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ボール奪取では互角だった:五輪サッカー 日本対フランス(7月28日)

 7月28日のサッカー、日本対フランス戦。見に行く予定だったのに・・・。

 結果は4-0の完勝。前半に2点を先行、後半立ち上がりのフランスの校正を凌いでカウンターで3点目を奪って相手の戦意を喪失させ、最後に1点を加点する完璧なゲーム運びだった。


 この試合、今日はいつものようにボール奪取マップを元にレビューしてみる。ここでいう「ボール奪取」とは、ボールを奪ったあと味方につながったものを指す。クリアやタッチに蹴り出したもの、キーパーのキャッチは含まない。青字にしているものはシュートまでつながったもの、赤字は得点に至ったもの。

メキシコ戦より多くのボール奪取:日本

 まずは日本から。

 ボール奪取数は合計で48。メキシコ戦では46だったから少し多い。また、70分に三好がとどめの3点目を取ってからはフランスが諦めて両チームともプレー強度が著しく落ちたから、実質的にはメキシコ戦よりも多いボール奪取とみていいだろう。

 ただし、うち敵陣は12個で25%。メキシコ戦は39%だったからそれより低くなっている。実際、ビルドアップ時にフランスがボールをつなぎ始めるとなかなか奪えなかった。

 その分ボールの奪いどころは後ろに下がっている。それはポジションごとのボール奪取を詳しく見るとよりはっきりする(後述)。シュートにつながったのは4で8%(メキシコ戦は7%)。川崎フロンターレの同じ数字が14%だから比べるとかなり低いが、このチームでは標準的な数字。その4回のうち3回で得点に至っていることは特筆すべきだろう。

 次に個人別に見てみよう。
  酒井:7
  冨安:6
  吉田:6
  遠藤:5
  中山:5
  旗手:5
  堂安:4
  田中:4
  上田:2
  三好:2
  相馬:1
  久保:1

 この試合、最多はなんと右サイドバックの酒井。サイドバックが最多になることは珍しいが、中継を見ていても右サイドを完封した酒井の奮闘は凄かった。次いで冨安、吉田の両センターバックが続く。

最終ラインの大活躍

 メキシコ戦で最多の9を記録した遠藤はそれに続く5、田中碧は4。この2人が少ないのは途中交代の影響もあるが。ざっと見て気づくのが、最終ラインの4人のボール奪取数の多さ。左サイドバックにポジションチェンジしてからの旗手の1回を含め、最終ラインの4人の合計は26回、なんと全体の54%。そこでこの4人だけを抜き出したマップを見てみよう。

 ペナルティエリア付近はもとより、フィールド全体にわたっている。

 なお、遠藤と田中碧の2人を見てみたのがこれだ。

 面白いのはペナルティエリア付近の4つ。セットプレーの時もあるが、やはり全体としてボールを奪う位置が後ろがかっていたことがわかる。

 こうしてみると、無理にハイプレスをはめ込むのではなく、前線はコースを限定しながらある程度ボールを持たせ、最後蹴らせた上で相手がアタッキングサードに入るあたりでボールを奪うと言う形の守り方になっていたことがわかる。

 ちなみに前線4人だけを示したのが下の図。

16回、全体の3分の1を前線の3人で奪っており、しかもそのうち2回は得点の起点になっている。それだけ前線の選手も献身的にディフェンスしていたことがわかる。特に注目すべきは堂安。自陣まで戻って4回ボールを奪っている。

 こうしてみると、この試合はボール奪取能力の高い遠藤と田中碧が「目立たない」ディフェンスだったことといえる。むしろ前線でコースを切り、蹴らせて最終ラインで回収する、と言うディフェンスが上手くいっていたと言うことだろう。

日本と互角だったフランスのボール奪取

 フランスのボール奪取も見てみる。カッコ内に日本の選手が書かれているものは、デュエルによるボール奪取。名前が出ているのは奪われた選手だ。

 フランスのボール奪取数の合計は日本と同じ48。うち敵陣は13で日本より1つ多い。シュートに持ち込んだのは3回で日本より1回少ない。

 こうしてみると数字としてはほぼ日本と同じであることがわかる。この試合、「ボール奪取」という観点では両チームに大きな違いはなかった。少なくとも4-0と言う差が付く程の差を見いだすことはできない。

 デュエルによるボール奪取だけを抜き出してみよう。

(ボールを失った回数)
  久保:3
  板倉:2
  前田:1
  遠藤:1

 大きく2つに偏っている。自陣ハーフライン付近と敵陣ペナルティエリア付近だ。

 前者の4回は、いずれもボールを奪ってトランジションした直後のもので、ボールの失い方としては危険なもの。シュートにも至らなかったのは幸運だった。

 後者は仕掛けによるボールロストだからやむを得ない。時間を見ても、久保のボールロストはまだ0-0ないし1-0の時間帯だからやむを得ない。上田と前田はそれぞれ78分と89分で終盤。もう試合の大勢が決まってからだからチャレンジすることに問題はない。

 メキシコ戦では、2-0になってからでも久保や堂安が人数のそろったディフェンスにチャレンジしてボールを失うことが頻発したが、この試合ではそういったことがない。

 必要な修正がきちんとできたと言うことだろう。久保がデュエルに弱いのはいつものことだが、堂安に至ってはデュエルによるボールロストがゼロだ(メキシコ戦では20分以降だけで7つ)。この日の堂安はボール奪取数も多いし、素晴らしい活躍ぶりだったと言える。

まとめ:NZ戦でも同じ展開にしたい

 まとめてみよう。ボール奪取の面から言うと、日本もフランスも互角だ。お互いに敵陣ではそれほどボールを取れていない。勝利した日本もフランスのビルドアップを必ずしも阻止できておらず、最終ラインでボールを回収するケースが多かった。ただこれは中盤のディフェンスでファールを取られることが多かったことも一因だ。

 そう考えると、4-0と言う結果が示すほど一方的な試合だったわけではない。立ち上がりを含めフランスも得点するチャンスはあったし、フランスがもし先取点を取っていたら、全く違う試合展開になっていた可能性があると言うことでもある。

 日本は、メキシコ戦の課題である、点差を見ながらプレーするという課題を解決することができていた。その中で「急ぎすぎない」カウンターから3点目を取って試合を実質的に終わらせ、出場時間を調整することもできた。ただし、これまでの3試合を通じて、日本はファールを取られることが多い。日本のプレー強度が高く、相手がファール狙いで大げさに倒れるのをレフェリーがファールに取っていると言う面が大きいが。ニュージーランド戦に向けて、このあたりの適応は必須だろう。

 ニュージーランド戦も、やはり早めに点を取って楽に試合を進めたい。韓国が敗れたときは、0-0であることに焦ってクロスを放り込んで大きなディフェンダーたちに跳ね返されていた。同じ展開は避けたい。すると三笘を先発から使って立ち上がりから攻勢に出て先制し、後半は逃げ切る展開にするのが理想だろう。準決勝のことを考えると遠藤、田中がイエローカードをもらうことは避けなければならないから、先行する試合展開は必須だ。

 頑張れ、ニッポン!