引き出しはいくつある? 〜J2リーグ第42節 徳島ヴォルティス vs レノファ山口FC プレビュー〜
J2リーグ第42節 徳島ヴォルティスvsレノファ山口FCのプレビューです。
前節の振り返りは挙げることができず申し訳ありませんでした。シーズン終了後に気が向いたら書き残しておこうかなと思います。
対戦成績
徳島と山口の対戦は過去7度あり,2勝ずつの五分の成績となっています。引き分けが比較的多い対戦と言えるのではないでしょうか。徳島のホームでの対戦も1勝1分1敗と全くの互角です。
そして,このカードもお互いに点を取り合う試合が多いことが読み取れます。徳島は全試合で得点を挙げており山口も無得点の試合は1試合だけとなっています。今年の対戦も互いに点を取り合い1-2で徳島が勝利を収めています。
点を取り合い,引き分けが多いという傾向が見られるこのカード,徳島としては引き分けでは足りない可能性がある状況です。徳島が勝ち切れるのか,山口が意地を見せるのかに注目が集まります。
徳島ヴォルティスの現状とあれこれ
徳島は現在20勝10分11敗の勝点70で5位に位置しています。最終節の結果次第で4位から8位までの可能性があります。4位の山形とは同勝点,プレーオフ圏外の7位京都とは勝点差が2となっております。勝てば自力でプレーオフ進出確定,引き分け以下だと他会場の結果次第ということになります(引き分けでもほぼ大丈夫だと思いますが)。
最近5試合の成績は4勝1敗と依然として好調な様子が伺えます。横浜との直接対決は落としてしまいましたが,同じく昇格を争う大宮や水戸には勝利を収めていますし,岐阜やヴェルディ相手にも取りこぼすことなく勝点を積み上げています。
毎度移籍市場では話題になることの多い徳島ですが,この夏は比較的穏やかな夏を過ごしたと言えるのではないでしょうか。加入は島屋八徳,放出は藤原志龍の1人ずつとなっています(チャキットの期限付き移籍満了に伴う放出もありました)。ですから,今年の最初の山口との対戦からメンバー自体に大きな変更はありません。
では徳島の数字紹介です。今回は2つです。
まずは後半戦の好調さについてです。徳島は後半戦に大きく勝点を稼ぎ昇格争いに食い込んでいます。前半戦終了時は勝点31で6位とは勝点差2の9位だったのですが,後半戦はここまで12勝3分5敗勝点39という成績です。後半戦だけの順位では3位となっております。8月から前々節の横浜戦までにかけては4連勝2度を含む12試合負けなしを記録しました。メンバーも戦い方もガッチリ噛み合い4月に山口が対戦した時とは完成度が全く異なっていることが予想されます。
そして,シーズン最終戦ということでこれまでの最終節の成績を手集計してみました。完全にオカルト要素が強いデータですから捉え方は皆さん次第です。
2005年以降の徳島の最終節の成績は1勝3分10敗と大きく負け越しています。これは2014年のJ1での成績も含めた数字です。ちなみにJ1での最終節はホームでのG大阪戦で0-0の引き分けでした。
最終節の唯一の勝利は2013年のアウェイ長崎戦です。ですから,徳島は昇格を果たした年のみ最終節に勝利を挙げていることになります。
最終節という括りではなくホーム最終戦という括りで計算してみると5勝3分6敗となっています。つまり,ホーム最終戦かつ最終節という条件になると非常に相性が悪い(1分4敗)ということです。
これまでのジンクスに従えば,徳島がこの山口戦に勝利することはかなり困難なミッションであると言えます。しかし,このジンクスは勝利すると一気に昇格も見えてくるものとなっています。このオカルトがどのような力を発揮するのか,それとも全く影響がないのか,頭の片隅に入れておきたいと思います。
レノファ山口の現状とあれこれ
山口は前節の逆転負けで13勝8分20敗勝点47の15位となりました。前節勝利を収めて琉球と順位が入れ替わりました。山口は最終節の結果次第で14位か15位でのフィニッシュとなります。昇格を争う徳島相手に意地を見せ,4連敗でのシーズン終了はなんとしてでも避けたいところだと思います。
それでは山口の数字紹介に移ります。
最終節は5位の徳島との対戦になりますが,山口は上位相手からどれだけ勝点を獲得できているのでしょうか。まずはそれを確認したいと思います。
数字上は昇格の可能性がある岡山を含めた上位9チームとの今シーズンの対戦成績は5勝3分9敗勝点18となっています。水戸へのシーズンダブルだけではなく甲府や京都,山形から勝利を挙げており15位という順位としてはそこまで悪くない成績だと思います。
ただ,山口より上にいる上位14チームとの対戦成績という括りだと,5勝6分16敗勝点21となってしまいます。1試合の平均獲得勝点にすると0.78になります。
これは「山口より上にいる中位チーム相手に全く勝利を挙げることができなかった」ということを表しています。
一方で,山口より下の順位に位置しているチームとの対戦成績は8勝2分4敗勝点26となっています。1試合平均で1.86の勝点を獲得している計算です。栃木には勝利することができませんでしたが,その他のチームからは全て勝利を挙げています。
これらの数字を見ると山口の15位という順位は非常に妥当であるというのが私の印象です。
1試合1試合で見ると昇格を争うような強いチームと戦っても勝つだけの力がある一方で,シーズンを長い目で見たときのチームの総合力という部分ではまだ昇格を争うようなチームとは差があることを感じさせられる数字でした。
