レジデンシャル・エデュケーションの最前線:「目指せFacebook! 出会いと学びで溢れる『寮』」(UCLA・森夏音)
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レジデンシャル・エデュケーションの最前線:「目指せFacebook! 出会いと学びで溢れる『寮』」(UCLA・森夏音)

HLABがキーワードと考えている「レジデンシャル・カレッジ」。それは単に寮で共同生活を営むということだけではありません。大学や寮ごとに制度や仕組みは特徴があり、独自の文化を築いています。そして寮生活を通した学生の経験や学びは多様です。そこで、今回は「レジデンシャル・エデュケーションの最前線」という連載で、海外の大学に留学している方たちに、自分たちの寮や文化づくりについて寄稿をお願いしました。

今回は、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)に留学している森夏音さんによる寄稿です。SHIMOKITA COLLEGEでの暮らしについてご紹介いただきました。

自己紹介

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筆者写真

はじめまして。現在UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の3年生で公衆衛生学や医療政策を学んでいる森夏音(もりかのん)です。私は、2020年の12月から2021年の6月にかけて、0期生としてSHIMOKITA COLLEGE(以降、「カレッジ」)に滞在していました。今回は、カレッジでの7ヶ月間、私がどのようにカレッジのリソースを活用し「学び」を得ることができたかお話しさせていただきます。

その前に、まず自分のバックグラウンドについて少し補足させていただきます。私は生まれも育ちもアメリカ・ロサンゼルスで、カレッジに来るまで日本での長期滞在経験はありませんでした。大学もロサンゼルスにあり、医学系の学部のためキャンパスにいた頃は病院でのボランティアや研究室での研究などに励んだり、趣味であるトライアスロンの練習のため、大学の周辺をロードバイクで駆け回ったりしていました。しかし、コロナの影響により2020年の3月に大学を離れることを余儀なくされ、授業も全て自宅からオンラインで受講することになりました。そんな日々がほぼ一年経った頃、私はカレッジについて知りました。

コロナによる退去要請に至るまでUCLAの学生寮に半年ほど住んでいた私は、共同生活を送る寮という特別な場に魅力を感じていました。寮では、常に近い距離に共通の興味分野や活動に励む学生がいて、テスト勉強などの日常的なことから起業などのスケールの大きなものまで、周りで暮らす人達と共に新しいことを始められる可能性で溢れています。例えば、創業者のマーク・ザッカーバーグを含めた5人のハーバード生が、寮の小さい部屋で寝ずにプログラミングコードを書いていたことがFacebookの始まりだったことは有名な話です。

大学生活において、寮生活は授業で学ぶことと同じくらい大切な経験だと私は半年間のUCLAでの寮生活から強く思いました。その一方で、日本では東京大学を含め多くの大学が寮という制度を導入していないことも知っていました。そんな日本で初となるレジデンシャル・カレッジがオープンされると聞き、是非とも私もその一員になりたいと、日本での出会いや日本文化を学ぶことの期待の気持ちを胸に、東京のSHIMOKITA COLLEGEへの移住を決断しました。カレッジで暮らすこと7ヶ月間、アメリカの大学での寮生活の経験を持つ私ですが、アメリカの大学の寮ですらなかった様々な学びと人との繋がりを築ける仕掛けがあることに気づき、期待以上の学びを得られたことに驚きました。

SHIMOKITA COLLEGEについて 

まず、物理的な仕掛けですが、一階と二階には広々とした共有スペースがあり、人との偶発的な交流を通した「学び」の機会づくりのための様々な仕掛けがデザインに組み込まれています。例えば、フロアには作業に使えるコンセントがたくさん設置されています。また、勉強をするのに最適な机もあれば、ホテルのラウンジスペースのような雰囲気を醸し出す心地良いソファもあり、これらを移動すると一瞬でイベントスペースにも変身できる最強の場です。

また、カレッジ住民全員が使う「Slack」という共通のSNSプラットフォームがあり、誰もが気軽にイベントの告知や質問など、カジュアルなメッセージを投稿できます。このツールを通して住民全員に情報を発信したり、他のカレッジ生からも自分の興味ある情報を簡単に入手したりできます。

カレッジ・プログラムについて

この様な物理的な仕掛けは始まりに過ぎません。カレッジでは、様々な公式イベントやセミナーが開催され、それらに参加し、学ぶことができます。 例えば、カレッジでは企業PBL(Project-Based Learning)というプログラムがあります。これは特定の企業と連携し、課題解決・アイディア発想の手法を、企業の事業内容に活かして実践するプログラムです。参加するカレッジ生はパートナー企業の社員からのインプットやフィードバックを受けながら、企業の直面する課題への理解を深め、社員と同じ目線で事業に関する提案を行います。

