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あれから一ヶ月。そしてこれから。

 トンガの火山噴火から一ヶ月が経ちました。

 そのニュースが飛び込んできた1月15日の夜の段階では、本当に何もわからない状況でした。死者が出ているかどうかさえわからない。なので黙祷なんか縁起でもない。そんな状況でのラグビーリーグワン、第2節が行われている週末の出来事でした。

 そのとき感じたのは、「何が起こっているかわからない」ことそれ自体の怖さでした。
 前も書きましたが、私は東日本大震災の時ヨーロッパにいました。海外にいると、自分が欲しい解像度での情報が入ってこないんです。通信が維持されている東京であっても、です。
 ましてトンガは完全な通信途絶。あのときの自分の不安を思い出すと、日本でプレーしているトンガの選手たちの不安ははるかに強いはず。せめてファンの気持ちだけでも伝えたい。ツイッターでの「トンガ国旗を掲げよう」と言う呼びかけの原点は、その思いでした。

 それから3週間、セブンイレブンのマルチコピー機にデータを上げましたが、本当に多くの方に印刷していただきました。ありがとうございました。

 いまでは多くのチームが寄付を募り、国歌を試合前に流し、あるいは復興を祈る黙祷を捧げています。スタンドでも、大きなトンガ国旗を用意する方もいらっしゃいます。いまでも試合開始の入場の時と試合後にはトンガ国旗を掲げている人がいます。私もその1人です。

 その一方で、一般メディアにトンガのニュースが流れることはほとんどなくなりました。国外で起こった災害ではよくあることです。瞬間的には関心を集めるものの、そのうちに別のニュースに上書きされて忘れられていく。

トンガの現状は?

 そこで、現状がちょっと気になって調べてみました。国連の専門機関であるOCHA(国連人道問題調整事務所)のウェブサイトにまとめられています。

 英語なので、噴火10日後の25日以降について、ポイントだけ抄訳しておきます。

1月25日
 トンガの総人口10万5000人の内、84%の84000人が直接的に被災。240戸の家屋が破壊ないし損害。

1月28日
 Tongatapuの90%の電力が復活、付近に16箇所の給水所を設置。293戸の家屋が影響を受けたことを確認。Tongapauのうち、1525人が避難中。

2月3日
 2月1日に、港湾労働者の中からCOVID19の感染者が発生。2日の午前6時よりロックダウン開始。1月31日の段階で、2390人ないし465世帯(人口の2.4%)が被災後3週間の間避難生活を継続。

2月10日
 COVIDの拡大が援助および復興支援の障害となっている。学校は1月31日に再開されたが、2月2日のロックダウンに伴い再閉鎖。農業セクターの損害は1700万ドルに達するものと見積もり。通信は復旧しつつあるが、海底ケーブルの修理にはまだ数週間を要する模様。

そして、これから。

 結果的に、人的な被害は少なくて済んだようです。しかし、社会的・経済的なダメージは相当なものです。
 もともと離島経済というのは難しいものなのですが、この災害のダメージがそれをさらに難しくしてしまうことは想像に難くありません。「援助漬け」にすることなく、少なくとも元の生活ができるようにしていくというのは、途方もなく難しい作業です。

 ファンにできることは、とにかく忘れないことなのだと思います。たとえ一般社会が忘れたとしても。そして、復興に向けた長い取り組みを支え、世界のラグビーファミリーとともに、トンガ出身選手たちを応援し続けること。自分も、そういうラグビーファンの1人でありたいと思います。


(ちなみに赤十字への寄付は赤十字の運営費にも充てられるし、他の活動にも充てられるので、必ずしもトンガに全額が向かうわけではありません。チームが主催しているものを含め、多くの寄付は最終的に赤十字に寄付されますが、赤十字とは全世界を対象とした援助機関であることは理解しておく必要があります。運営費を取らない援助組織もありますが、ここで名前を挙げるのは控えておきます)