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ゴール期待値という数字から今年のJ2のこれまでの振り返りと今後の展望を行ってみた

今回の記事のテーマはゴール期待値です。きっかけはFootball-LABのこのツイートです。

このようにFootball-LABのサイトでゴール期待値の閲覧ができるようになりました。ということで今回はこのゴール期待値を切り口に丁度シーズンの3分の1が終わったJ2リーグの振り返りと今後の展望を行ってみようと思います。


ゴール期待値とは

そもそもゴール期待値とはどのような指標なのでしょうか。Football-LABのサイトでは次のように定義されています。

ゴール期待値とは、「あるシュートチャンスが得点に結びつく確率」を0~1の範囲で表した指標であり、欧州を中心にサッカー界で活用され始めています。ゴール期待値はシュートの成功確率を表すので、値が高いほど得点が決まる可能性が高いシュートになります。

1に近づくほど得点の可能性が高いシュートであるというわけです。このような期待値はバスケットボールでは聴き馴染みがある言葉ですが、サッカーでどのように活用できるのかは私の中でイメージがついていませんでした。それも今回この記事を書いてみようと思ったきっかけなのですが、調べてみると面白かったです。


期待値に基づく各チームに対する印象と今後の展望

では、ここからはJ2各チームの期待値の数字を見ながら振り返りと展望を行って参りましょう。(参考ページURL:https://www.football-lab.jp/summary/team_ranking/j2/?year=2020&data=expected


まずは今回の記事における私の結論からお示ししたいと思います。以下、各チームに対するコメントです。これらのコメントを頭に入れながら、読み進めていただけると幸いです。

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ゴール数とゴール期待値の関係を探る

早速ですが、以下の図をご覧ください。

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こちらの図はFootball-LABのサイトにもありますが、ゴール数とゴール期待値の関係を示したものになります。縦軸はオウンゴールを除いた1試合平均のゴール数、横軸は1試合平均のゴール期待値となります。このゴール期待値は各試合において、シュート1本1本の期待値を算出し、それを合計して、試合数で割ったものとなっています。また、点線に近ければ近いほど期待値通りにゴールを決めていることになり、遠ざかるにつれて期待値と実際のゴール数に乖離があるということになります。

見てみると、図右上の徳島、磐田、水戸あたりは期待値も高くゴール数もその通りに生まれていることから、ゴールの可能性が高いシュートシーンを作り出しそれを確実に決めていることが示唆されます。安定してゴールを奪えているということです。逆に点線には近いものの左下に留まっている町田岡山あたりは、期待値の高いシュートシーンが少なく、それが得点数が伸びない一因になっていることが考えられます。

ここまでリーグ最小得点の栃木ですが、期待値を見るとリーグ中位に位置していることが分かります。ゴールになりそうなシュートシーンは作っているもののそれを決め切れていないことが想像でき、それを期待値通りに決めるだけで今よりも多くゴールを奪えることが示唆されます。逆に甲府はゴールを多く奪っているものの期待値では栃木よりも低い数字となっており、可能性の低いスーパーなゴールを決めていることでゴール数を担保しているのでしょう。ゴールを挙げられている今のうちに期待値の高いシュートシーンを作り出せるようになっておく必要があるのかもしれません。


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こちらは被ゴール、すなわち失点の図になります。図の下側が被ゴール数の少ないチームとなります。点線よりも左上のエリアが期待値よりも被ゴールが多く、右下が期待値の割りに被ゴール数が少ないエリアとなります。

まず目に入るのが図の右下の北九州千葉です。この2チームは、ここまで1試合平均1失点以下と数字上は堅守を誇るクラブと呼べるかもしれません。ただ、期待値を見ると1試合平均1.4点以上を取られていてもおかしくないことになっています。得点の可能性が高いシュートシーンを作られているもののゴールを奪われていないとすると、GKのビックセーブでピンチを凌いでいるということになるのでしょうか。北九州は永井、千葉は新井の存在が大きいのだと思われます。これらのチームは一見被ゴール数が少ないので、問題なしと思われるかもしれませんが確率の高いシュートシーンは作られていることになりますから守備の見直しは必要だと言えるかもしれません。一方、同じく被ゴール数が少ない栃木は被ゴール期待値もリーグ最小と文字通り堅守のチームと呼べるでしょう。

このように失点数は同じでも期待値という数字でその性質を探った場合に、どうやらそれぞれに違いがありそうだと分かるのがこの数字の面白い点だと思います。

また、ここまで被ゴール数の多い金沢山口は期待値通りにゴールを許していることが読み取れます。つまり、得点可能性の高いシュートシーンを多く作られ、それをちゃんと決められているということになります。まずはそうしたシュートシーンを作らせないようにすることから考えていく必要がありそうです。


実際の順位とゴール数、ゴール期待値との関係を探る

ここまでのゴール数とゴール期待値の話はFootball-LABのサイトでも分かることですので、ここからは少しオリジナリティを出してみようと思います。

そのために、実際の順位とゴール数、被ゴール数、ゴール期待値、被ゴール期待値を並べて比較検討していきましょう。以下の表をご覧ください。

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それぞれの数値においてリーグトップ5に入るものをピンク系の色で、ワースト5の物をブルー系で色付けしております。

表の中にもコメントしておりますが、まず分かるのはゴール数、被ゴール数と実際の順位にはある程度の相関関係があるということです。これはやはりということなのかもしれませんが、ピンクが上にブルーが下にいることが分かります。両方ともにピンク色になっている長崎、北九州、徳島が上位にいるのは納得です。

そして期待値と実際の順位の関連になりますが、こちらもゴール数、被ゴール数よりは薄いものの相関関係はあると言えるでしょう。ゴール期待値、被ゴール期待値がともにリーグの上位に入っている徳島、磐田、新潟の3チームはちゃんと上位にいます。

