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不可思議/wonderboy - Pellicule

不可思議/wonderboyのPelliculeという曲が最高なので、歌詞の解釈ととともに紹介します。

不可思議/wonderboyとは

中学生の頃にラップに出会い、大学3回生の頃から活動を始めたアーティスト。今村知晃さんのパフォーマンスでポエトリーリーティングに出会う。
何にも縛られない自由な表現に衝撃を受けポエトリーリーディングを始める。
しかし2011年6月23日不慮の交通事故で亡くなってしまう。
生死や時の流れを歌う彼はもうこの世には存在しません。そのバックグラウンドを想いながら聞くと歌が一層胸に沁みます。

Pelliculeは疎遠になった友達を想いながら書いた曲だそう。インタビューで以下のように答えています。

地元の仲の良い友達で、就職活動もしないで、どうしてもサッカーがしたいと言って、でも日本じゃ通用しないからと言って東南アジアのタイに行って、2部リーグだか3部リーグだかでサッカーをやってるやつがいて、もはや、逃げてるのか挑んでるんだかわかんないんですけど、そいつのことを考えながら書いた曲です。ちなみにそいつはまだ帰ってきません。笑

歌詞解釈

久しぶり どうしたんだよヒゲなんか生やして
肌の色も真っ黒だし ヒッピーみたいじゃんか 
随分と遠くまで行ってきたらしいじゃん 
なにか掴んだかよ とりあえずは飲もうぜ

みんなお前のこと何気に 心配してんだ 
みんなっつーとそう いつもの面子のことなんだけど 
今日はちょっと忙しくて 来れないみたいなんだ
だから えっと そーだな二人だけで話そう

久しぶりに会う友人の変わり様に驚きつつ、「とりあえずは飲もうぜ」とお茶を濁します。
他の友人も誘ったけど、誰もこなかったんでしょうか。サシ飲み中の会話という設定で物語は進んでいきます。
「だから」「えっと」という言葉や、会話調の歌い方は、友人と久々に話すときの気まずさや微妙な空気感がリアルに伝わってきます。

それにしても皆いつの間にかいなくなるよな
だから別にそれがどうってわけでもないんだけど
最後に挨拶ぐらいしてって欲しいっていうか
まあ別にそんな事どうでもいいんだけどさ

久々の旧友の集まりになるはずだったけど、誰も集まらなかった。
そういう飲みを主催したワンダーボーイは申し訳なさを感じているのでしょうか?
罪悪感や相手への気遣いから、自然と口数が多くなっているようにも思えます。
「どうでもいいんだからさ」と、ぎこちなさややりにくさが伝わってきます。

そういえば昔さ いつだったっけ覚えてる?
流星群が来るからって 校庭に集まって
寝そべって 夜空を眺めてたんだけど
時間だけが流れて 星なんか流れないの
ああ今俺もしかして うまいこと言ったかなー
寒かったなー あれもう二度とやりたくないけど
次の流星群っていつ来るんだろうね
まあ別にそんなことどうでもいいんだけどさ

地元の友達と話すときの定番ネタ、昔話。
「そんなことどうでもいいんだけどさ」と結んでいます。自分の冗談にセルフツッコミをいれる、楽しみにしていた旧友との飲みなのに、どこかぎこちなさを感じている空気感が伝わってきます。
しかしこういう空気をあなたも吸ったことがあるのでは無いでしょうか?だれしも経験のある日常を切り取っているのもポエトリーリーディングの魅力です。
ありふれた日常が映画のワンシーンのように描かれている。それがこんなにもリアルに浮かび上がってくるのは、ポエトリーリーディング特有のリズム感のおかげです。

そうやって俺達はいつまでも待ってた
来はしないとわかってながら いつまでも待ってた
俺たちの知る限り 時間って奴は止まったり戻ったりはしない
ただ前に進むだけだ だから今日は戻らない日々を思い出して笑おう
今日だけ今日だけは思い出して笑おう
こういうのってあんまりカッコよくは無いけど
初めから俺たちはカッコよくなんて無いしな

「時間ってやつは止まったり戻ったりはしない ただ 前に進むだけだ」

この歌詞を書いたとき、ワンダーボーイは生死について紡ごうとは思っていなかったでしょう。自分が事故に遭うなんて思いもしていない、意図せずに死についての歌詞を紡いでいるところがまたすごい。

「カッコよくなんて無いしな」

思い出しても無意味な過去を思い出そう。それはカッコ悪い行為だけれども、俺たちはカッコよく無いから別にいいんだぜ。
過去を振り返っている、カッコ悪い自分をワンダーボーイは全肯定してくれています。彼の優しさが滲み出ているフレーズですね。

俺たちっていつかさあ 結婚とかすんのかなあ
子供とかできてさあ 庭付き一戸建てとかを ローン組んで買ったら
出来た気になるかなあ ってこの話前にも聞いた気がするわ すまんね
とりあえず今んとこは彼女とかもいないし
まったくお金も無いから 可能性はゼロだね

日常のありふれた会話や下世話な冗談。こんな話をしたことがある人も多いはず。
ありふれた生活への不満や、何者かになりたいという思い、そんな思いを抱いている人を肯定してくれているようです。

冗談はいいとして 同窓会どうする?
行かないよなー行ったって話すこともないしな
大体どんな顔して行きゃいいって言うんだよ
自慢できることなんて一つだってないのに
あの頃ってなんにでもなれる気がしてたよなあ
いや実際 頑張ればなんにでもなれたか
でもこうやって色んな事が終わってくんだもんな
っていや始まってすらいないか

