鹿児島のそうめんはよく泳ぐ|博多幸福論#042
それまでの私は、「流しそうめん」と「そうめん流し」の違いを知らなかった。
「流しそうめん」は竹の筒にそうめんを流すもので、「そうめん流し」は卓上のそうめん泳がせマシンの中にそうめんを流すものらしい。
今までの人生で登場することのなかった「そうめん流し」。
これは絶対に娘の心を掴むはずだと確信し、鹿児島キャンプ二日目の昼どきを目掛けて唐船峡に向かった。
駐車場から店の入り口までの緑が生い茂った山道を歩いているだけで、すでに空気がおいしい。水もおいしいに違いない。
この日は空いていたので、看板の矢印に案内されるがままに進み、すぐに注文をして席に着くことができた。
池では無数の鯉の稚魚が泳いでいる。黒々としている鯉の群れは、近づけば千と千尋の世界のようにどこかへ連れていかれそうな雰囲気がある。
屋根の上にはカラスが止まり、客の食べ残しを狙っている。
「この鮎、美味しいね!泥臭さがなくて鮎っぽくないね!」なんて言いながら食べていたこの魚、マスだった。
鯉のお刺身は少し筋があって食べづらく、味もぼんやりしていた。
鯛の汁物は白味噌で独特の味がして少し苦手だった。
今度行く機会があれば、そうめんだけを注文するのでもいいかもしれない。
娘は他の品には目もくれず、そうめんに全集中!
目をキラキラさせて次々とそうめんを流している。それだけでもう来た甲斐があったなぁと思ってしまう親心・・。
そうめん流しマシンに入れられたそうめんは鯉よりも泳ぐのが速い。ビュンビュンスピードを出して泳ぐからついつい見惚れてしまい、食べるよりもそうめんを流すことが目的になってしまう。
そうめんを食べ終える頃、池にアオサギがやってきた。
鯉の動きをじっと観察して狙いを定め、長い口ばしで一匹の鯉を瞬時に仕留める。鯉はアオサギの喉元でも、まだ動いていた。
そんな自然のショータイムに息を呑み、すっかり満足して私たちは出口まで歩いて行った。
おや?
入り口に看板がもう一つあった。
おや??
左と右で店が違う?????
「何が違うんだろうね」と看板の前で話していたら、通りすがりの地元のかたが教えてくれた。
「左は市営、右は民営。市営のつゆがおいしいから、市営が断然人気なのよ。」
え、お店入る前に出会いたかった、、おばぁさま・・・。
「いつもは市営は長蛇の列でかなり待つけど、今日は肌寒くて天気も悪いから空いてるのよ。市営の列に諦めて流れた人たちが右へ行くのよ。」
「そーそー。うちもいつも市営に行くよー。」と、通りすがりのおじさんも相槌を打つ。
そんなこと知る由もなかった。
看板の赤い矢印を見て自然と右に曲がってしまった。
左も同じ店だと思ってたし。
クーなんか悔しい!!
これは市営リベンジしなければ。
民間だってもちろん美味しかったけど、違いを知りたい。
次は迷わず左へ進む!左!!!!!!!
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