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ホームで初めての逆転勝利 〜J2リーグ第38節 レノファ山口FC vs ジェフユナイテッド市原・千葉 振り返り〜

2019年Jリーグ第38節レノファ山口FC vs ジェフユナイテッド市原・千葉の試合は,3-2でレノファ山口FCの勝利となりました。今回はその試合の振り返りです。

この試合のプレビューはこちらです。


試合は山口が今シーズン2度目の逆転勝利を収めました。これでJ2昇格後初のホーム4連勝となりました。

内容を見ていくと,お互いに狙いとしていたことはある程度だせていたもののミスがあってゴールまで結びつかない展開だったように見えました。ただ,全体的には山口のペースだと言える試合だったと思います。後半の失点する前の時間帯は特にチャンスを多く作っていました。そんな試合で勝ち点を落とすというのが今シーズンの特に序盤の山口だったと思いますからその意味でも逆転して勝ち点3を奪った部分は非常に評価できるでしょう。

今回はお互いの狙いとしていたのではないかというプレーを振り返っていきたいと思います。「狙いとしていただろうプレー」というのは1度だけではなく複数回見られたプレーのことを指します。何回か見られたということは狙いを持って行っているのではないかということです。


前節からの修正と徹底したかった得点シーン

それではいきましょう。まずは千葉からです。

1つ目はクレーべに対するロングボールの部分です。これは前節の柏戦から修正を図ろうとしていたことが感じられたプレーでした。前節の柏戦ではボランチの熊谷と鳥海のところを消され,CBのエベルトと新井がボールを持たされた時に前線の工藤や為田が低い位置に下りてきてしまいクレーベが孤立した中でロングボールを蹴ってこぼれ球を拾えないシーンがありました。千葉は柏のプレスにこないで待ち構えるという守り方にまんまと嵌められてしまっていました。

それを踏まえた今節の試合で,山口は立ち上がりこそCBやGKまで強めのプレスをかけていたものの基本的には2トップが千葉のボランチを見るような形だったと思います。つまり柏と似たイメージで守っていたのだと思います。

それに対してこの試合の千葉はクレーべを目指してロングボールを簡単に送り,工藤を反応させることをやっていました。工藤はクレーべに向かってロングボールが蹴られることが分かると縦に走ってクレーべが後ろにすらしたボールを拾う準備をしていました。この部分が前節からの修正だったのではないかと感じました。

ただ,このプレーに対して山口も対応できておりここから千葉のチャンスというシーンはほとんどありませんでした。その要因として1つは「クレーべに簡単に競り負けなかったこと」もう1つは「工藤以外にこぼれ球に反応する選手が千葉になかなかいなかったこと」だと思います。

それから,狙いとまでは言えないかもしれませんが2つ目に千葉の得点シーンを挙げたいと思います。千葉の得点は2点とも似たような形でした。共通しているのははアランが川井を引っ張って米倉がフリー,そしてクロスに対してクレーベがファーサイドで待ち前貴之との身長のミスマッチを生かして競り勝つという部分です。

まずは米倉がフリーになったところがポイントだと思います。山口側から見れば1点目のシーンで米倉がフリーになったのは最終ラインと最前線の距離が開いてしまったからです。これは山口のゴールキックのこぼれ球を千葉が拾い山口の最終ラインが下がったことと千葉がビルドアップしようとして下げたボールに対して宮代や三幸,高井といった選手がCBに強めのプレスをかけたことが要因です。つまり下がった最終ラインとプレスをかける前線の選手が逆の動きになってその間の米倉がぽっかり空いてしまったのだと思います。

特にエベルトがボールを持った時に,高井が早めに新井のチェックをしていることと川井が下がったところでアランをマークしていることが重なって米倉が空いてしまった形でした。そこに佐藤がカバーに行きましたがそれも少し遅れてアランに川井の裏に走られてクロスを上げられてしまい勝負ありでした。

一瞬のほころびを突かれた形でしたがエベルトから米倉へのパスやそこからのアランのランニングなど千葉の見事なプレーだったことも間違いありません。

2点目は宮代が相手選手と接触して倒れた時の切り替えの部分で戻りが遅れて米倉がフリーになる形でした。千葉がボールを奪って左サイドに展開する時に山口は高井と三幸の2トップの形になりました。そうなれば本来高井がいるべきポジションには宮代が戻るべきなのですが,いかんせん宮代は倒れていて戻りが遅れてしまい熊谷から米倉へパスが出た時には完全に置いていかれてしまいました。

ここでもアランが川井の周りをうろちょろしていて1点目のこともあったのか川井は米倉のところへ出て行けずクロスを上げられてしまいました。

こうして振り返ってみると,千葉としては2点とも攻守の切り替えのところで一瞬のほころびを突けた形だったと思います。ただ,これが狙いかどうかが言い切れないのは得点シーン以外にこの形が見られなかったからです。特にクレーべと前貴之のところには明らかなミスマッチがあるわけですから狙いだったならばもっと徹底的に突いてくるだろうなという気持ちがあります。山口はもっと徹底してこの部分を突かれると嫌だっただろうと想像します。


ゴール前に迫る効果的な前進を得点に

次は山口です。1つ目は前半再三見られていた左サイドから相手のディフェンスの裏を狙うパスです。特に20分台にはなんども見られました。1番のチャンスになったのは22分のプレーです。高から大外の川井へパスが出た時に米倉が川井にマークに行ったところをワンタッチでその背後にパスを出して高井がフリーというプレーでした。他にもミスにはなりましたが19分や24分と立て続けに米倉が前に出てきたところの背後を狙っていました。

すると,このプレーが効いたのか26分には米倉が前に出られず川井がフリーになるというシーンも出てきました。これはその前に菊池のコントロールが乱れてアランがプレスに行ったのが1番の要因かもしれませんが川井が空いたのにはそれまでのプレーも多少なりとも影響したと思います。

2つ目は千葉のプレスに対しての中長距離のパスでの回避です。千葉は5分のような前線の工藤の強いプレスが特徴的です。1人1人のプレスの強度は高いもののチームとしての連動が見られないことが多いところがあります。ですから山口は工藤やクレーべの2トップでのプレスに対して高が下りて最終ラインを3枚にしたりキーパーを使いながら何度もやり直したりして前へのパスコースを作っていました。そして1つ奥のスペースに長めのボールを送りひっくり返すことを狙っていたと思います。

特に吉満のキックと宮代のキープからのターンが効いていました。例えば高井の先制点のシーンの一番最初の起点の場面です。吉満からの低くて速いパスを宮代が相手のディフェンスを背負って受けてからターンして右サイドに展開するプレーでした。これで一気に敵陣に進入できたことが先制点の1つのポイントだったと思います。

このように千葉のプレスに対して宮代の能力を使いながら対応することができていたと思います。52分のシーンなど何度かミスもありましたが,この点が優勢に試合を進められた要因だと思います。

それでも危うく勝ち点を落としかけたところには課題があると思います。ゴール前でシュートにつながる直前のプレーで少しのズレがあって決定機にならないところがこの試合もありました。スピードを上げ過ぎてしまってミスが起きたりワンタッチの難しいプレーを選択してミスがあったりしているのかなと思います。

来年に向けて残り4試合はこのような惜しいシーンをどれだけたくさん作りながら決定機に結びつけ,さらに得点にできるのかという部分に注目したいと思った千葉戦でした。


*文中敬称略


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