前回対戦に転がっているヒントを生かすのは 〜J2リーグ第32節 レノファ山口FC vs 愛媛FC プレビュー〜
J2リーグ第32節 レノファ山口FC vs 愛媛FCのプレビューです。
前節の振り返りはこちらです。
対戦成績
過去7度対戦があるこのカード,対戦成績は愛媛の3勝3分1敗となっています。少ない対戦成績ですが愛媛がリードしている状況です。現在愛媛が2連勝中です。
今シーズンの第1戦は4節に愛媛のホームで行われました。試合展開を簡単に振り返りましょう。
試合は,立ち上がりから山口の4-3-3のプレスがうまくいかず愛媛のビルドアップが上回る展開となりました。そんな中で前半23分に愛媛の3バックの左を務める前野からのロングボールで山口の右サイドの裏を取り,そこからPKを奪取し愛媛が先制,そして2分後にはまたもや左サイドでのビルドアップから右サイドの長沼に展開し長沼のクロスを神谷が押し込んで2点目を奪いました。
山口は前半36分に相手DFからボールを奪った工藤がゴールを決め1点を返し,後半にはシステムを4-2-3-1に変更するなどして追い上げを見せましたが,愛媛がそのまま2-1で勝利を収めたという試合でした。
愛媛の見事なビルドアップからの攻撃が印象に残った試合でした。
前回の山口ホームの対戦は昨シーズンの第2節に行われた試合です。試合は前貴之のクロスをオナイウが合わせた1点で山口が逃げ切り,山口が愛媛に対して初勝利を収めました。ちなみにこの時の愛媛の監督は間瀬監督でした。
対戦成績を眺めてみると,アウェイチームは勝利を収めたことがないということが読み取れます。愛媛ホームでは愛媛の3勝1分,山口ホームでは山口の1勝2分です。今回の対戦は山口のホームで行われます。このジンクスが続き山口が勝ち点を獲得することになるのでしょうか,それとも愛媛が勝ってシーズンダブルとなるのでしょうか。
愛媛FCの現状とあれこれ
愛媛は現在10勝5分16敗の勝ち点35で14位に位置しています。最近5試合は2勝3敗となっています。上位の大宮に対しホームで5-1と勝利を収めその強さが一部で話題になりましたが,その後は福岡と徳島に連敗となっています。得点も千葉戦3点・鹿児島戦2点・大宮戦5点と複数得点を挙げていましたがここ2試合は無得点と波に乗り切れない現状です。
夏の移籍はどちらかというと静かなものだったと思います。加入放出ともに1名ずつです。outでは出場機会の少なかったGK馬渡洋樹をレンタルで川崎に放出しました。inの方ではDF茂木力也を浦和からレンタルで獲得しました。
獲得は茂木だけとなっていますが,この茂木がすでに愛媛の重要な選手になっています。加入後7試合でスタメンフル出場と3バックの右においてなくてはならない存在になりつつあります。展開予想のところで触れますが山口にとって注意が必要な選手の1人です。
愛媛の数字でおもしろいと感じたのは,ホームとアウェイでの試合展開による戦績の違いです。ホームでは6勝3分8敗,アウェイでは4勝2分8敗と戦績だけを見れば違いはほとんど見られません。しかし,これに先制点の行方という変数を加えるとホームとアウェイの違いが浮かび上がってきます。
まずは愛媛先制時の戦績です。ホームでは6戦6勝,アウェイでは5試合で1勝1分3敗です。つまり,ホームでは先制点が100%勝利に結びついているもののアウェイでは先制点が1度しか勝利に結びついていないということです。
次に愛媛が先制点を相手に許した時の戦績を見てみましょう。ホームでは9試合で1分8敗,アウェイでは8試合で3勝5敗です。先制点を許した時はアウェイの方が戦績が良いことが読み取れます。
この数字からホームでは先制逃げ切り,アウェイでは逆転勝ちという異なる勝利のパターンがあることが読み取れます。ホームの先制時勝率100%はリーグで愛媛を含めて3チームしかいません(他は大宮と山形)。逆にアウェイの被先制試合の勝率37.5%は横浜・柏に次いでリーグで3番目の数字です。
