鬼門の9月の最初の一戦 〜J2リーグ 第30節 レノファ山口FC vs ファジアーノ岡山 プレビュー〜

J2リーグ第30節 レノファ山口FC vs ファジアーノ岡山のプレビューです。

前節の試合の振り返りはこちらです。


対戦成績

 リーグ戦では過去7回対戦のあるこのカード、対戦成績は拮抗しています。岡山が初対戦から3連勝を含めた4試合負けなしで山口に苦手意識を植え付けるのかと思いきや霜田監督就任後の3試合は山口が負けなしで盛り返すという流れになっています。
 前回対戦は,降りしきる雨の中ピッチにもところどころ水たまりができるようなコンディションでの試合でした。若干岡山が優勢に試合を進める中,後半39分に武田将平のゴラッソで先制し岡山がそのまま逃げ切るかと思われたところで途中出場の吉濱のこちらもゴラッソで山口が同点に追いついてのドローという試合でした。
 リーグ戦での両者の対戦のスコアを見てみると,1点を争うロースコアのゲームがほとんどであることが分かります。複数点を挙げたのは2017年岡山ホームでの岡山の1度だけです。この両者の対戦はいつも以上に1点が大きな意味を持つゲームになっています。


ファジアーノ岡山の現状とあれこれ

 岡山は現在12勝7分10敗の勝ち点43で10位に位置しています。プレーオフ圏内の6位の水戸とは勝ち点差が6となっています。十分にプレーオフ進出を狙える状況です。最近のリーグ戦は1勝4敗と負けが先行していますが,8月14日に行われた天皇杯では川崎フロンターレを追い詰めるなどチーム状態が悪いわけではないと思います。
 夏の移籍ではピンポイントで素晴らしい補強を行ったという印象です。長野下口稚葉をレンタルで放出をした一方で清水から西村恭史を育成型期限付き移籍で,そして松本から山本大貴琉球から増谷幸祐をレンタルで獲得しました。
 増谷は琉球でバリバリの主力でしたし,山本は自分が見た町田戦で良いプレーを見せていたのでこの2人の加入は岡山にとって良い補強だと思います。

 岡山で特筆すべき数字は得点を挙げた選手の数です。岡山の得点者数は今季のJ2の中で柏と並んで最も少ない8人となっています。リーグで最小の人数であってもこの順位に位置していることから,岡山は誰が点を取るかということから逆算してチーム作りがされておりそれがある程度うまくいっているのだと思います。その意味で岡山の中で重要な選手がイヨンジェであることは間違いありません。
 イヨンジェは今シーズンここまでリーグトップタイの17ゴールを挙げています。岡山のチーム全体の総ゴール数が34得点ですから1人で半数のゴールを挙げていることになります。彼自身にとっても17というゴール数はキャリアハイの数字です。これまでのキャリアの中では15年の長崎,16年の京都の時に挙げた7ゴールが最多でした。岡山に加入した昨シーズンも1ゴールという結果でしたから今シーズンは彼にとって飛躍の年になっているといえるでしょう。
 この活躍はチームが彼に点を取らせる設計をしているからだと言えると思いますが,イヨンジェがその期待に見事に応えていることもまた事実です。岡山がプレーオフに進出するためにイヨンジェのさらなるゴールが期待されます。

 岡山にとって心配な数字が9月以降の成績です。岡山がJ2に加盟した2009年から2018シーズンまでの月ごとの成績を確認したところ,9月を境に10月,11月と成績が下降している傾向が見られました。9月の通算成績は10勝19分16敗です。1試合の平均勝ち点にして1.09です。ちなみに2月から8月までの平均勝ち点は「1.36」9月から12月までの平均勝ち点は「1.04」となっています。シーズン序盤から中盤にかけてに比べてシーズン終盤の成績がやや下降していることが読み取れると思います。
 直近の9月以降の成績を見てみても,2018シーズンは2勝3分7敗(1勝1分3敗),2017シーズンは1勝6分5敗(3分1敗),プレーオフに進出した2016シーズンも2勝6分4敗(1勝2分)となっています(カッコ内は9月のみの成績です)。
 これらはあくまでも過去の成績です。今年のチームとの関係がどれほどあるのかも分かりません。ただ,岡山というチームがこういったストーリーを経ていることもまた事実です。
 今シーズンは8月に1勝3敗と負け越してしまっています。ここからプレーオフ圏内を目指すためにも9月最初の試合で勝利を収めこれまでとは違うということを示したいところだと思います。


レノファ山口の現状とあれこれ

 山口は前節ホームで長崎に0-4という大敗を喫しました。これで6月の横浜線から続いていたリーグ戦のホームでの負け無しが5試合でストップしてしまいました。ホーム連戦となる今節からまた仕切り直しといきたいところです。

 そんな山口は30日に新加入選手の内定が発表されました。桐蔭横浜大学の眞鍋旭輝選手です。山口の大卒のDFは楠本,菊池とチームに欠かせない選手になっていますので同様の活躍を期待したいところです。また同時に特別指定の発表もされましたので今シーズンのどこかで出番があるかもしれません。

