見出し画像

Thirdverseで目指す“VR x メタバース”の世界

私、國光宏尚は2021年7月28日に株式会社gumiの取締役会長を退任し、8月1日より株式会社Thirdverseの代表取締役CEOに就き、“VR x メタバース”の世界を実現するための航海に乗り出します。

「Thirdverse」という社名は、当社のビジョンそのものを表した造語です。これは ”Third place” と “Metaverse” を組み合わせた言葉です。

「サードプレイス」とは、アメリカの社会学者オルデンバーグ氏が提唱した、自宅(第1の場所)でもなく、職場や学校(第2の場所)でもない、自分の心が落ち着く「第3の居場所」という概念です。代表的な例としては、公園・カフェ・公共施設など、個人によって様々なものがあります。しかし、そのほぼ全てが「現実世界」にあるものです。

近年のVR市場の拡大・技術発展により、バーチャル空間の中に自分の居場所を創り出すことが可能になりました。今後、我々はより強く、バーチャル空間(Metaverse)における ”Third place” を創り続けていくという信念のもと、 ”Thirdverse” という名前の元でVR事業に取り組んでいきます。

VRで「世界」を目指す

僕が起業家として好きなこと、得意なところは、はっきりしています。

それは「新しいテクノロジーでなければできない、新しいエンターテイメントを作る」ことです。

僕がgumiを創業したのは2007年のことです。これはちょうど初代iPhoneが登場した年であり、FacebookやTwitterのようなSNSが広がり始めた頃です。インフラとしてAWSのようなクラウドも登場し、低コストに大規模なネットワークサービスを作れる環境も整ってきました。

「ソーシャルゲーム」「モバイルゲーム」は、それら当時の最先端テクノロジーを使う、まったく新しいビジネス分野でした。だから、開拓していくのはすごく楽しかった。

しかし、そうした分野も今は成熟しきってしまいました。いまや勝負はテクノロジーが決めるのではなく、キャラクターや世界観の比重が高くなってきたと言えるかもしれません。

一方、新しい分野として僕が注目してきたのは「VR」と「ブロックチェーン」です。2015年からVRに、2017年からはブロックチェーンに関わってきたわけですが、これらはこれから確実に成長する分野です。この新しいテクノロジーでなければできないものを生み出していくことに全力投球していきたい、というのがgumiを退任した1番大きな理由です。

gumiの時代、モバイルゲームではそれなりの成果を残せたのかな、と感じています。

一方、やり残したな、と思うこともあるんです。

それが「世界制覇」

画像1

僕は、VRというジャンルにおいて「日本発のコンテンツで世界を席巻する」ことを実現したい。VRやブロックチェーンの時代になら、日本から世界に手が届くと信じています。

スマートフォンの時代、惜しくも「世界」に手が届かなかった理由はいくつかあります。

一つは「プラットフォーマーとの距離感」。ある意味フィーチャーフォンで日本は大きく成功しすぎてしまったため、どの会社もスマートフォンへのチャレンジが遅れました。結果として、スマートフォン向けビジネスの入り口は、AppleやGoogleなどの海外勢に抑えられてしまいました。日本の中ではそれなりの規模になったとしても、やはり海外のプラットフォーマーとは距離感がありました。

かつて家庭用ゲーム機市場で日本が強かったのは、任天堂、ソニー、セガなど、日本の会社がプラットフォーマーだったことが、すごく良い影響を与えていたと思います。

世界中にコンテンツを届けるためには、プラットフォーマーとの連携は重要です。彼らと密接に協力しながら市場形成していくことが非常に大切です。

もう一つ、成功のために重要なのが「タイミング」です。マーケットの立ち上がり段階から良いポジションに居ることです。Thirdverseは世界のVR企業の中でもかなり早いタイミングでVR市場にフォーカスして事業を進めてきたため、この点に関しては狙い通りの動きができていると思っています。

最後は「人材面」です。gumiの創業時に国内外のSクラスの才能を集め切れたのかというと、そこは十分にやりきることができなかったと思っています。創業当時は会社の規模も小さかったし、僕もまだまだ起業家としての経験が不足していました。

ただ、今回のThirdverseでは人材的にも資金的にも十分な体制を用意しました。「世界制覇」というビジョンを共有するだけではなく、優秀なクリエイターには、実力にふさわしいポジションと報酬を用意して迎えています。

