『紅い砂』(高嶋哲夫 著)を読んで ~社会変革と「壁」そして自由の本質(前編)~

1_紅い砂

『紅い砂』(高嶋哲夫 著、幻冬舎刊)は、元米兵ジャディスが率いる革命軍が内戦で中米コルドバの政権を奪取し、民主主義国家を樹立する、という物語だ。
独裁政治と薬物による暗黒経済が支配するコルドバの国民は、自由を得ようと、メキシコとの間に米国が築いた9メートルの「壁」を乗り越えようとする。
そこで発せられた一発の銃声から銃撃戦が始まる。女や子供たちなど多くのコルドバ国民が射殺される。この悲劇が物語のはじまりであり、物語の中心軸をなしている。

米国版での発刊が決まっており(英題:『The Wall』)、また本作品を脚本にしたハリウッドでの映画化が計画されている。
映画の台本として書かれただけありスケールが壮大で、臨場感が高い文体とともに、戦争と革命の場面に置かれたような錯覚を得る。
革命と平和、抑圧と自由という、平和な日常では考えることの少ない、人間の本質にかかわる問題を私は受け止めた。

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