 前回の岡山戦といえば吉濱のチームを救うゴールが大変印象に残っています。ですから,この試合でも吉濱に注目が集まるところだと思います。その吉濱についての数字を紹介します。実は吉濱が出場している時間帯が今シーズンの山口で最も得点が生まれているのです。チーム全体の平均得点が1.39であるところが吉濱出場時のチームの平均得点は1.87となっています。また,岡山相手にも通算2ゴールと山口の中では最も多くのゴールを奪っている選手です。
 その一方で吉濱出場時のチームの平均失点も1.87とチーム平均よりも多くなっています。しかし,1点を争うゲームとなることが予想される岡山戦において彼の得点に絡むプレーが試合を決めることになるかもしれません。その意味でもこの試合は吉濱に注目です。

 山口でプラスにしたいジンクスが日曜日に行われる試合の成績です。現在日曜日の試合は3連勝中となっています。今シーズン日曜日に行われる試合はこの岡山戦を含めてあと7試合です。どこまで連勝記録を延ばせるでしょうか。
 一方で跳ね除けたい悪いジンクスが9月のホームでの成績です。2016年にJ2に昇格して以降,9月のホーム戦は0勝0分6敗です。まだ6試合しかしていないのですが勝ち点を1つも取れていないのです。6試合とはいえ山口がJ2のホーム戦で勝ち点を1つも取れていない月は9月だけです。ちなみに最後に勝ったのはJ3時代のY.S.C.C戦です。Jリーグではこの1度しか9月にホームで勝っていません。この試合で勝ってなんともしてもこの悪いジンクスを終わらせたいところです。


展開予想

 まず,この試合で注目したいのが山口の出方です。岡山は4-4-2でいつもの通り入ってくると思います。その上で前節の振り返りでも書きましたが,長崎と同じ4-4-2の相手に対して山口がどのように攻めどのように守るのかという点に改善が見られるかどうかに注目しています。
 私は,U-22の代表に選出された高宇洋が起用できるかどうかが1つのポイントだと思います。前節の2失点目のカウンターを受けたシーンなどを踏まえると前貴之の良さを出しながらリスク回避をするためには前貴之は真ん中よりもサイドで起用したいというのが私の考えです。高が起用できれば彼と佐藤のダブルボランチにして前貴之をSBで起用することができます。これが山口が現状最もバランス良く攻撃も守備もできる形だと思います。もし高が起用できないのであれば,その時は佐藤をアンカー,もしくは三幸とのダブルボランチが良いと思います。

 さて岡山の印象ですが,前回対戦した時と大きな違いはありません。町田戦は立ち上がりこそ良いシーンもありましたが失点前後から次第に町田ペースに引き込まれあれよあれよという間に3失点という内容でした。

  イヨンジェにどう点を取らせるかという点で言えば,サイドからクロスを彼に向かってあげることがまず大切になります。そのためにSBに高い位置を取らせSHが内側に絞ることをやってきます。岡山はクロスからの得点が23.5%と最も多くの割合を占めています。逆に山口はクロスからの失点が26%と最も多くの割合を占めています。戦い方からもデータからもクロスには大きな警戒が必要です。そして岡山は裏を取る動きも多く見せてきます。FWがサイドの裏のスペースに流れたり内に絞ったSHが2トップの間から飛び出してみたりなど流動的な裏抜けが特徴的だと思います。山口とすればどこまで人についていき,どこでマークを受け渡すのかが非常に重要です。
 岡山の攻撃で警戒したい選手は当然イヨンジェと仲間ということになるのですが,町田戦を見ていてイヨンジェの相方を務める山本も大きな警戒が必要な選手です。町田戦からは,彼はイヨンジェの負担を軽減する重要な仕事ができる選手だと思いました。サイドに流れてポストプレーから起点を作ったり裏に抜けてディフェンスラインと駆け引きをしたり,クロスに対してニアに飛び込んでファー気味に残るイヨンジェをフリーにしたりなど多くの仕事を高いレベルでこなしていたと思います。
 対戦相手からすればイヨンジェだけを警戒していると山本にやられるという展開が予測できます。2人セットで抑える必要があります。ここは楠本と菊池のコンビに期待です。

 ここまで岡山の攻撃山口の守備について書いてきましたが,逆の山口の攻撃岡山の守備で言えばセットプレーが重要になると思います。スタッツによれば,山口はセットプレーからの得点が22%とショートパスからの得点と並んで最も多くの割合を占めている項目です。岡山はセットプレーからの失点が31.6%ともっとも多くの割合を占めています。
 この噛み合わせですから山口のキッカーを務める池上や吉濱の出場がどのタイミングであるのかに注目です。

スタッツ的に言えば,お互いのストロングとウィークが噛み合っている対戦になります。どちらが自分たちのストロングで相手のウィークポイントを突き上回ることができるのかに注目してみると楽しめるのではないかと思います。


*文中敬称
*データは以下のサイトのものを参考にしています
 Football-LAB (http://www.football-lab.jp/kyot/preview/)
 Soccer D.B.(https://soccer-db.net)
 J.League Data Site (https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
 transfermarket(https://www.transfermarkt.com)

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