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登山靴あれこれ④(サロモンX-ultraⅢ)

登山靴というと革製の重い靴というイメージがありますが、現在は化学繊維製で軽量な登山靴が増えてきています。ローカットの軽量登山靴であるサロモンX-ultraⅢを通して、その良さをお話したいなと思います。

X-ultraⅢGTXの概要

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総合スポーツ企業であるサロモンは数々のスポーツ用品を販売していますが、近年はアウトドアシューズにも力を入れています。そのサロモンが「ハイキングシューズ」のカテゴリーの商品として開発したものがX-ultraです。私が使用しているモデルはその3世代目、「X-ultra Ⅲ GTX wide 」になります。X-ultraには標準ラストと幅広ラストがあり、幅広モデルにはwideという型番が与えられています。ウィズ3E相当であり、私の足囲は2E~3Eなので、このワイドモデルを選択しています。また、ローカットモデルとミッドカットモデルが併売されています。登山靴というとミッドカット以上、ハイカットが主流ではありますが、このモデルはローカット。スニーカー並みの軽さと軽快な歩行性を持ちます。ローカットの利点は足首の可動域の広さ。足首の動きが制限されないことで、軽快な足さばきが可能となります。

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new balance M576と変わらない重量。スニーカー感覚で登山道を歩くことができます

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ちなみにハイカットで革製の登山靴のLOWAタホープロは940g。X-ultraと比べると圧倒的に重い...

ロングトレイルを踏破するために開発とされており、土道での高いグリップと安定性を持ちます。同社が別に発売している「トレイルランニング」カテゴリーの商品とは重なる部分はあるものの、こちらの「ハイキングシューズ」カテゴリーは快適な歩行を目的とした安定性重視のセッティングがなされています。それについて各部位ごとにレビューしたいと思います

アッパーについて

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アッパーには化学繊維(ナイロン)が使用されています。メッシュではないため通気性抜群というわけではありませんが、革に比べて高い通気性を持ちます。また、強い引き裂き強度及び耐久性を持ちます。樹脂のパーツで補強を行うことで剛性を確保しており、クイックシューレースと連動して甲全体を締め込むことで高いフィット感と靴の中で足をしっかり固定する剛性をもたらします。

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便利なクイックシューレース。少ない動作で簡単に靴紐を締めこめるため靴の脱ぎ履きが大変楽に

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樹脂パーツがクイックシューレースに連動して足の側面から締め込むため、高いフィット感と、足の固定力も上々

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足先にはトゥガードが設定され、爪先のプロテクションを確保

弱点としてはやはり軽量な化学繊維のアッパーのため衝撃吸収性は低く、側面を岩や石にぶつけると、とても痛いこと。補強はされているものの薄いパーツでプロテクション効果は少ないため、衝撃吸収性についてはどうしても革より劣ります

ソールについて

ソールはアウトソール、ミッドソール、シャーシ(シャンク)が一体化されており、土や泥の悪路に適したセッティングがされています。シャンクと同じ効果を持つ「アドバンスドシャーシ」は踵から土踏まず付近まで設定され、踵の高い安定性をもたらします。

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登山靴というと足先までシャンクプレートが入っていることが多いのですが、X-ultraは土踏まずまで。よって足先のソールは指の関節部分で曲がるので歩きやすく、自然な歩行が可能となります。細かいスタンスに立ち込む場合のサポートは低いですが、その代わり高い歩行性を確保しています

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指の関節(MP関節)の部分で曲がる。そのため地面を足先でしっかり蹴って歩みを進めることができる

ミッドソールにはEVA素材が使用され、適度なクッション性を持ちます。個人的な感覚では軽い荷物で土道を歩くに適したクッション性で、ガレ場などの岩場を歩くと突き上げを感じることがあります。また、「歩く」ことに適したクッションの固さであり、「走る」には適しません。短時間ならともかく長時間に渡り走れば痛みを生じるのではないかと思います

