剰余価値率にたいする利潤率の関係
利潤 が 量的 に 剰余価値と等値されるかぎりでは、利潤の大いさとは、各個のばあいにあたえられているか、または規定されうる単純な数的大いさの諸関係によって、規定されている。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 6 (岩波文庫) (Kindle の位置No.1214). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

総資本 C は、 不変資本 c と 可変資本 v とに 分かれ、 剰余価値 m を 生産 する。この剰余価値の前貸し可変資本にたいする比率、すなわち、m/vを、われわれは剰余比率と名づけ、これをm’で表す。
したがってm/v=m’、よって、m=m’vである。この剰余価値あ、可変資本にたいしてではなく総資本にたいして関係づけられるならば、それは利潤(p)と呼ばれ、総資本Cにたいする剰余価値mの比率、すなわちm/Cは、利潤率p’と呼ばれる。
したがって、p’=m’v/c=m’v/(c+v)
よって p’:m’=v:Cとなる。
剰余価値率にたいする利潤率の比は、総資本にたいする可変資本の比に等しい。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 6 (岩波文庫) (Kindle の位置No.1218). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

c、 v、 および m の 大 い さに 規定 的 に 影響 を及ぼし、したがって簡単に言及されねばならない一連の他の諸要因が考慮される。

  1. 貨幣の価値
    われわれはこれをすべてのばあいに、不変と仮定することができる。

  2. 回転
    この要因を、われわれはしばらく全然考慮しない、というのは、利潤率にたいするその影響は、後の一章で特別に取扱うからである。     (ここでは、前もって次の一点だけを注意しておく。

    すなわち、p’=m’v/Cなる定式は、可変資本の一回転期間についてのみ、厳密に正しいということ、しかしわれわれは、単純な剰余価値率m’に剰余価値の年率m’nを代置することによって、これを年回転についても正しいものすること。ここではnは、一年間の可変資本の回転数である。)

  3. 労働の生産性。
    一個別資本が社会的平均的生産性よりも大きい生産性をもって作業し、その生産物を同じ商品の社会的平均価値よりも低い価値で作り出し、かくして、特別利潤を実現するばあいがそれである。(中略)

    したがって、われわれはすべての個々のばあいに労働の生産性は不変である、という仮定から出発する。実際、一産業部門で投下された資本の価値組成、すなわち不変資本にたいする可変資本の一定の比率は、どのばあいにも、労働の生産性を表現する。

    したがってわれわれは、c、v、mなる諸要因について生ずる諸変化が、同時に労働の生産性における諸変化を含んでいることを、きわめて、しばしば見出すであろう。

同じことは、なお残る三つの要因、労働日の長さ、労働の強度、労働賃金についても言える。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 6 (岩波文庫) (Kindle の位置No.1252). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

われわれ は、 c または C にたいする v の 比率 における、いかに些少な変化でも、同様に利潤率をも変化させるに足るものであるから、剰余価値率が不変のばあいにも、利潤率はあるいは低下し、あるいは不変であり、あるいは上昇しうるのを見た。

さらに、vの変動するばあいにはつねに、m’の不変が経済的に不可能となるような一つの限界が現われる、ということが示された。

cの一方的変動も、すべて同様に、vがもはや不変ではありえないような一つの限界に達せざるをえないのであるから、v/Cのあらゆる可能な変動にとってそれを超えればm’もまた可変とならざるをえない諸限界が置かれている、ということは明らかである。

エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 6 (岩波文庫) (Kindle の位置No.2017). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

