J2リーグ 第10節 レノファ山口FC vs 京都サンガF.C. 感想

2021年シーズンのレノファ山口の10試合目、京都サンガF.C.との試合は0-2で敗戦となりました。今回はその試合の感想です。


試合中、終了後にいくつかツイートをしましたが、見返してみても大きく印象が変わることがはありませんでした。

感想はこれらのツイートに集約されています。このツイートに加えて、何か特別にを語ることもないと思っているのですが、次回の対戦に向けて、この試合で何があったのかを書き残しておきます。


予想しづらかった山口の京都対策

前半終了時に奇襲という単語を用いてツイートを行いました。この試合で山口が採用した戦い方は、京都からすると予想できていなかったと思います。それは、試合後のチョウ監督のコメントからも読み取れます。

しかし、ツイートもしている通り、山口からするとこの変更は、博打要素が詰まった文字面通りの奇襲ではなく、ある意味で必然の選択だったと思うのです。

京都は4-1-2-3のシステムで戦っています。ボール保持の際はWGの松田や宮吉が中に入って、大外をSBが使う形になることが多いです。これは最前線のウタカが流動的に動くことを想定したメカニズムになっていると思いますが、両WGとIHの選手がペナルティエリアぐらいの幅で、後ろからのボールを待っています。

これに対し山口は、3-4-1-2のシステムを採用しました。3バックが右から石川・渡部・眞鍋、右WBに澤井・左WBに高木、ダブルボランチに佐藤と神垣、トップ下池上、2トップに河野と梅木という形です。実はこの形、京都のボール保持に対して、机上では最も噛み合わせが良い形なのです。

前述の通り、京都のWGが内側に入る関係で、3バックを採用すると渡部-ウタカ、石川-松田、眞鍋-宮吉とマークが噛み合います。そして、IHの武田と福岡にCHの佐藤神垣、アンカーの川﨑に池上、2CBのバイスと麻田に梅木河野、高い位置を取りたいSBの荻原に澤井、白井に高木とすることが可能になります。

この試合のシステム変更は、上記の噛み合わせの良さを生かして京都のボール保持に制限を与える狙いがあったと思うのです。前半の飲水タイム付近でパス数のスタッツが出ていましたが、京都のパス数が少なく、狙い通りに苦しめることができていたのではないでしょうか。


大外をポイントにズレを生み出すボール保持

では、今度は逆に山口のボール保持です。非保持で噛み合わせにいっている影響で、ズレを生むためには、何かしらの工夫が必要になります。この試合では明確な狙いに基づく準備が見て取れました。

非保持の3-4-1-2からボール保持では4-2-4のような形に可変していました。4-1-1-4や4-1-3-2といった見方もできるとは思いますが、ポイントは、大外に高さ違いで2人の選手を立たせておくことにあったのではないかと感じています。

ボールを持つと、まずCHの選手が1枚最終ラインに下ります。この試合では神垣の方がその回数が多かったと思いますが、右に石川・左に眞鍋・真ん中に渡部と神垣(佐藤)の並びになります。そしてCHの片方が1列上がった位置にいるという4+1の形です。ここまではいつもの形と大差がないのですが、前線の並びが違っていて、大外にそれぞれ高木と澤井が待ち構えています。

つまり、左サイドは低い位置に眞鍋・高い位置に高木、右サイドは低い位置に石川・高い位置に澤井という関係ができており、石川と眞鍋のところでズレを作り、前進の形ができていました。

これは京都の直線的に強いプレスを逆手に取るようなイメージだと思います。WGの松田や宮吉は相手のCBに対してのプレスを狙いたい(この試合で言えば渡部や神垣)、そして内側に誘導して取り切りたいという中で、山口の最終ラインが4枚で開いた時に、大外のマークを誰がつくんだという問題が浮上します。SBが1列ジャンプして狙えれば最高だと思うのですが、大外の高い位置に高木や澤井がポジションを取っているので、簡単には出られません。WGの松田や宮吉がマークをすれば、CBのどちらかに時間ができますし、IHが外に出て行けばアンカー脇のスペースで池上や河野がボールを受けられる状況ができます。

