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左に寄せて、右で仕留める:速報レビュー サッカーW杯予選 日本対サウジアラビア(2022年2月1日)

 今日は埼玉スタジアムでサッカーワールドカップ予選、日本対サウジアラビア戦を観戦。これで最終予選は3試合目。

 試合前の状況をおさらいしておくと、日本はグループ2位。勝ち点は15。首位は今日の対戦相手のサウジアラビアで、勝ち点は19。4の差があるのでこの試合の結果で順位が入れ替わることはない。
 しかし3位のオーストラリアの勝ち点は14で日本との差はわずかに1。オーストラリアの試合は日本時間1時からオマーンと。日本がサウジに敗れ、オーストラリアがオマーンに勝つとオマーンに逆転される。この後の試合、オーストラリアとの直接対決はあるがそれはアウェイであることを考えると、この試合に敗れると、グループ2位までに入ることは非常に難しくなる。
 さらに、サウジの得失点差が+7。日本の得失点差が+4。日本の理想のシナリオは2点差をつけて勝ち、勝ち点差を1に詰めるとともに得失点差で逆転すること。ただこう言う試合はあまり高望みをするべきではない。とにかく勝つことを至上命題として臨んだ一戦だった。

 相当追い詰められた状況で迎えたこの試合だったが、世間の盛り上がりは今ひとつ。このあたり、「代表人気の低下」が間違いなく起こっているといえる。協会にももっと危機感を持ってほしいものなのだが・・・・。


 席はここから。2階席最前列。ただ手すりがちょうどハーフスペースを塞ぐ形になっていて、かなり見にくかった・・・・。

 ただ、娘はちょうど手すりの下から見る高さだったようで、ちょうど視線を塞がれた1階席最前列よりははるかに見やすかったとのこと。

両軍フォーメーション

 最終スコアは2-0(前半1-0)。2点差をつけ、しかもクリーンシートでの快勝と、日本としては最もいい結果を勝ち取ることができた。

 サウジは基本は4-2-3-1。ただしボールを保持すると。4バックのままビルドアップすることもあれば、ボランチが最終ラインに落ちて3バックになり、3-4-3のような形を取ることもあった。

 日本は最近の基本形の4-1-2-3。ただし試合の立ち上がりでは、守備時には早めにリトリートして4-4-2ブロックを組む形になった(上の写真参照)。

「左」に集めて「右」で仕留める

 日本側から見たポイントは、サイドの使い方だった。ここで言うサイドとは、5レーンに分けたときの左右の端にあるサイドレーンという意味ではなく、フィールドを縦に2つに分けたときの文字通りの「右側」と「左側」。

 試合の立ち上がりは、日本側が早めにリトリートしたこともあって、サウジ側が優勢だった。サウジは日本の前線のプレスを上手く引きつけながら、中盤に空いたスペースを利用してボールを前進させ、敵陣にそれほど苦労せず進入することができた。
 一方日本側は、最終ラインからのビルドアップが今ひとつつながらない。谷口彰悟、板倉滉のセンターバックからの縦パスも、1つ飛ばしたパスがことごとくブロックされ、今ひとつ攻め込むことができない。

 ここで状況を変えたのが守田英正と田中碧だった。最終ラインからのパスを一度受ける。ただ受けるだけでなく、少し左サイドにポジショニングを取り、ボールを左サイドで落ち着かせる。そうすることでサウジのディフェンスの重心を左サイドに偏らせる。

 そうなるとどうなるか。もちろん右サイドにスペースができる。そして右のウイングは日本が誇るスピードスター、伊東純也。

 左で少しボールを落ち着かせ、ディフェンダーの重心を引きつけることで、伊東の走るスペースができると言うことだ。最初のチャンスも中盤で左に寄せ、谷口を経由して、広いスペースで構える伊東へのパスで作り出した。

 サウジの重心を左に寄せさせたのは守田と田中だけではなかった。大迫もしばしば左サイドに流れる。
 大迫は右サイドにはほとんど流れなかったので、中央を嫌ってサイドに流れたと言うよりも、意識して左サイドにサウジのディフェンスを集めようとしたと言うことだろう。

 この形から何度かチャンスを作る。先制点はボールを落ち着かせてからではなく、左サイドでのスローインから一気に右に展開してのものであったが、それも全体としてサウジのディフェンスを日本側からみて左サイドにグルーピングさせることができてからのことだった。

