「生活の基盤はリアルからバーチャルへ」 なりたい自分で生きていく「Thirdverse構想」とは
2019年に世界初のマルチプレイVR剣戟アクションゲーム『ソード・オブ・ガルガンチュア』を発表した株式会社よむネコは、2020年6月13日付で、社名を株式会社Thirdverse(サードバース)へと変更いたしました。また、ファウンダー 兼 投資家である國光をはじめ、代表取締役によむネコ創業者である新、取締役COOとして新たに伴を迎えました。
私たちはこれから、VRゲームにブロックチェーンの技術を組み合わせた「多くの人々が住める新しい仮想世界創り」に着手します。私たちはこの計画を「Thirdverse構想」と呼んでいます。3つの段階からなるこの構想は、オンライン上で人がコミュニケーションすることが当たり前となる「バーチャルファースト」の時代を牽引し、人々が自由に生きられる未来を創っていくための構想です。
「Thirdverse構想」始動
株式会社Thirdverse。「自宅や学校・職場とは違う、自分らしい時間を過ごすことができる第三の居場所(Third Place)を仮想世界(Metaverse)上に創る」新しい社名にはこのような想いが込められています。VRゲームをただのゲームでは終わらせず、そこに経済圏を加えることで「多くの人々が住む、新しい仮想世界」を作っていくことを目指しています。
自分らしい時間を過ごすことができる第三の居場所を、なぜ仮想空間上に創るのか。その根本には、多くの人々が今自分が生きている世界に、完全には満足していないのでは、という思いがありました。何かとストレスや心配ごとを抱えやすい今の時代。その理由の一つには、生まれ持った外見や、社会から求められる期待を背負いながら、数少ないコミュニティの中で生きていくことに息苦しさを感じる人が多いからだと思います。
一つの外見、一つの性格、一つのコミュニティで、一生を過ごす。これまでは当たり前の話でした。知らず知らずのうちに「自分はこういう人間だ」と縛っていたことにも、気がつかなかったかもしれません。しかし、もし仮想空間上で自分好みのアバター(分身)を複数持つことができたらどうでしょうか。アバターに合わせた複数の性格を持ち、複数のコミュニティを行ききしながら生活をしていくことができたら、どうでしょうか。性別も国籍も外見も関係なく、自分が選んだ好きな自分でいれる場所があったら。そこはきっと、人々が自由に生きられる素敵な世界です。
「一人ひとりが自分の手に選択肢を持ち、なりたい自分を生きていく世界」そんな自由な世界を創ることが、私たちのミッションです。
前身の株式会社よむネコでは、2013年の創立以降、VRのMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)を目指して開発を続けてきました。2019年に発表したVR剣戟マルチプレイアクション『ソード・オブ・ガルガンチュア』においても、日本のVRゲーム開発では随一の技術を持っていると自負しています。この度の社名変更は、開発が順調に進む中、もう一歩次の段階に進むためのものです。思い描いていた世界を創る、Thirdverse構想を始動するための覚悟です。
2020年は人々の生活様式に大きな変化が起こり、オンライン上に集まって会話をしたり、ゲームの中で友達と集まることは一般的になりつつあります。このバーチャルファーストの流れは、VR業界にとってもThirdverse構想にとっても大きな追い風です。
Thirdverse構想は、これから先の10年間を見据え、3つの段階を想定しています。現在進行中のものも含めて、順番にご説明していきます。
バーチャル空間で好きな自分で過ごすようになる「第一段階」
第一段階では2022年完成を目標に、多くの人々がVR空間で過ごすためのプラットフォームを創っていきます。
現在はThirdverseでは、昨年6月にリリースした『ソード・オブ・ガルガンチュア』の定期的なアップデートを行っています。今はMO(複数プレイヤー参加型オンラインゲーム)型ですが、ここから数百人、数千人のプレイヤーが同時接続できるMMO型ゲームの開発を目指し、システム・技術のアップデートを繰り返している段階です。
(『ソード・オブ・ガルガンチュア』のオンラインラウンジ写真)
一方将来ユーザーとなる方々にとっても、これからの数年間でバーチャル空間での過ごし方はかなり変わってきます。2020年の上半期は、これまでリアルで会っていた友達とオンラインで飲み会をしたり、ゲームの中で会うことを多くの方が体験しました。特にオンライン飲み会は、バーチャル空間への移行を勢いづける重要なステップの一つだと思っていて、そう遠くない未来、多くの人が自分が映る画面にフィルターをかけるようになります。カメラアプリを使用した写真をSNSに投稿することと同じように、自分を少しよく見せるのです。
外見をよくしたいという欲求を、これまでは我々はメイクやヘアスタイルを変えることで叶えてきました。これからはフィルターを使うことで簡単に「人気女優風の自分」や「韓流スター風の自分」、「ハリウッド俳優風の自分」と、自由に楽しめるようになっていきます。友達同士で「韓流フィルターをつけて集まる韓流パーティー」などが行われるようになれば、それはもうバーチャル上の1つのコミュニティと呼べるわけです。
