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仕事仲間とは、SNS上で勤務時間以外にあんまり喋りたくない? (論文紹介)

私達は生活している上で、家族、同僚、友人などなど、色々な人と付き合い会話したりする。同様に、SNS上でも私達は会話したり情報を共有したりすする。「SNS上を介さない付き合いと比べ、SNS上での付き合いにはどのような特徴があるのだろうか?」この疑問について、意外なことにあまり明らかになっていません。今回紹介するICWSMという国際会議に採択された"More than Meets the Tie: Examining the Role of Interpersonal Relationships in Social Networks."という論文は、SNS上での会話がどのような関係の人たちと行われ、どういった特徴や傾向があるのかについて取り組んだ内容となっています。

SNS上で見られる5つの関係

著者らはSNS上の対話を行う関係を以下の5つを定義し、各関係ごとにおいてどのような特徴があるのかを調査しました。

  • Social: いわゆる、友人関係などの最も一般的な関係

  • Romance: 恋愛関係

  • Family: 家族

  • Organization: 一緒の組織、チームなどの関係で、同僚などが含まれます

  • Parasocial: ファンと有名人の関係など非対称的な関係

この5つの関係をSNS上のデータから収集するために、このような投稿の中で直接言及している関係を用いて、約967万の関係を収集しました。

 この場合は、@myAccountと@myFriendがOrganizationの関係とみなされます

言語的特徴

著者らはLIWCというコーパスを用いて、テキストに現れる人称の扱い方などを分析しました。例えば、1人称 (私 / 僕)や2人称 (あなた)などの言葉はromanceやparasocialなどの関係で高く頻繁に出現し、2人の関係について述べていることがわかります。一方で、organizationの関係ではWeなどの複数形を用いることが多く集団的アイデンティティが出現しているそうです。また、汚い言葉や表現はsocialな関係で多く出現していることもわかります。

ネットワーク構造

次に、関係ごとにコミュニケーション頻度やその関係を取り巻くネットワーク構造についても調査しました。その結果、romanceな関係同士のコミュニケーションがお互いに行われ、頻度も多いことがわかります。どうも、SNS上であっても、恋愛関係の相手とのコミュニケーションは他の人達よりも重視されるそうです。一方で、parasocialの関係においては、対話関係の双方のネットワークは全く異なる形となっており、「ファンとアイドル」の関係が顕著にあらわれています。

コミュニケーションの時間

コミュニケーションが頻繁に行われる時間は、関係によってどのように変化するのだろうか?顕著な結果として分かったのは、organizationalの関係の人たちとは勤務時間中 (9 - 16時)に顕著に高く、その後低下しているというものです。おそらく、仕事上の活動が終わると、友人や家族との会話に移行していることが伺えます。また、romanceの関係をさらにグループ分けして会話の時間を見てみると、恋愛初期段階 (「彼氏・彼女」)の関係では遅い時間帯に会話している一方で、安定段階 (「婚約・配偶者」)とは夜間に同じ空間を共有するためか、SNSでは昼などの他の時間で会話しています。このようにSNSの会話の時間を見ると、それぞれの関係の過ごし方が見えてくるのです。

この研究では、SNS上で関係ごとにどのようにコミュニケーションが変化していくかに着目したものです。これによって、対人関係におけるコミュニケーション行動の違いや、情報がどのよに拡散していくかをより深く理解することができるのです。

Choi, M., Budak, C., Romero, D. M., & Jurgens, D. (2021, May). More than Meets the Tie: Examining the Role of Interpersonal Relationships in Social Networks. In Proceedings of the International AAAI Conference on Web and Social Media (Vol. 15, pp. 105-116).
https://ojs.aaai.org/index.php/ICWSM/article/view/18045


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