なんだかシーズンのまとめのような気分になってしまいますが,まだ後1試合残っています。徳島との最終戦では強いチームにも勝てるんだという力をぜひ見せてもらいたいと思います。
そして徳島の方でも行った最終節の成績を山口の方も見ていきたいと思います。Jリーグ参入を果たした2015年以降の最終節の成績は2勝2分です。いまだ負けがありません。ホーム最終戦での勝利はまだありませんが,最終節となると負けがないようです。
昨年も最終節はアウェイの新潟戦で2-0の勝利を収めました。今年もアウェイでの最終節です。このジンクスが発動し勝利となるのかに注目したいと思います。
ちなみにこの試合でプレーすると佐藤健太郎がJ2通算300試合,田中パウロ淳一がJ2通算150試合出場になります。
展開予想
予想スタメンはこちらです。
山口ではU-22日本代表の活動で前節欠場した高宇洋が復帰できるはずです。前線の3枚の並びは予想が難しいのですが,前節の得点に絡んだ3人をチョイスしてみました。なお前貴之は前節に引き続き出場停止となっています。
徳島は基本的にはこのメンバーになると思います。右サイドは前々節の横浜戦で負傷した岸本が復帰できなければ前節に引き続き田向が起用されると思います。注目はボランチの小西が出場できるかどうかです。前節は欠場していましたが,彼は徳島に欠かせない選手です。出場できる状態であれば必ず出てくるはずです。
徳島は自分たちがボールを保持して試合をコントロールしてきます。Football-LABのスタッツを見ても攻撃回数111.9回(リーグ21位),被攻撃回数(109.5回リーグ1位)とともに少なく,行ったり来たりするオープンな展開にはならないことが読み取れます。
ですから,山口としては徳島に試合をコントロールされないように試合の中でボールを奪いに行く形を作る必要があると思います。闇雲にプレスをかけても徳島からボールを奪うことができませんので,どこのラインからどのような形でボールを奪いに行くのかが見どころとなるでしょう。
1つのポイントは徳島の後ろが3枚でビルドアップするのに対して山口は2トップの形でプレスをかけることが予想される点です。徳島は相手が2トップの時に数的優位を生かしてボールを前進させるのに非常に長けています。敗れた横浜戦でも皆川と齋藤功佑の2トップからの強いプレスに対して効果的に前進しチャンスを作っていました。特に長いボールを使ってのプレス回避が非常にうまいです。相手がプレスに来たところを長いボールを使ってひっくり返すことを常に狙ってきます。
GKの梶川も含めて最終ラインの全員が長いボールを使ってくるのですが,特に注意したいのがヨルディ・バイスの正確無比なサイドへのロングボールです。正直注意したところで止められるものでもなさそうなのですが…。それでも山口のサイドバックの選手はバイスからの大外へのサイドチェンジに常に警戒が必要です。
このプレーを防ぐために1つ懸念があるとすると山口のサイドバックに高さがない部分です。バイスの右サイドへのサイドチェンジは徳島の攻撃パターンの1つなのですが,そこに対応する川井の高さは少し心配なところです。このプレーだけを考えて左サイドバック楠本の復活はないと思いますが,それもありだと思ってくるぐらいにバイスのキックは脅威だということを覚えておきましょう!。
楠本のSB起用は徳島のビルドアップを防ぐ1つの策であると思います(多分ないですが笑)。そしてもう1つあり得る策が徳島の3バックにマンマークでプレスをかけるやり方です。これは水戸が採用した形でした。
水戸は4-4-2の形から福満が前に出て3トップ化をするというやり方でしたが,山口がこのような可変に耐えるのは少し難しいと思う部分もありますので,現実的にあり得る形は4-3-3のシステムで試合に臨むことだと思います。
シーズン序盤に採用していたあの形です。3トップで徳島の3バックにマンマーク,そして2枚のインサイドハーフで徳島のボランチもマンマークで捕まえる形が考えられます。
ここまで私が勝手にああだこうだ考えてみましたが,1つ言えることは「徳島に対して1個のやり方では勝つのは難しい」ということです。徳島に対して何か策を用意しそれがハマったとしても必ず徳島は試合中にその策に対して対応してきます。その対応の早さが徳島の強みだと思います。ですから,山口はチームとしての引き出しの多さが問われる一戦になるでしょう。
試合を観る方としては山口のシステムとプレスのかけ方に注目し,それに対して徳島がどのような対応を見せるのか,そして山口がそれに対応してどこまでやり合うことができるのかに注目するとよりこの試合を楽しめると思います。
シーズン最後の一戦,笑って終われるように応援しつつ徳島相手だからこそ感じられるサッカーの面白さも楽しみましょう!
*文中敬称略
*データは以下のサイトのものを参考にしています。
Football-LAB (http://www.football-lab.jp/kyot/preview/)
Soccer D.B.(https://soccer-db.net)
J.League Data Site (https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
transfermarket(https://www.transfermarkt.com)
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