なぜこのような違いが生まれるのかを考えるのは愛媛をずっと追っているわけではないので難しいのですが,アウェイでは先制点を挙げると相手が嵩にかかって攻撃をしてくることが推測されます。そうなった時に守りきる守備力とカウンター力が愛媛にはないのかもしれません。逆にホームでは自分たちが先制しても追加点のマインドを持ちやすく試合をコントロールできており,それが結果に結びついているのかもしれません。
先制を許した試合でもホームではベタッと引いた相手を崩しきれないけれど,アウェイでは相手もある程度攻撃してきてくれるために点が取れるといったことがあるのかもしれません。
もちろんたまたまこのような数字になっているだけのこともあるかと思いますので,愛媛を追っているサポーターで心当たりがある方がいらっしゃったら教えていただけると嬉しいです。
それからこの試合はオレンジダービーと呼ばれる?試合の1つですので愛媛の「オレンジがチームカラーの相手」との戦績を調べてみました。対象チームは山口・大宮・清水・新潟でJ2リーグでの対戦のみをカウントしました。
愛媛のオレンジダービーの戦績は7勝7分4敗でした。1試合の平均獲得勝ち点にすると1.56と相性は良いと言えます。山口との対戦を除いても4勝4分3敗と平均で1.45の勝ち点を獲得していますから相性は良いのだと思います。だから何だと言うわけではないんですけどね笑。
レノファ山口の現状とあれこれ
山口は9勝6分16敗の勝ち点33の16位です。愛媛とは勝ち点差が2となっていますから勝てば愛媛の上に行けるという試合になります。最近5試合は1勝4敗で現在3連敗中です。5試合のうち4失点の試合が3つもあり得失点差もいつの間にか-14になってしまいました。
山口の中で愛媛に対して最も多くのゴールを挙げている選手は田中パウロ淳一です。愛媛相手には8試合に出場して3ゴールを挙げています。山口では直近の2試合ではスタメンと出場機会を伸ばしているものの今シーズンはPKでの1得点を含む3ゴールと期待通りの活躍を見せているとは言い切れません。昨シーズンにハットトリックを決めた相手からゴールを奪い連敗中のチームを勝利に導いて欲しいと思います。
さて,先ほど愛媛のオレンジダービーでの戦績を紹介しましたので山口の戦績も紹介したいと思います。対象チームは愛媛・大宮・清水・新潟(J2リーグでの対戦のみカウント)と長野(J3リーグでの対戦のみカウント)の5チームです。
通算戦績は4勝7分9敗で1試合平均0.95の勝ち点を獲得している計算になります。これは相性的には良くないと言える数字だと思います。愛媛戦の勝敗を除いても3勝4分9敗で平均獲得勝ち点が1ですから分は悪いと言えます。
そして,オレンジダービーの戦績とともに乗り越えてほしいジンクスがJ2での9月のホームでの戦績です。これは岡山戦のプレビューでも言及しました。J2に昇格してから9月のホーム戦は前々節の岡山戦も含めて7戦全敗となっています。
「もう見たくないよ,この数字は」という方もいるかとは思いますが,とりあえず勝つまで書き続けます!今シーズンのうちにこの記録を止めるにはチャンスは愛媛戦を含めてあと2試合です。
展開予想
私の考える予想スタメンはこちらです。両チームとも読めないところが多いので何か情報を知っている方がいたらこっそり教えていただけると嬉しいです。
まずは愛媛から。前節の徳島戦は主力を何人か欠いての試合でした。山口戦で関わってきそうな選手でいうと,U-22の代表招集があった長沼,累積警告で出場停止だった野澤,アクシデントがあった丹羽が主なところだったと思います。丹羽の状態はどうなのかが分からないので1トップは前節そのまま藤本という予想にしました。
一方で長沼と野澤の2人は出場すると予想します。長沼は右サイドで愛媛になくてはならない存在だと思います。前節の徳島戦では木暮が出場していましたが,対面の徳島の内田に1vs1で抑えられることも多い印象でした。「左で作って右に展開して仕留める」は愛媛の1つの形だと思うのでそこに長沼は欠かせないと思います。さらに愛媛は長沼が出場している時に最も多くの得点が生まれています。チーム全体の平均得点が1.11であるのに対して,長沼出場時のチームの平均得点は1.28となっています。差は小さいですが,チームトップの数字であることは事実です。長沼が欠場した前節が無得点だったこともありますし,山口戦でも点を取るためには欠かせない選手でしょう。