今はみっともないありふれた日常を送っている、が、そんな日常も日常と言えなくなってしまうかもしれないのだ。どんな日常も、いつかぷっつりと途絶えてしまう。彼の死によってそんな意味が付加されているようですね。

同窓会って何か引け目を持っている人は行きにくいですよね。行きたく無い側の心理を忠実に表現してる、dopeなワードチョイスです。

そうやって俺たちはいつまでも待ってた
きたるべき何かが 来ると信じ待ってた
グラスの中の氷はとっくに溶けて無くなって
俺たち以外にもう人は 誰もいなくなってた
だから今日はありもしない未来について語ろう
今日だけ 今日だけは 思い描いて語ろう
こういうのってあんまりカッコよくはないけど
大丈夫 俺たちの事なんか誰も見ちゃいないよ

待ってた 俺たちはいつまでも待ってた
来はしないとわかってながらいつまでも待ってた
俺たちの知る限り 時間って奴は止ったり戻ったりはしない
ただ前に進むだけだから 今日は戻らない日々を思い出して笑おう
今日だけ 今日だけは思い出して笑おう
こういうのってあんまりカッコよくはないけど
初めから俺たちはカッコよくなんてないしな

「グラスの中の氷はとっくに溶けて無くなって」

この言い回しおしゃれすぎませんか。
行動を起こさず居酒屋で愚痴をこぼす日々。そんな毎日を過ごしているうちに友人は皆定職に就き、結婚をし、自分だけが取り残されてしまった。その焦燥や無駄にした時間をグラスの氷で表している。

「いつの間にかいなくなるよな」
「初めから俺たちはかっこよくなんてないしな」

これを書いたときは、カッコ悪い自分や友人を全肯定するために書いたんだと思います。しかし、彼の死によって、夢を追う若者ありふれた日常への葛藤を表し、つまらない日常も映画(Pellicule:フランス語)のように美しく貴重だよっていう意味に昇華しているようにも思えます。


この歌詞を書いたワンダーボーイはまさか自分が死ぬと思っていなかったでしょう。その背景を想いながらもう1度聞いてみください。


これは彼の最後のツイートです。彼は私たちの中で生きているし、本人の代わりに音源は生き続けます。

Pellicule歌詞全文

久しぶり どうしたんだよヒゲなんか生やして
肌の色も真っ黒だし ヒッピーみたいじゃんか
随分と遠くまで行ってきたらしいじゃん
なにか掴んだかよ とりあえずは飲もうぜ
みんなお前のこと何気に
心配してんだ みんなっつーとそう
いつもの面子のことなんだけど 
今日はちょっと忙しくて 来れないみたいなんだ
だから えっと そーだな二人だけで話そう
それにしても皆いつの間にかいなくなるよな
だから別にそれがどうってわけでもないんだけど
最後に挨拶ぐらいしてって欲しいっていうか
まあ別にそんな事どうでもいいんだけどさ
そういえば昔さ いつだったっけ覚えてる?
流星群が来るからって 校庭に集まって
寝そべって 夜空を眺めてたんだけど
 時間だけが流れて 星なんか流れないの
ああ今俺もしかして うまいこと言ったかなー
 寒かったなー あれもう二度とやりたくないけど
次の流星群っていつ来るんだろうね まあ別にそんなことどうでもいいんだけどさ
そうやって俺達はいつまでも待ってた
来はしないとわかってながら いつまでも待ってた
俺たちの知る限り 時間って奴は止まったり戻ったりはしない
ただ前に進むだけだ だから今日は戻らない日々を思い出して笑おう
今日だけ今日だけは思い出して笑おう
こういうのってあんまりカッコよくは無いけど
初めから俺たちはカッコよくなんて無いしな
俺たちっていつかさあ 結婚とかすんのかなあ
子供とかできてさあ 庭付き一戸建てとかを ローン組んで買ったら
出来た気になるかなあ ってこの話前にも聞いた気がするわ すまんね
とりあえず今んとこは彼女とかもいないし
まったくお金も無いから 可能性はゼロだね
そういえばお前んとこのあの彼女どうしてんの
たまに俺に貸してよって これも前に言ったか
冗談はいいとして 同窓会どうする?
行かないよなー行ったって話すこともないしな
大体どんな顔して行きゃいいって言うんだよ
自慢できることなんて一つだってないのに
あの頃ってなんにでもなれる気がしてたよなあ
いや実際 頑張ればなんにでもなれたか
でもこうやって色んな事が終わってくんだもんな
っていや始まってすらいないか
  
そうやって俺たちはいつまでも待ってた
きたるべき何かが 来ると信じ待ってた
グラスの中の氷はとっくに溶けて無くなって
俺たち以外にもう人は 誰もいなくなってた
だから今日はありもしない未来について語ろう
今日だけ 今日だけは 思い描いて語ろう
こういうのってあんまりカッコよくはないけど
大丈夫 俺たちの事なんか誰も見ちゃいないよ
待ってた 俺たちはいつまでも待ってた
来はしないとわかってながらいつまでも待ってた
俺たちの知る限り 時間って奴は止ったり戻ったりはしない
ただ前に進むだけだから 今日は戻らない日々を思い出して笑おう
今日だけ 今日だけは思い出して笑おう
こういうのってあんまりカッコよくはないけど
初めから俺たちはカッコよくなんてないしな


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