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「即時奪回」とポゼッションの相乗効果:川崎フロンターレの前半戦振り返り<2>

川崎フロンターレ前半戦振り返り第二回。

前回はボール奪取データからフロンターレの特徴を分析してみた。


フロンターレを上回ったのはコンサドーレだけ

 前回も対戦チームのデータも示したが、今回は見やすいように試合ごとにまとめてみた。ここではボール奪取数全体と敵陣でのボール奪取。数字がいい方を赤字にしてある。

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 ここで見てもわかるように、ほとんどの試合でフロンターレの方が、ボール奪取、敵陣ボール奪取とも多い。両方の数字で上回ったのは5/16に対戦したコンサドーレだけ。敵陣ボール奪取率だけならば5/4の試合でのグランパスも上回った。興味深いのは、この中で勝利できなかったのはサンフレッチェ戦とベガルタ戦だが、いずれもボール奪取数および敵陣ボール奪取数で大きく上回っている。その意味でこの数字と勝敗には大きな関係はないわけだが、「即時奪回」を掲げているフロンターレが意図したサッカーをできているかどうかを表す数字ではある。

トランジションが一番多かったのはアビスパ戦

 なお、両チームのボール奪取数の合計、すなわちトランジションの数自体が一番多かったのはアビスパ戦、それにアントラーズ戦、コンサドーレ戦が続く。アントラーズ戦とコンサドーレ戦は強度が高く、展開もめまぐるしい試合だったから予想通りだが、アビスパ戦が一番多いというのは意外だった。

 この試合はアビスパが最終ラインからの短めのロングボールを使ったため、中盤で競り合ったあとのボール争奪戦が頻繁に発生した。トランジションが多いのはそのせいだ。その中盤でのボール争奪戦でフロンターレが優勢に立ったことが、3-1というスコアに結びついた。

ボール奪取からの手数は実はフロンターレの方が多い

 次に、ボール奪取からのシュートを比較してみる。

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 前回も書いたように、対戦チームとの間ではっきりとした差が出たのはこの部分だ。絶対数においても、ボール奪取数に占める割合においてもすべての試合でフロンターレが上回っている。しかも多くの試合で2倍以上だ。

 この点から、フロンターレと対戦チームとの間には、ポジティブトランジション後の攻撃の有効性に差があると結論づけられる。

 ただし、ボール奪取からシュートに至るまでのパス数を見てみよう。フロンターレは平均値が5.2、対戦チームが4.4で、対戦チームの方が短い手数でシュートまで持ち込めている。

スライド5

 ただ、最大値はフロンターレがなんとヴォルティス戦でのジェジエウのボール奪取からの45本。一方対戦チームはコンサドーレの16本(2回)。フロンターレは全体で14本のシュートが、2桁以上のパスを経てのもの(14%)。

 一方、対戦チームで2桁以上のパスを経てシュートに持って行ったのはコンサドーレだけ(3本)。

 それ以外にはそれだけ多くのパスをつないでシュートまで持って行けたチームはなかった。合計で見て27本中3本の11%だが、コンサドーレ以外は実際には0%だ。


 ここからわかることは、「即時奪回」からのショートカウンターはもちろん迫力があるが、風間監督以来のフロンターレの伝統である、ショートパスを丁寧につないで相手を剥がして崩していく攻撃も非常に高い精度で機能していると言うことだ。

 それもセットプレーやキーパー起点と言うだけでなく、ポジティブトランジションという流動的な状況からも実行することができている。先に挙げた45本のパスからのシュートなどと言うのはすさまじい数だ。

 ではそのボール奪取で活躍したのは誰か。次回はそれを見てみよう。

(続く)