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第一線開発者が語る量子コンピュータの現状

武田 俊太郎著『量子コンピュータが本当にわかる! ― 第一線開発者がやさしく明かすしくみと可能性』に基づいて、量子コンピュータについて学びます。

武田 俊太郎氏は、東京大学大学院工学系研究科准教授であり、光量子コンピュータの開発に関わっています。

これだけの方であれば、量子力学には熟知していると語っても良さそうなものですが、謙虚というのか、ようやく慣れてきたと言うのです。

YouTub動画で、量子力学を説明しているが、専門でもない人の方が分かっているのだという風に感じられます。

量子のふるまいというのは、高校で学んだ古典物理学の常識から見れば、ぶっ飛んだ振る舞いをするので、そう思うのが自然かもしれないですね。

何しろ、あのアインシュタインでさえ、量子力学の理論が納得できず、不完全な学問だと主張していたぐらいですから。

量子コンピュータの方式には、主に次の4種類ある、と説明しています。

  • 超電導回路方式

  • イオン方式

  • 半導体方式

  • 光方式(武田氏が開発中)

いずれも利点と欠点があり、どの方式がチャンピオンとなるのか、そして、これらとまったく違う方式が現われるかも分からないというのが現状のようです。

数年前に、量子コンピュータとは何だろうと、調べていた時は、量子のふるまいを制御するには、超電導回路でしか扱えないのだろうと思い込んでいたが、光方式の場合は、常温で可能だということで驚きました。

量子コンピュータについて次のよぅに述べています。

量子コンピュータは今、次世代の超高速コンピュータとして世界中で注目されています。最近は、新聞やインターネット記事などで量子コンピュータのニュースが取り上げられる機会も増えました。

しかし残念なのは、量子コンピュータとは一体どういうものなのか、その実体が皆さんにあまり知られていないことです。世の中のニュースはどうしても表面的な説明にとどまり、「量子コンピュータはとにかく計算が速い」「量子コンピュータは実現間近」と過度に期待させるような言葉ばかりを並べる傾向があります。

また、皆さんが量子コンピュータの本質的なところをもっと知りたいと思っても、誰もが納得できるように正確に伝えてくれるメディアはあまり見つからないように思います。

武田 俊太郎. 量子コンピュータが本当にわかる! ― 第一線開発者がやさしく明かすしくみと可能性 (p.2). 株式会社技術評論社. Kindle 版.

そのために、実際に量子コンピュータを開発している立場から誰にもわかるようにという思いで、本書を手掛けたということです。

2019年10月に、Googleの研究チームは、「最先端のスーパーコンピュータを使っても解くのに1万年かかる問題を、自社製の53量子ビットの量子コンピュータは200秒で解いた」と発表して話題になったことがありました。


これについては、次のように反論しています。

量子コンピュータが高速に解ける問題として、データベース検索、化学の計算、素因数分解、連立一次方程式などをすでに紹介しました。
これらの問題を実用レべルで解くには、100万から1億個以上の量子ビットが必要と見積もられています。現在の量子コンピュータの量子ビットの個数は100個にも満たないわけですから、これは桁違いに大きな数です。

武田 俊太郎. 量子コンピュータが本当にわかる! ― 第一線開発者がやさしく明かすしくみと可能性 (p.205). 株式会社技術評論社. Kindle 版.

ということですので、量子コンピュータは「もうすぐ実用化」という類ものではなく、「まだスタート地点」と思った方が正しい認識だ、と述べています。

ただし、1994年にピーター・ショアが、量子コンピュータで素因数分解を高速に解くための解法を発見したので、現代インターネット等での安全な通信を可能にしている暗号疑技術が簡単に破られてしまう恐れがあります。

さらに、クレジットカードなどの暗号化として使われているRSA暗号という方式は、「大きな数の素因数分解の計算は難しい」という前提の方式ですから、量子コンピュータでは破れてしまうのです。

このために、量子コンピュータが注目されるようになっていて、これを防ぐに量子暗号と呼ばれる「原理的に破られることのない」新しい暗号を作られつつあります。できているとしても、初期段階でしょうね。

しかし、たとえ初期段階だとしても、量子の特徴として「測定すると重ね合わせが壊れる」という性質があるので、たとえ悪人が情報を盗んだとしても、情報を測定した時点で壊れてしまうという仕組みとなっているので安全だというわけです。

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