ひと昔前とは違い、日本国内の優秀なクリエイターにとっては、今は海外の大きな企業で働くことも、十分選択肢の一つに入る時代になってきました。

しかし、現時点「VRをメインとしたゲーム開発会社」という領域では、海外企業を含めても選択肢は少ないと思っています。我々はThirdverseの前身である「よむネコ」時代から含めれば5年以上、他社より先駆けてVRにフォーカスした挑戦を続けていますので、このジャンルにおいて世界における有力な選択肢であると自負しています。続々と優秀なクリエイターも参画しはじめてきてくれていますので、着実に組織としての成長も進んできています。

また我々は、最終的なビジョンとして「ただVRゲームを作る」ことが目的ではありません。VRゲームから発端したものがSNSのようにつながり、人々が集まる場所、すなわち「メタバース」を実現していくことを目指します。そうしたビジョンに共感いただける仲間をThirdverseは求めています。

まず目指すのは「VRを代表するゲーム」制作

Thirdverseにおいて、まず我々が目指すのは、VRで圧倒的な世界的ヒットゲームを作ることです。

現状のVR市場は、日本で感じる以上に海外を中心に爆発的な成長をはじめています。特に北米市場の成長が著しい。

2021年7月現在、FacebookのOculus Quest 2 だけでもすでに世界販売台数は500万台を超え、年内には1000万台も見えていると言われています。

現状のVR市場の中で、ゲームタイトルとして一番売れているのが『Beat Saber』です。すでに500万本を超えています。他にもミリオンセールス超えが4本くらい出てきている。すなわち、いいゲームさえ出せばしっかり売れるという、ゲームデベロッパーにとっては魅力的な市場になってきたと言えます。

また来年にはSIEからPS5向け次世代VRシステムが出るとも言われています。これも、確実に一定以上の数が普及するでしょう。そのペースで市場が拡大すれば、さらに中国企業なども独自のVR機器を開発して市場参入をはじめてくるでしょう。

そうなると、トータルでの全世界におけるVR機器の数は数千万台規模になり、大きなゲーム市場としてミリオンセールスを連発できる土壌ができあがります。

こうした市場で、まずは家庭用ゲーム機に近い「売り切り型」のVRゲームを開発し、成功を目指します。いわゆる「フリー・トゥ・プレイ」は、VR機器のトータルが全世界1億台を超えてからの可能性かなと予想しています。

画像2

ただ、さらにその先、我々が「Thirdverse構想」と呼ぶVRメタバースを実現させるためには、かなり入念な準備をしないといけない。

というのは、コミュニケーションを目的として人が集まるコンテンツを作るなら、「多くの人が集まれる環境」を作れることが必要だからです。今現在、Oculus Quest 2では同時に10人ぐらいの表示が限界です。これはハードの性能が向上することで解決される問題ではありますが、コミュニティとして十分な人数がストレスなく表示できるようになるのは、やはり5年後くらいにはなると思います。

順番としては、メタバースが実現できる環境が揃う前に、まずはゲームとしてビジネスで成功する必要があります。

バーチャルなコミュニティのためには「良いゲーム」が必要

最終的にメタバースを目標とするのに、なぜゲームでヒットを出す必要があるのか? ここには明確な関係があります。

シンプルに言えば『Minecraft』とコミュニティの関係と同じなのです。

僕が2007年にgumiを創業した当初に開発したのは、フィーチャーフォンに特化したTwitterのようなSNSでした。つまり、コミュニティサービスからスタートしたんです。

コミュニティサービスは、大きく分けて2つに分類できます。1つは「リアルの友達とつながるもの」。もう一つは「趣味などを通じて、リアルとは違う関係でつながるもの」です。

現在、SNSをはじめとする世界でヒットしているコミュニティサービスのほとんどは前者。基本的にはリアルの友達とつながるものです。

スマートフォン向けのコミュニティサービスが世界中で多数開発され、後者を狙ったものも出てきたのですが、結局うまくいっていません。

匿名+バーチャルな知り合い、という形はなかなか長続きしないのです。

なぜならば、話題が続かないからです。

新しい関係を築くには共通の話題が必要で、結局リアルな友達が集まるところが強い。リアルな知り合い・友人だと、共通な話題がいくらでもみつかります。だからFacebookもLINEも広く使われているんです。

