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自己暗示

 今はそれどころじゃないから。
そう言い訳をして、事実から目を背けている自分がいる。

ずっと、長いこと好きだったんだ、簡単に忘れられる訳ないのに。

ふとした瞬間に、ことある事に、思い出しては込み上げる熱を飲み込んで思い出に蓋をする。

きっと私なら、上手く振る舞えるだろう。

好きな人から友人になるだけだ、大丈夫。


____大丈夫、なんて便利な言葉だ。

言葉に出そうとすると、口にしようとすると、震える。目の前が滲む。

何も考えたくない。何も。

己の内にある彼の人の存在を、その大きさを痛感した。

簡単には消えてくれない感情が、嗚咽と共に出されても、きっと薄まることはないのだろう。

1人でやっていけないことはないけれど、心には寂寥感と喪失感があり、それは日に日に濃度を増した。

喉につっかえる言葉を飲み込む。今までしてきたように。"元"に戻れるように。


大丈夫、大丈夫。

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