ここで着目したいのが、ゴール数、被ゴール数ともに期待値との大きな乖離がある昇格組の2チームです。北九州はいずれの数値も期待値よりも上手くいっています。ゴール数で言えば期待値が1.394のところが実際には1.8となっており差分が+0.4です。この差分0.4がどれほどの意味を持っているかはなかなかイメージしづらいと思いますが、年間トータルで考えてみると非常に大きな差であることが分かるはずです。Football-LABのゴール数、ゴール期待値はいずれも1試合平均の数字ですから、それに年間の試合数である42をかけることによってこのままのペースで進んだ時に年間何得点奪えるかということが想定できます。

北九州のゴール期待値1.394に42をかけると58.548となり、この期待値通りにシュートを決め続けると仮定すると年間59得点程になる計算となります。一方ここまでのゴール数である1.8に42をかけるとどうなるでしょうか。75.6になります。つまり、今の得点ペースは年間76得点を挙げるペースとなっているのです。差分0.4という数字は年間トータルで考えると17点もの差になるのです。こうしてみると、大きな差であることがイメージできるのではないでしょうか。

被ゴールの方もやってみましょう。現在までの被ゴールは0.7、被ゴール期待値は1.429です。差分は-0.7です。先ほどより大きな差となっています。これらの数字に42をかけた年間想定被ゴールは29.4、期待値の年間想定は60です。つまり、年間で60点を奪われるだけのシュートシーンを作られているが、実際には29失点しか奪われないペースに抑えられていることになります。これを良いか悪いか、どう捉えるかは非常に難しいのですが、期待値通りに普通にシュートを決め、決められるようになるだけで年間の得失点差がマイナスになるのです。見方によっては今が上手くいき過ぎていると捉えられると思います。期待値以上の結果を年間通して出し続けることは難しいのではないかというのが私の意見ですが、この快進撃がどこまで続くのかは注目したいところです。

一方、リーグ21位の苦しい戦いが続いている群馬ですが、こちらは期待値通りにシュートを決め、決められるようになるだけで状況が好転することが推測されます。現状はゴール数が0.8、被ゴールが1.9となっていますが、期待値はそれぞれ1.143と1.301とリーグ中位の数字なのです。ゴール期待値には若干の差がありますが、期待値だけを見ると北九州と今の順位ほどの差があるとは思えません。苦しい状況が続いているものの大事なことは今の戦いを続け、最後をちゃんと決めることであると考えられます。

このように、北九州と群馬は非常に特徴的な2チームです。これらのチームの期待値が今後どのように推移し、最終的に何位でフィニッシュするかによって期待値という数字が持つ意味が見えてくるでしょう。


シュート一本あたりの期待値を算出してみた

全体を通しては次が最後の表になります。

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こちらはゴール期待値、被ゴール期待値を1試合平均のシュート本数で割ったシュート一本あたりの期待値を算出した表になります。つまり期待値からシュート本数の影響を無くしてみたということです。

この表を見て改めて思うことが徳島の安定感です。シュート一本あたりの期待値も含め全ての数値がリーグトップ5に入っています。これは強いチームだと言えるのではないでしょうか。また、ここで注目すると面白いのが水戸です。水戸はゴール数、ゴール期待値がリーグトップ5に入っており、可能性の高いシュートシーンを作り、それをちゃんと決めているチームだという印象を持つでしょう。ただ、一本あたりのゴール期待値を見てみると0.092とリーグで19番目となっています。これが何を意味するかというと、水戸は積極的にシュートを打っていくことによってゴール期待値を担保しているということです。実際に1試合平均のシュート本数は16.6本とリーグでダントツの数字になっているのです。

シュート1本1本の可能性は期待値ほど高くはないかもしれないけれど、多少強引にでも積極的にシュートを打っていることが今の得点数につながっていると言えるのではないでしょうか。今年の水戸は「シュートを打たなければ始まらない」ということを最も体現しているチームなのかもしれません。


全体のまとめ

ここまで期待値だけでJ2リーグのここまでを振り返ってきました。オウンゴールの影響が省かれていることや1試合平均の数字ということで各試合の波というものを考慮できていないことは頭に入れておかなければなりませんが、議論のネタとしては非常に面白いテーマだったのではないでしょうか。皆さんの推しチームの1試合ごとの得点数と期待値の関係を見てみるのもいいと思います(そこまで時間を割けませんでした!すみません!)。

私としては、今後ゴール数や被ゴール数が期待値通りに収束していくのかどうかという点が非常に楽しみです。ある程度は期待値通りになると思いますが、そこは人間がやることなので、すごいプレーが飛び出したり、ミスが起きたりして期待値との乖離が出るのも面白さの1つだと思います。

ここまで期待値を検証してきた振り返りと今後の展望は各チームごとにコメントしているので、そちらをご覧ください。皆さんの推しチームについての考えやコメントについての質問があれば、どうぞよろしくお願いいたします。

本日からは中盤戦、まだまだ連戦は続きます。期待値を頭の片隅に入れながら楽しむことをおすすめします!

(冒頭に掲載した各チームへのコメントを再掲しておきます。)

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*データは全てはFootball-LAB(https://www.football-lab.jp/summary/team_ranking/j2/?year=2020&data=expected)のサイト内の物を参考にしています。

*記事内で1試合平均の数字から年間でどのくらいになるかということを話題にしましたので、各チームそれがどうなっているか分かる表を参考までに置いておきますね。

プレゼンテーション1 [自動保存済み]


*レノファについても期待値を元に簡単にコメントをしようと思っているのですが、本日の試合前にJ2全体についての記事を出したかったので一旦記事を公開します。後ほど追記しようと思っているので、その時はまたよろしくお願いいたします。

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