一方で、「バーチャルな友達同士のコミュニティ」が成立しているのは、ほとんどがゲームの中なんです。ゲームという共通の話題があり、共通の敵や共通の仲間意識があるからです。だからそこでつながりができ、いつまでも維持できる。

昔から「MMORPGではフレンド同士で強固な関係ができる」と言われていますが、それはまさに、ゲームを通じて共通共有の目的が生まれるからです。

今後、FacebookやLINEのVR版のようなものも当然出てくると思います。それらはおそらくVR用HMDだけでつながるわけではなく、スマートフォンでもアクセスできるしARグラスでもできる……という感じになるでしょう。みんなとリアルに集まるとき、来れない友達はARで参加する......というようなリアルなつながりを拡張するサービスは確実に出てくると予想しています。

ただ、生活する中ですべてのアイデンティティが1つのコミュニティに集約されるとも思えない。

人の性格はとても複雑で、いろんな側面があります。ただ、そのいろんな側面というものを、社会性の中で「これが俺らしい」みたいな枠が作られ、そこから出れない……という感じの人も多いと思います。

もしバーチャルな世界に居られるならば、「今日は美少女になる」でもいいし、「今日はラオウみたいな強者になる」でもいい。その日の気分で自分自身を切り替えられるようになるはずです。

リアルな社会のコミュニティは、周囲にいる人間同士のつながりでできています。でも僕は、世界中から気の合うフレンドが集まる……みたいなことを、メタバースの中で実現したい。1つの外見と1つの性格、1つのコミュニティに縛られるのではなく、複数の外見・複数の性格を持っていて、複数のコミュニティを自分自身が選んで生きているような社会になってくると、生きる上での窮屈さから抜け出せるのではないか、と思うのです。

これまでのThirdverseは「初めてのVRゲームを開発して発売しました」という段階。これが『ソード・オブ・ガルガンチュア』です。現在、Thirdverseの日本スタジオと北米スタジオでそれぞれ1本ずつ新規のVRゲームを開発中ですが、これを大ヒットさせて、世界トップクラスのVRゲームスタジオとして名乗りを上げたいと思っています。

そして、それができた次のフェイズで、歴史に残る「VRの代表作」を作ることを目指します。現在は、ゲームを開発しながら、将来的にそれを実現できるチームを作るための組織づくりにも着手しています。

みんながVRに求めるのは「リアル」ではなく「リアリティがある世界」

重要なのは、「ではこれからどんなゲームや世界を作っていくのか」ということだと思います。

VRだと「リアルの代替となるバーチャルな世界を目指す」という話になりがちです。でも、VRの中にリアルな世界がそのままジャンプしてくるっていうことには、そんなに意味はないと思っているんです。

画像3

『ソード・オブ・ガルガンチュア』の開発から学んだことが1つあります。

『ソード・オブ・ガルガンチュア』は剣戟のリアリティを徹底的に追求し、それはある程度実現できたと思っています。簡単に言えば、きちんとVRの中で自分自身の身体を使ってチャンバラができるようになりました、ということ。これはVR内における「リアル」の再現なんです。

今までは様々な大学などで「いかにVR空間においてリアルを再現するか」という研究が多く行われてきましたが、我々の答えはそうじゃないんです。

みんなが望んでいたのは、VRの中でリアルな剣戟アクションをしたいのではなく、「バーチャルだけどリアルを感じるVR世界で、あのキャラになりきりたい。あの必殺技を自分の身体でやってみたい」だったんです。実際に、『ソード・オブ・ガルガンチュア』のコアユーザーが行き着く先は「色々な作品の必殺技をVR空間で再現する」というような現象も起きていました。

みんながバーチャルな世界に求めているのは、やはり「バーチャルでしかできないこと」だったんです。でも、それを「リアルに感じる」というのがバーチャルリアリティの本質なんだと学びました。

これはメタバースも同じです。

自分とのリアルな人間関係をバーチャル上で再現すること以外にも、メタバースの可能性はあると思っています。

だって、世の中の人って、自分の見た目に100パーセント満足してるわけじゃないと思うんですね。「なりたい自分」ってあると思うんです。それに加えて、なりたい性格もあるでしょう。

だからといって、リアルな関係をベースにしたSNSやメタバースがだめ、という話ではありません。もちろん、そういうメタバースを目指すところも出てくると思います。Facebookの「HORIZON」は明確にその方向性ですよね。

メタバースの世界は”Winner takes all(勝者総取り)”ではないと思っています。複数のサードプレイス(メタバース)があって、ユーザーはそれぞれを使い分けるようになると思います。

『ソードアート・オンライン』を一緒に作ろう!