剰余価値 率 の 大 い さの 変動 が、 利潤率 に 及ぼす 影響 からは、 次 の よう な ば あいが生ずる。

  1. v/Cが不変のばあいには、p’はm’と同じ割合で増減する。

  2. v/Cがm’と同じ方向に運動するばあい、すなわち、m’が増加すれば増加し、m’が減少すれば減少するばあいには、p’はm’よりも大きい割合で上下する。

  3. v/Cがm’と反対の方向に、しかしより小さい割合で、変化するばあいには、p’はm’よりも小さい割合で上下する。

  4. v/Cがm’と反対の方向に、m’よりも大きい割合で、変動するばあいには、p’はm’が下がっても上がり、m’が上がっても下がる。

  5. v/Cがm’と反対の方向に、しかし精確に同じ割合で、その大いさを変ずるばあいには、m’が上下しても不変のままである。

かくして、これら五つのばあいのすべてから、上昇する利潤率が、低下または上昇する剰余価値率に、低下する利潤率が、上昇または低下する剰余価値率に、不変の利潤率が、上昇または低下する剰余価値率に、対応しうる、ということがわかる。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 6 (岩波文庫) (Kindle の位置No.2366). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

かくして、 利潤率 は、 二つ の 主要 要因、 すなわち、剰余価値率と資本の価値組成とによって、規定される。(中略)

二つの資本の利潤理知、または二つの相継ぎ相異なる状態における同一資本の利潤率は、次のばあいに相等しい。

  1. 両資本の百分比組成が等しく、剰余価値率が等しいばあい。

  2. 百分比組成が等しからず、剰余価値率も等しくないときは、剰余価値率と百分比可変資本部分との(m’とvとの)積、すなわち、総資本にたいして百分比で計算された剰余価値量(m=m’v)が等しいばあい、いいかえれば、両資本において、m’とvという二要素が反比例するばあい。

エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 6 (岩波文庫) (Kindle の位置No.2551). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

利潤率 は 次 の ば あい には 等しく ない。

  1. 百分比組成が等しいときは、剰余価値率が等しくないばあい。このばあいには、利潤率間の比は剰余価値率間の比に等しい。

  2. 剰余価値率が等しく、百分比組成が等しくないばあい。このばあいには利潤率間の比は、可変資本部分間の比に等しい。

  3. 剰余価値率が等しからず、百分比組成も等しくないばあい。このばあいには、利潤率間の比はm’vなる積のあいだの比に、すなわち、総資本にたいして百分比で計算された剰余価値量間の比に等しい。

エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 6 (岩波文庫) (Kindle の位置No.2564). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

【私見:こうして、資本論をメモ書きしていて、細かすぎるほどにデータを分析していることに、ほとほと感心するとともに、沼に入りこんでしまって、全体としての方向性が見えなくなってくる。

以前読んだ、資本論関連書では、剰余価値と利潤とは違うということが書かれていて、ハテナマークがついたままになっていた。ところが、この第三巻、第一遍では、その違いを、これでもかとばかりに、その詳細が投げつけられていて、いささか、食傷気味となっている。

以後、第七編まで、利潤や利子についての講釈が延々と続く。柄谷行人は、東大の経済学部の出身者であり、資本論を読むのが、仕事みたいなものだから、当然のように、第三巻まで読んでいたが、彼が言うには、ほとんどの人は、第一巻までしか読んでいなくて、マルクスを語っているということらしいです。

確かに、共産革命だと、叫んでいただけの人たちなら、利潤率だの利子だのと、細かい経済の講釈などは、見たくも聞くたくもないことだろうと思う。

そうしたわけで、過去に、読みそびれていた、村上春樹著『ねじまき鳥クロニクル』の文庫版を近所の古本屋で購入し、気分転換用として、並行して読んでいる。

ついでに、どうして、この小説を読むつもりになったかという理由について追記します。先日、弁護士との面談を終えて、ふと壁際に沿って鎮座している書棚に目をやると、法律関連書から離れた最下段の棚に、漱石全集とともに、この小説が含まれていたことが、契機となったからです。

弁護士に、春樹の最新の小説を読んだことを、伝えると、どんな感想だったかと尋ねられた。さっきまで、法律上の硬い話しをしていただけに、この会話で、一気に距離が縮まったように感じた。】


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