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1→3にするために 〜J2リーグ第35節 FC岐阜vsレノファ山口FC 振り返り〜

2019年Jリーグ第35節 FC岐阜vsレノファ山口FCの試合は,1-1で引き分けとなりました。今回はその試合の振り返りです。

この試合のプレビューはこちらです。


意欲的な岐阜の入りと中盤の攻防

いきなりですが,内容を考えると1-1の引き分けという結果はかなり妥当だったと考えています。試合中に両監督を施した対応がそれぞれ効果を発揮する時間帯があり,一進一退の攻防が続いた90分間だったと思います。

そんな試合を試合の流れを追いながら振り返っていきましょう。

プレビューにも書きましたが,この試合の最初の注目ポイントは岐阜の出方でした。前節の横浜戦の前半のように自陣に引きこもるのか,それとも後半のようにブロックを作りながらも前線からのプレスをかけていくのかという部分です。

この山口戦での岐阜の選択は後者でした。むしろ横浜戦の後半よりも強いプレスだったように感じました。ミシャエルと中島の2トップで山口のCB2枚に対して圧力をかけてきていました。前半立ち上がり5分は,岐阜がこのプレスで山口のCBに前方に長いボールを蹴らせたり前線でボールを奪ったりしており,このまま試合は岐阜ペースになるのだろうかと思って観ていました。

ただ,その後の5分ぐらいは山口がチャンスを作り出しました。きっかけは6分35秒頃の菊池のパスを三幸が受け佐藤に落とした場面だったと思います。

山口は岐阜の2トップからのプレスに対して2CBでビルドアップすることを試みていました。これのデメリットは数的同数なため岐阜のプレスをまともに受けやすいということです。開始5分はこのデメリットが出ていました。

しかし,この6分35秒のシーンはメリットのところが出たシーンとなりました。そのメリットとは中盤の攻防の中で岐阜が宮本と市丸の2枚であるのに対して高・佐藤・三幸の3枚で数的優位が作れるということです。このシーンは前貴之に中島がつきボールを持つ菊池にミシャエルがついています。これだけだと岐阜に嵌められる可能性が高くなるわけですが,ここで比較的浮きやすい三幸がうまく岐阜の中盤の脇でボールを引き出すことで前進することができたわけです。

直後の佐藤のサイドチェンジは相手のディフェンスにカットされてしまいましたが,その後の攻撃で川井のクロスから三幸のヘディングという決定機が生まれました。

このように中盤の数的優位を生かすことでチャンスを作っていきました。この時間に得点が奪えればよかったですがそうはいかず,逆にミスから失点をしてしまいました。

得点を奪うに至らなかった要因の1つは最終局面やその手前でのパスの質が足らなかったことだと思います。パスが弱かったりパスを右足に出したいところが左足になってしまったりなど非常に細かい部分でズレが起きてしまっていました。

そしてもう1つが中盤の選手がディフェンスラインに下りた時に効果的に前進できた回数が少なかったことだと思います。前半もだいぶ時間が経ってくると三幸や高がビルドアップでディフェンスラインに下りるという変化をつけていましたが,そうなった時に今度は山口の中盤の選手が1枚削られることになり岐阜の中盤の市丸や宮本に掴まれるシーンが出てきました。

大きくこの2つの点が悪くないながらも得点が奪えず,逆に失点をして0-1で前半を折り返すことになった要因なのではないかと感じています。


山口の2枚替えと岐阜の対応策

後半開始のタイミングで山口は宮代に代え高井を佐藤に代え吉濱を投入しました。これに伴い山下が1トップ,高井が左,吉濱がトップ下,三幸がボランチと配置が変更されました。

この変更はどのように前進するのかという前半の課題に対しての解決策の1つであったと感じます。まず高井を左サイドに配置することで彼の単独での突破からのクロスが期待できます。

前半も菊地や佐藤から左サイドへの中距離のパスが何本が通っていました。しかし,ボールを受けた先にいる山下は単独で突破するタイプの選手ではありません。ボールを受けて起点を作り,周りを使い周りに生かされる選手です。ですから,山下にボールが入ってもサポートが遅れてしまえば攻撃はやり直しになる可能性が高いわけです。

ボールを届けた先で何かを起こしてもらうために高井の投入となったのではないかと思っています。実際,高井はボールを受けてカットインからのクロスなどでチャンスを演出していました。

次に吉濱の投入についてですが,彼が担っていたタスクの1つが岐阜のSBとCBの間のスペースへのランニングだと考えられます。先に述べた通り高井が左サイドに張ってボールを受ければ当然そこには岐阜のSBが対応することになります。すると,出て行ったSBとCBの間のスペースが生まれやすくなります。

ここを突くのが吉濱の役目だったと思います。49分や61分のシーンでのランニングがそうでした。三幸もこの動きはできるのですが彼には後ろでビルドアップのサポートもしてもらいたいので,三幸にはそこに専念してもらい代わりに攻撃的な吉濱を投入したのではないでしょうか。

つまり,高井と吉濱の投入はボールを前進させて最終局面に辿り着くためにセットで考えられていたということです。

これはある程度うまくいっていたと思いますし,相手のブロックの外からディフェンスラインの裏へロングボールを蹴って山下の馬力を生かす攻撃もあり決定機も作りました。

ここで追いつければという感じでしたがポストにも阻まれまして得点が奪えないまま時間が経過していきました。

すると後半も68分になり1点リードしている岐阜の北野監督が手を打ちます。2トップの一角を務めていた中島に代わりDFの阿部を投入し5-4-1にシステムを変更しました。

この変更は大外の高井に素早くスライドできるようにするためと吉濱のランニングするコースを3バックにして埋めるためだと考えられます。

山口はこの後に1度ほどチャンスを作りますがその後はパウロを左サイドに投入しながらもチャンスを作り出せませんでした。個人的にこの北野監督の一手が終盤山口の攻撃を停滞させた大きな要因の1つだと思っています。

そんな山口は菊池を前線に上げたパワープレーも見せるなど強引に1点を取りに行きます。そしてこれが実り池上のゴールで1-1の引き分けとなりました。


試合開始からの岐阜のプレスとそれに対する山口の対応,後半開始での山口の変更とそれに対する岐阜の対応などお互いに試合中に修正を施しながら相手の良いところを消し自分たちの良いところを出すことをやろうとしていました。そしてどちらもできている時間とやられ気味な時間があったことを考えると妥当な引き分けだったと思います。

お互いに決定機に繋がりそうなチャンスの1つ目のパスがずれてしまうことで決定機にならないシーンがありました。この点が岐阜は残留,山口は1つでも上の順位でのフィニッシュをするためのカギだと感じた試合になりました。


*文中敬称略


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