好きなものが同じ人同士が集まるクラスターが、バーチャル空間上にどんどん発生していくと、フィルターを変えるだけで複数のコミュニティを自由に行ききすることができるようになります。見た目が異なるそれぞれの場所で「見せる性格」が変わることも、そう不自然なことではない。
もちろん自分と違う性別を選んでもいいわけで、性別を変えたら声も変えたくなってくるでしょう。数年以内には音声会話のリアルタイム翻訳も、もっと高性能になってくるはずです。そうなってくると、言語すら関係なくなります。さまざまな自分を楽しんでいるうちに、年齢や性別、国籍を気にせずに世界中の人とコミュニケーションできるようになるでしょう。
近い将来、人類史上で初めて、「見た目が関係なくなる世界」がやってきます。長い歴史の中で払拭できなかった偏見や差別も、バーチャル空間では全く関係なくなってきます。性別も国籍も関係ない「中身で信頼しあえる人間関係」が生まれることになるでしょう。
今のソーシャルネットワークは、まだ2Dですが、これがVRとなれば3Dで自分の見た目を全て変えることができるようになります。没入感も圧倒的に変わってきます。その中で人と出会えるプラットフォームを、まずはVRゲームという形で実現していきます。
経済圏が生まれ、好きなことで生きていける「第二段階」
第二段階は2025年完成を目処に、人々が過ごす仮想世界で経済活動をできるようにしていきます。
ここで必須なのがブロックチェーンの技術。現実世界と仮想世界で同等の資産価値を測れるブロックチェーンを掛け合わせることで、仮想世界での経済活動は現実味を帯びてきます。
例えば、これまでであればゲーム上でいくらお金を稼いでも、リアルの世界では1円にも換金できませんでした。これまでのデジタルデータはいくらでもコピーができたので、そこに価値を持たせられないことが原因でした。ブロックチェーンはこのデジタルデータがコピーができないことが最も重要で、ビットコインもただのデータでしかないものの、コピーができないからこそ、それ自体に資産価値を持たせることができています。
これがVRゲームの中に入ってくるとどうなるかというと、例えばゲームの中で「家作りが上手で有名な人」が建てる家があるとします。それがもし限定1個だとしたら、お金を払ってでも欲しい人は出てきますよね。世界に一つしかないという価値が生まれるからです。モノの価値とは、需要と供給で決まるものです。コピーができる=供給が無限であれば、価値はゼロに等しくなりますが、供給が限られた本物には、本物である価値が生まれます。供給量を制限できるテクノロジーだからこそ、バーチャル上であっても素晴らしい建物や憧れの服、車や武器など、全てのものに価値をつけられるようになります。
「有名なアーティストが創った限定100着の服が欲しい」「伝説の武器職人が作った武器を買いたい」…こういった需要が生まれれば、それはもう一つの新しい経済圏です。
その先には、ゲームの中でのモノ作りが得意な人は、それを仮想世界で売ることができ、、現実世界でお金を稼ぐことが得意な人は、それをお金で買い需要と供給が満たされる世界が待っています。
資本主義の日本では、多くの労働者は、労働に対して賃金をもらうことが一般的です。稼ぎを増やしていくためには働く時間を増やしたり、スキルアップをして転職をしたりと、今自分が担う役割から努力を続けていかなければなりませんでした。しかしもし、VR空間上で自分のアバターが好きな職業を持ち、新しく稼ぐ手段を持つことができたら。現実世界ではまだ難しい「自分の好きなことでお金を稼ぐこと」も、可能になるかもしれません。
このように複数の外見、複数の性格、複数のコミュニティに複数の経済圏を自分で選んでいけるようになれば、人々はより自由に生きられるようになるはずです。これはそう遠くない未来の話で、今でもすでにこの兆候はあります。eSportsの世界ではゲームで莫大な賞金を手にする人がすでにいますし、YouTubeで人気のゲーム実況コンテンツは「ゲームをやっている姿を発信すること」でお金を稼いでいます。今はまだ、熟練した力を持つごくごく一部の人だけの話ですが、近い将来、ゲームの中で多くの人がお金を稼げる時代はやってきます。
これは、一生懸命勉強していい学校に入り、いい企業に入ってお金を稼ぐこととは違う、別の選択肢が生まれるということです。
これだけ変化の多い時代に、何が起きても変わらないことは2つあります。1日は平等に24時間だということと、人はいつか死ぬということです。
限られた時間の中で「不自由だと感じる現実の世界で生きる」のか、または「自分らしい自分でいれて、お金も稼げるバーチャルの世界で生きる」のか、どちらを選ぶかと問われたら、後者を選ぶ人が増えてくるはずです。そうなったときに、実際のお金をどう稼ぎ、どちらの世界に多く使うのか、価値観が大きく変わります。私は多くの人が、より多くのお金と可処分時間をバーチャル世界に使うようになってくると思います。バーチャル世界の経済は、これからより大きくなっていくのです。
(左から、伴、國光、新)
自分が生きていく社会の仕組みを創り・選ぶ「第三段階」
Thirdverse構想の最後となる第三段階では、「自分が生きやすい社会を選べる」仕組みを創りだします。完成目標は、2030年です。
第一段階・第二段階は自分自身を変えることにフォーカスしてきましたが、とはいえ人が集まればルールが必要になり、社会が生まれます。この社会を生きやすいものにするためにはどうしたらいいかが課題であり、ここでもブロックチェーンやビットコインの技術が関わってきます。