僕は将来的には、メタバースの中での経済圏の方が、リアルな経済よりも大きくなると思っています。

僕らの人生の中で、可処分時間や可処分所得というのは、未来になっても変わらず、基本的には一定でしょう。

ではみんなはどこに自分のお金を使うのか、という話になるんですが、この答えは「自分の時間を長く費やしているところにお金を費やす」ようになると思うんです。

もし将来、すごく長い時間をメタバースの中で過ごすようになるなら、リアルな服だったり、靴だったり、インテリア用の絵画だったりではなく、より深いコミュニティが存在するバーチャルの中に、よりお金を使うのではないかと。この不自由なリアル世界と、より自由な自分になれるバーチャルな世界が選べるようになれば、後者に長い時間を割く人もいるというのは自然な考えだと思うんです。

メタバース内で作ったアイテムやオブジェクトの価値は、コミュニティが成長するほどに高まっていきます。今だって、Minecraftの中でクラフトして、そこからリスペクトを得ている人は現実にたくさん存在しています。

さらに、そこにブロックチェーンと組み合わせて価値を担保すれば、メタバースの中だけでお金が稼げるようになると思います。

この未来、面白いと思いませんか?

次の世代になれば、メタバースの中で収益を得る人がもっとたくさん出てきて、メタバース内の活動だけで生計を立てることが普通の事になると思っています。

もちろん、これは数年先で実現する世界ではありません。 こうしたメタバースが実現するには多数の課題があり、考えなければいけないことがたくさんあります。技術だけでは完成しません。

そこでちょっと考えておきたいことがあります。

VR業界だと、アニメ『ソードアート・オンライン』と映画『レディ・プレイヤー1』が、メタバースが実現された世界のモデルとして語られることが少なくありません。

両者の違いはなにか……と考えたとき、『ソードアート・オンライン』はその中でお金を稼げていないけれど、『レディ・プレイヤー1』はメタバースの中でお金を稼いで暮らしている人がいるところかな、と思うんです。

先ほど述べた「VRメタバースの中でお金を稼いで暮らす人がいる世界」は、『レディ・プレイヤー1』のオアシスが実現した世界、と言えます。オアシスというのは『レディ・プレイヤー1』の舞台となるVRメタバースで、その中では巨大な経済活動が成立し、多くの人がそこから収益を得て暮らしています。

一方で、ゲームをコミュニティとして生活しているものの、その中でお金を稼いでいる人は少数である『ソードアート・オンライン』の世界というのは、メタバースの中でお金が稼げるようになる、『レディ・プレイヤー1』よりも前段階の世界、と言えるかもしれません。

我々がまず作ろうとしているのは、簡単にいってしまえば、今の世の中における『ソードアート・オンライン』に相当するものです。誰もが「VRといえばこれ」という代名詞になるコンテンツを作れて、それが世界で大ヒットすれば、Thirdverseとしては一つ目のゴールに到達できたと言っていいのかもしれません。

つまり我々が今集めているのは、『ソードアート・オンライン』を一緒に作る仲間だ、ということになりますね(笑) もちろんその先に、『レディ・プレイヤー1』のオアシスを作ることを目指します。VR x メタバース「Thirdverse構想」実現に向けた楽しい冒険の始まりです!

VRとブロックチェーンが合わさった時に真のメタバースが産まれる。これが「Thirdverse構想」2030年までのビジョンをまとめてるので、是非ご覧になってください!

画像4

Thirdverseは各ポジションのクリエイターを積極採用中です。Thirdverse構想に共感し、共に世界へ挑戦したい方はぜひご応募ください!
https://thirdverse.io/ja/careers.html

取材・執筆:西田 宗千佳 https://twitter.com/mnishi41
撮影:稲垣 純也 https://twitter.com/inagakijunya

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?