 伊東の裏へのパスに追いつき、中央へ折り返し。大迫がスルーして南野が仕留める、とても美しい先制点だった。

 そのまま1-0で折り返し。

 後半立ち上がりも日本が攻勢に出る。この時のキーになったのは大迫だった。と言っても、大迫の代名詞の中央レーンでのポストプレーではない。前述したとおり、左に流れて、ボールをキープして時間を作る。中央には南野拓実が入り、あたかも「南野ゼロトップ」のような形になった。

 この時は、大迫が左に張ることでサウジのディフェンスを左にグルーピング。そこで右にボールを振って伊東がミドルシュートで仕留めた。

前線に4人を張らせたサウジの攻勢

 後半5分で早々と2-0と日本がリード。

 日本としてこれ以上ない展開になったこともあり、ここからの日本の目標は「このまま2-0で終わらせる」ことになる。一方、サウジは点を取りに行かなければならない。そこで前線に人数をかけてくる。下の写真のように、ビルドアップ時には前線に4人を張らせる。

 こうなると押し込まれる展開になるが、決定機と呼べるほど崩されることは1回ほどしかなく、日本はこのまま試合を2-0で終わらせることができた。

 サウジは、おそらく「引き分けでもいい」と考えていたのだろう。前半、先制されるまではちょっとしたコンタクトでも倒れ、時間を使い、アクチュアルプレータイムを少しでも減らそうとしていた。

 中東独特の「ベッドサッカー」というヤツだ。

 しかし先制され、しかも2点も取られてしまうとそうはいかない。前半とは打って変わってコンタクトでもなかなか倒れなくなったが、なかなか攻撃のスイッチが入らなかった。
 パスワークは美しく、きれいに崩されたことも何度かあったが、最後の「仕留め」の部分での迫力はそれほどではなかった。

 もちろん、中盤でにらみをきかせる遠藤が効いていたし、また谷口、板倉もセンターバックとして充分以上の仕事をした。様々な局面で奮闘した酒井宏樹のプレーも見事だった。

サウジとの「温度差」?

 印象としては、「普通に戦って、普通に日本が2-0で勝った」という印象。日本はここで負けると後が厳しくなる正真正銘の決戦だっただけに、現在1位のサウジとの温度差は少なからずあったか。
 この試合は、98年フランスW杯予選の時の、アウェイ韓国戦のような重要な試合だと思っていたが、考えてみればあのときもグループ1位の韓国はちょっとマージンを残したプレーぶりだった。
 このあたりは、お互いにとってのその試合の重さの違いを反映したものなのだろう。

決戦は続く

 オーストラリア対オマーン戦がまだ終わっていない段階で、1位がサウジアラビアは変わらず、勝ち点19,得失点差5。日本が1点差の勝ち点18、得失点差6。オーストラリアは勝ち点14、得失点差9。
 仮にオーストラリアがオマーンに勝てば勝ち点は17。勝ち点2つの差の中に3チームがひしめく激戦となる。そして日本の次の試合はアウェイオーストラリア戦。ここで勝てれば日本の進出はほぼ確実になろう。

 しかし負けると、アジアプレーオフ+大陸間プレーオフ行きが濃厚となる。

 サウジの次の相手は中国だから負けることは考えにくい。つまり日本がオーストラリアに敗れると、次の試合が終わった段階では、サウジが勝ち点22、オーストラリアが勝ち点20、日本が勝ち点18。最終節は日本はベトナムと戦い、サウジとオーストラリアは直接対決を迎える。
 オーストラリアが得失点差で優位にあることを考えると、この試合を引き分けに終わらせればオーストラリアの出場も決まる。このような状況では双方無理をせず引き分けで終わる可能性が高いだろう。そうなると日本はアジアプレーオフと大陸間プレーオフで勝利しなければ出場できなくなる。

 一方、日本がオーストラリアに勝利できれば、次節終了時の勝ち点はサウジが22、日本が21、オーストラリアが17。日本とサウジの出場が決まる。オーストラリア対日本戦が引き分けとなった場合は、サウジが22、日本が19、オーストラリアが18となるから、日本がベトナム戦に勝てれば日本の進出が決まる。そう考えると、次も負けられない試合だ。

 頑張れ。頑張れ、ニッポン。

(2/2 追記。タイトルも修正)
 深夜のオマーン対オーストラリア戦。まさかの2-2の引き分け。オーストラリアとしては最後の不用意なPKは悔やんでも悔やみきれないところでしょう。
 これで日本は次勝てば進出決定。引き分けでも最終節のベトナムに勝てば自力進出。だいぶ楽になりました。次負けてしまうとベトナム戦で大量点が必要になる可能性がありますが。