一つの社会の中で複数の意見・対立が生まれたときに、現実世界では民主主義によって多数決でどちらか一方が選ばれることが多いですが、「じゃあそっちでも試してみよう」と分裂させて新たなコミュニティを創ることができるのが、ブロックチェーンを用いた仮想通貨の特徴です。このハードフォークと呼ばれるシステムにより、「自分たちが正しいと思う方法を試す」ためにコミュニティを分岐させることができます。結果、よかった方に人が集まり、そちらが主流になっていくという、現実世界では実現できない流れを作ることができます。
これはコミュニティに止まらず、社会そのものが複数あっても良いわけです。
ここはアートを楽しむだけの社会、ここは戦いの中で鍛錬を重ねる社会、ここはゆっくり過ごしたい人だけが集まる社会…色々あっていいと思っています。現実では1つの社会の中で全員が生きていかなければならないため、組織ごとの力関係の強い弱いや、双方の批判が生まれがちです。バーチャルの世界であれば、ある程度の人数が集まったら分岐して、同じ考え方を持つ者同士でその社会をよくするために、それぞれ切磋琢磨して制度を作っていけばいいんです。もし突出して成功する制度が生まれれば、それを現実社会に持ってきてもいい。
現実社会に不満があったとしても、変えることは相当難しい。失敗が許されないため、リセットが事実上できないからです。トライアンドエラーが難しい現実社会に変わってバーチャル空間で試し、良い結果を現実世界に逆輸入をするということも可能です。人の生き方が変わるということは、社会が変わるということです。第三段階では複数の政治形態、複数の社会の仕組みすらも自分の好きなところを選べる、そんな未来を描いていきます。
未来を待つか? 未来を創るか?
3つの段階に分けてThirdverse構想をお話してきましたが、行き着くところ「一人ひとりにとっての豊かな人生を、それぞれが選択肢の中から選び、心地よく暮らしていける世界を創る」ここに尽きます。
一昔前のように、物質的に豊かになることが全人生の幸せとはならなくなってきました。人生で大切なものは何か、これはなかなか難しい問題で、みんなが考え続けている問題です。
ヒトの内面は、とても複雑なものだと思っています。一人の自分で生き続けること、「持って生まれた1つの外見と社会から期待される役割」に縛られることは、本当は不自然なのではないか。いろいろな面を持つ一人の人間として、その日の気分によって使い分けてもいいはずなんです。でも、なかなか現実世界では難しい。バーチャル空間のいいところは、リセットがきくことです。複数の自分がいるから、もし所属するコミュニティが嫌になったら、別のコミュニティに行けばいい。そうなってくると、わざわざ苦しいところでもがき続ける必要もない。どこかに自分と合う人達、コミュニティは必ずあります。世界中から自分と合う人たちを探して、その中でコミュニティを作っていけば、よりみんながハッピーに生きていけるのではないでしょうか。
そのために、仮想世界上に、新しい場所・社会を創るのです。
これを実現することは、簡単なことではありません。今日この瞬間にもVR技術のアップデートに力を注いでくれているThirdverseの仲間、これから参加してくれる未来の仲間たちの力は絶対に必要です。そして、その仲間たちに持っていてほしいのは、「この世界を自分が率先して創っていくんだ」という強い想いです。
何かを成し遂げるために大事なことは、「誰よりも早く挑戦して、誰よりも早く失敗し、誰よりも早く復活する」こと。そして、「他人の失敗も尊重できること」に尽きます。これだけが、正解にたどり着く方法。私はそう信じているので、挑戦や失敗を恐れない人と、これから一緒にThirdverseを創っていきたいと考えています。
夢を語っているだけでは、何も起こりません。未来は予想するものではなく、自分たちで創りだすものです。
私たちはこれから理想とする世界の実現に向けて、バーチャルファーストの時代を先頭で駆け抜けていきます。
これまでの当たり前だった画一的な生き方で、苦しい思いをしている人を減らしたい。アイデンティティやライフスタイルを好きに選んで生きていける世界を創りたい。重要なのは、選択肢の幅を広げることです。そのための世界をVR空間上に創っていきます。
もうSF映画の中だけの話ではないはずです。自分の人生にとって何が大切かを一人ひとりが考え、自分の人生を自分の取捨選択によって豊かに生きていける人を増やしていきます。
そして私たちが新たな社会を創り出した先、目指すはただ一つ、世界です。日本だけで通用するものを創るつもりはありません。全世界に向けて届けられるものを、全世界の人がいいと思うものを。誰よりも真摯に、やるからにはグローバルに! Thirdverseは、この構想をもって、VR業界の世界一を獲りにいきます。VR is Now!
取材・執筆:柴田 佐世子(https://twitter.com/saayoo345)
編集:柴山 由香(https://twitter.com/yuka_lab12)
撮影:稲垣 純也(https://twitter.com/inagakijunya)
バナー:小野寺 美穂(https://twitter.com/derami_no)
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