中盤の野澤も数字を見ると重要な選手であることが読み取れます。その数字とは,スタメン出場時のチームの成績です。野澤がスタメン出場時は1試合の平均獲得勝ち点が1.61となっています。これはチームの中で1位の数字です。2番目の長沼の平均勝ち点が1.23ですから野澤の数字がダントツであることが分かります。中盤として攻守両面でチームを勝利に導く活躍を見せていることが読み取れます。
次に山口の予想です。今回のポイントは2つです。
まず1つ目のポイントはU-22の代表から帰ってきた高宇洋の存在です。前節は高を欠いた中で三幸をアンカーとして起用しましたが,前がかりになりすぎてバランスを失ったというのが私の印象でした。チームのバランスを取ることができる選手として,そして三幸を攻撃に専念させるためにも高の存在は欠かせません。代表帰りで強行になる部分もあると思いますがスタメン出場の予想としました。
2つ目のポイントはCB楠本卓海の出場停止です。彼の出場によって菊池の相棒が誰になるのかということに注目が集まります。ただ,山口のCB事情はかなり厳しいといえます。楠本の出場停止に加え坪井とヘナンが負傷中で出場できません。それから特別指定選手としてここ2試合ベンチ入りをしていた眞鍋旭輝は今週末から関東大学リーグが再開されるため山口には帯同しないのではないかと思われます。そのため眞鍋も起用できないのではないでしょうか。(ちなみに同じく特別指定の横浜FCの松尾は横浜に残っているみたいなので眞鍋も帯同している可能性がなきにしもあらずです。)
となると,考えられる起用はウズベキスタン代表帰りのドストン(帰ってきてますよね?彼)か小野原か必殺の前貴之CB起用の3択だろうと思います。1番可能性が高そうなのは前貴之のCB起用でしょうが個人的な好みでドストン強行出場の予想としました。
このプレビューも長くなってきたのでそろそろ終わりにしたいと思いますが,少しだけ展開の予想を。この試合のポイントは山口が愛媛のビルドアップをどのように阻害するかです。なぜなら,山口が愛媛のビルドアップを阻害できなくて2失点を喫したのが前回対戦だからです。
おそらくこの試合も両チームのシステムは噛み合いません。その中で山口がどのように噛み合わせていくのかに注目したいです。当然愛媛で注意しなければならないのは3バックの左の前野だろうと思いますが,徳島戦を見た限り右の茂木にも注意が必要です。愛媛はチームとして右の茂木を押し上げて攻撃参加をさせる形を持っています。徳島戦の後半もその形が何度も見られていました。愛媛は左からだけではなく右からも試合を作ることができます。そのキーマンである茂木の攻撃参加は警戒しなければなりません。
愛媛側から見れば,山口のディフェンスの背後を突けるかどうかがポイントだと思います。徳島戦の前半,愛媛はなかなか背後へのランニングが見られず苦しみました。ところが,前半の終わりから後半の頭にかけて神谷や藤本の背後へのランニングを使うことでペースを取り戻していきました。この試合を見て愛媛の攻撃がうまくいくかどうかの1つのポイントは背後を突けるかなのだろうと思いました。山口はSBが高い位置を取ります。その背後は突くべきポイントです。
前回対戦の1点目の形は両チームにとってヒントになるかもしれません。
山口が勝てば順位が入れ替わる一戦です。お互いにとって残留争いに関わらないために重要なオレンジダービーとなります。今更ですが私は山口サポなので山口の勝利を,そして9月のホーム初勝利を期待します。
*文中敬称略
*データは以下のサイトのものを参考にしています。
Football-LAB (http://www.football-lab.jp/kyot/preview/)
Soccer D.B.(https://soccer-db.net)
J.League Data Site (https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
transfermarket(https://www.transfermarkt.com)