私が参加したPBLは、三井物産株式会社との企画でした。 このプログラムを通して、私は総合商社という大企業が持つとてつもない資源とお金、そのリソースを活用して実現できる社会に大きなインパクトをもたらす事業について知りました。医療やヘルスケアに非常に関心がある私は、イベントを通してヘルスケア部門で活躍される三井物産の方とお話しすることができ、キャリアにおける視野を広げることができました。

この様なイベントは、カレッジの「コーディネーター」といういわゆる寮のスタッフの方々が企画してくれる学びの機会です。コーディネーターの中には、カレッジに住んでいる方もいて、カレッジ生とその様な人達が「共存」することにより、暮らしの場が学びの場にもなります。実際に私は一人のコーディネーターに自分の大学やキャリアについて相談したことで、 その方から様々な見識のある人・専門家を紹介していただきました。また、その方は私の話をとても親身に聞いて、私の夢を応援してくれました。

カレッジでは、自分が関心あることについて常に発信することでその夢を応援してくれる人に出会えます。こうした人との出会いがカレッジに住むことの意義だと、私は身を持って感じました。 

カレッジでの学びはPBLといった公式イベントやセミナーを通して得られるものに限りません。多種多様な興味や関心を持つ学生・社会人が共に暮らすことの一番の魅力は、やはり自発的に起こる学びではないでしょうか。

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企業PBLのプログラムで三井物産株式会社のヘルスケア部門で働かれる方のご指導のもと、カレッジ生とヘルスケア事業で活用できるビジネスアイデアを発案し、ポスターにまとめ発表しました。

カレッジでは「コーヒーチャット」というSlackの機能を用いた制度があり、各カレッジ生が毎週他のカレッジ生とマッチングされ、コーヒー1杯を共にしながらお互いの理解を深める機会があります。けれど私はその機能だけに頼らず、自分から積極的に周囲のカレッジ生を巻き込み、お互いを知る場を作りました。少し歳上の社会人のカレッジ生と下北沢の路地裏にある有名なカレー店へ行き、スープカレーを食べながら彼女の職業についてたくさん聞きました。マラソンという共通の趣味を持つ香港出身のカレッジ生と代々木公園まで一緒に走り、「香港とはどういう国なのか」「そこで彼女が学生としてどの様な危機に直面したのか」を話しました。

また、仙台出身のカレッジ生と共に東日本大震災からちょうど10年経つ今年の3月11日に被災地に足を運ぶことができました。このように、純粋に互いに興味を持ち、互いから学び合い、刺激しあうために様々な学びの場を自発的につくり出していく、そんな文化があるカレッジでは、互いから得られる学びは限りないと思います。

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カレッジの仲間達と週末は共に夕飯の支度や食事をしました。この日はみんなの力を合わせてタコス・パーティーを開催し、手分けしてビーフタコスやシュリンプタコスを作りました。やはりみんなと食べるご飯はとっても美味しかったです!

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「互いを知る場」をどんどん作り、たくさんのカレッジ生と仲を深めることができました。

また、共に暮らすからこそ起こる偶発的な学びもたくさんありました。キッチンで夕飯の支度をしているときも、勉強をするためにラウンジスペースにいるときも、その時会う人との会話や意見の交換によってアイデアがひらめく瞬間がたくさんありました。

日本初の「寮」の開校に0期生として携わることができたことは、私にとっては貴重な経験となりました。カレッジでの半年間を通して繋がれた方々との関係や得た学び・経験はUCLAでの残りの時間はもちろん、将来のキャリアに大いに活かしたいと考えています。

また、医療業界を含め様々な領域でどのように日米の関係をより強められるか、カレッジに来る前よりも明確になりました。今後のSHIMOKITA COLLEGEでは、ザッカーバーグのFacebookを超える、世の中を変える様なイノベーションが起きることを期待しています!

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HLABの理事であり、UCLAアラムナイの黒川清先生と横山匡さんにSHIMOKITA COLLEGEの開校式でお目にかかることができました。

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やはりカレッジに住んで得たものの中で私にとって一番かけがえのないものは、共に暮らした仲間との出会いです。私のカレッジでの最終日に退寮する際、みんなに暖かく見送っていただきました。
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