眞鍋がいくつか縦パスをつけられていたのも、上記のようなメカニズムがあったからだと思いますし、関から河野へボールが入っていたのも、チームで狙いが共有できていたからだと思います。

なぜ、奇襲というほど奇襲じゃないという書き方になったのかというと、このような理に適った準備があり、それをピッチ上で体現できていたと思ったからです。


最終局面の質で勝負が決まってしまう

ただ、どれだけ準備ができていても、得点を取るか取られるかという最終局面のところで運命が分かれてしまうのが、サッカーというスポーツです。その点、京都の強さを感じましたし、チームとしての差を感じました。

1失点目は、飲水タイム明けでウタカがサイドに流れてプレーしていたのですが、それに対する準備ができておらず、隙を突かれるような形での失点となりました。

2失点目は、どこまでがそうかを断言するのは難しいのですが、個人的には京都のキックオフにおけるデザインプレーだったという印象を受けました。そう思ったきっかけは松田の動きです。

前半のことがあったので松田と宮吉がどちらのサイドに配置されるのかを注視していたところ、松田が変な動きをしました。右サイドに位置を取ろうとしていたと思ったら、笛の直前に何を思ったかセンターサークルを横断して左サイドに位置取ろうという動きを見せます。

そして宮吉からキックオフ、右サイドに唯一位置している白井がボールを持った際、左サイドに5人が配置されています。そして、白井が少し溜めてロングボール、そこに3人の選手が反応しています。そのこぼれを武田が拾い、少し遅れてきたウタカにパス、ウタカがボールを持つ時には既にウタカ・荻原vs澤井という2vs1のシュチュエーションとなっています。

ですので、澤井はマークできず、遅れてきた佐藤のカバーも簡単に交わされ、カットインからシュート、最初に反応していた3人がペナルティエリアの中でこぼれを狙っており、大外の宮吉が決めるという流れでした。

白井のボールを見ると、少し怪しいのですが、選手の配置、動きを見るとデザインされていたプレーだったのではないかと感じました。

京都の試合を全部見ているわけではないので、何とも言えないのですが、2失点目は山口からすると、非常に対応が難しかったのではないかと思います。京都がシーズンを通して初めて見せたデザインプレーだったのであれば、事前に想定することは難しく、後手後手になってしまうのは止むを得ないでしょう。2点目は単純に京都がお見事でした。ですから、悔やむのであれば1失点目だろうと思います。

また、山口の攻撃ですが、事前の準備もあり、自陣でプレスに嵌められてボールを奪われるシーンは少なくすることができていました。しかし、ゴールを奪うには最終局面での物足りなさを感じました。

その点では、前節の北九州戦を思い出しました。山口が北九州に対してやったことを逆に京都にやられた的なイメージです。

前節の山口の3枚の壁に対する北九州の攻撃と真ん中から動かないで最終局面に備えている京都の両CBに対する山口の攻撃とが重なって見えたのかもしれません。もちろん、京都の他の選手の戻りの速さによって、プレスを回避して前進しても、最後の局面で戻られてしまうという点もあったと思います。ただ、どれだけ他の選手を動かしても最後まで持ち場から離れない京都の両CBが大きな壁になっていました。

ハーフタイムコメントで相手センターバックの前のスペースをもっと使おうとありましたが、非常に理解できるコメントでありました。ここは次回対戦に向けての大きな宿題となります。チームとして崩しの形を作ることが最優先にはなりますが、もうしばらくするとそんなことは言ってられない状況にもなってきます。最終局面では個の質で解決できる部分もあり、このチームで言えば個人的には浮田のプレーに最も可能性を感じています(もう1人挙げるとするとケンティーですかね笑)。

チーム事情で左サイドでの起用となっていますが、この辺りももう少し試行錯誤が必要なのかもしれません。

10試合が終わり、降格圏の20位です。ただ、絶望的な内容ということは全くありません。もちろん、更なる進化は必要ではありますが、まだまだやれるチームのはずです。引き続き勝利を信じて応援したいと思います。



*文中敬称略

*この試合のハイライトはこちら


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