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アウトソールとシャーシの間にEVA素材のミッドソール。EVAのため加水分解は少ないとされる。

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こちらはタホープロのソール。縦走用の登山靴だけに分厚いPU素材のミッドソールで高い衝撃吸収性を持ち、ガレ場や岩場でも足裏に突き上げを感じにくい

アウトソールはトレイルランニングシューズのソールパターンを採用していて、ラグの大きいパターンをしています。これが土道での強力なグリップをもたらしています。雑に足を置いたとしてもしっかりグリップするため、自然と歩みが早くなります。しかし、土道に強い分、岩場でのグリップは少し劣る部分があり、特に濡れた岩場では雑に足を置かず、足裏全体をしっかり置くようにしたいところです

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サロモン独自のソールであるHigh Traction Contagrip。広いラグが土や泥での高いグリップを生む

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タホープロはオーソドックスなソールパターン。岩場から土道までオールラウンドに対応する。接地面が多いため岩場でもよくグリップする

ライニングとインソールについて

ライニングには登山靴の標準ともいえるゴアテックスが使用され、高い防水性と透湿性を確保しています。軽量化のためか足当たりを良くするパッドはあまり使われていない模様。それでも決して履き心地が悪いというわけでわなく、長時間の使用にも十分に耐えうる仕様になっています。

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インソールにはオーソライト。特別なサポート機能を持ったものではありませんが、クッション性と通気性に優れるとのこと

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ローカットの登山靴について

重い登山靴ばかり使っていましたが、ふと興味を持ち、ローカットの登山靴を使ってみたところ最初の感想は軽い!歩きやすい!でも安定性は少し頼りない...?でした。靴が軽いためどっしり感がなく、特に登りで足を置いた際に不安を感じたのです。しかし、それは靴の安定性が足りないのではなく、私の足の置き方に問題があったのだと考えています。軽い靴にはそれに適した歩き方があり、ローカットの足首の自由度を生かし、足裏全体で接地し体を持ち上げるようにすればバランスが崩れることなく登ることができます。重い登山靴はサポートが強いため雑に足を置いてもある程度安定するのですが、その分軽いローカットの靴のような軽快な歩きはできません。歩き方に慣れた今は実に快適という印象です。また、ローカットモデルは靴の内部へ石や泥の侵入が気になるところですが、これはゲイターを装着することでカバーできると思っています。

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晴天でもゲイターを使うことでローカットの靴でもハイカットと同じような水や小石、泥へのプロテクションを持つことができる

まとめ

X-ultraⅢは土道における安定性と快適性を確保した靴で、その軽さとソールの柔らかさから快適な歩行性を持ちます。スニーカー等の普段履く靴と同じ感覚で歩くことができるため、登山初心者の方でも気軽に使うことができると思います。(これから登山を始める方はソールが柔らか目でミッドカット以上、オーソドックスなソールパターンの登山靴の方が向いているとは思いますが、、、)

個人的には岩場やガレ場において足裏への突き上げ感じること、岩でのグリップに少し不安を感じることがあるため、岩場の少ない低山での使用が適当と考えています。もちろん、岩場で滑るというわけでなく、一般的な登山靴のソール(例えばビブラムソール)に比べると多少劣るかなという程度なので、その特性を理解していれば問題ないことだと思います。ライニングにはゴアテックスが使用さているためゲイターとの併用で防水性も十分に確保できます

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こういったガレ場や岩場メインの登山道には少し不向きかな?

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こういった土メインの登山道ではとても快適で、低山では積極的に使っていきたいと思わせます

靴自体のサポート力は高いわけではないため、重い荷物を背負って長時間歩くような山行には向かないかなとも感じています。よって適した山行は、荷物の少ない日帰りで、かつ土道がほとんどの2000m以下の低山(低山でも岩場メインの山はありますが)。軽量な荷物で土道をペース良く歩くには実に快適な靴です。

長くなりましたが、X-ultraⅢ及びローカットの軽量登山靴はなかなか良いよ!という話でした。


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