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去年の春のピクニック、ようやく皆んなと会えたり、恋の話を聞いたり、日本のアニメの話をしたり

昨年の春、初めて大人数で集まったピクニックの話だ。

僕が到着した時には、もう割と集まっていて、それぞれが4、5人の輪になり、お酒を片手に談笑していた。最初は、ようやく会えたねとか、ロックダウン中は何してたの?とか課題はもう終わった?とか、そんな話を皆んなでしてから、全員が揃った辺りで、大きな輪になって、一人一人の自己紹介が始まった。今まで、ヒロと呼ばれる事が多い僕の名前に「日本人らしさ」を感じていなかったけど、「ベイマックス」の主人公の名前だったり、少し前に流行った海外ドラマ「ヒーローズ」の登場人物 ヒロ・ナカムラだったりと、少なくとも僕の周りでは、日本っぽいらしい。(ベイマックスの原作の舞台が、東京だと言うことすら知らなかった。映画化された際に、サンフランソウキョウという、東京とサンフランシスコを混ぜた未来都市になったらしい。)

落ち着いてきたら恋の話が始まるのは、万国共通のようだ。え!ここ付き合ってんの!?ってカップルが何組か出来ていて驚いたけど、彼らは寮生活をしていたので、寮から出られなかったコロナの時期は、むしろ好都合だったようだ。ロンドンの学生の恋愛事情は、良くも悪くも日本の若者と変わらない。彼氏が構ってくれないから別れたいとか、遠距離恋愛だから夏休みに会えるのが楽しみだ、なんて言いながら恋人の写真を見せ合ったりしていた。日本の学生がデートでどこに行くのか知らないが、ロンドンの学生も、映画に行ったりクラブに行ったり、少し遠出してみたり、そんなに変わらない気がする。ただ、カップル達が人前で平然とキスをする。しかも、別に周りもそれに対して何とも思わない。それを目撃した時は、さすがにヨーロッパは違ぇな・・・、と面食らった。
良い驚きだったのは、同性カップルについて、みんながオープンだった事。この点、イギリスには自己紹介の時に、プロナウン(pronoun)を言い合う文化がある。プロナウンとは、日本語で「代名詞」という意味だ。ただ、いわゆる文法的な代名詞とも違い、それぞれのジェンダーを示す。例えば僕のプロナウンは、He / Himである。これの何が良いかと言うと、見た目は男性だけど内面が女性であるという人が、自己紹介の時に「自分のプロナウンはShe / Herだ。」と伝えることで、お互い不必要な探り合いをする事なくなる。最近の文化らしいが、これが広く浸透するあたり、羨ましい限りだ。ちなみに、構ってくれない彼氏との関係に悩んでいた子は、そのあと直ぐ別の男と付き合い始めた。元カレは、今だに未練があるとかなんとか、そんな噂が流れるところも万国共通だ。

ジュリアというイタリアからの留学生と、マヤというアメリカからの留学生と、3人で日本のアニメの話もした。二人とも、アニメ好きの女の子。日本に興味を持ってくれて、気軽に話してくれるから嬉しい。
ジュリアは、色々あって2年遅れで高校を卒業している。その後、ギャップイヤーといって、高校卒業後に、1年間かけてボランティアやインターンなど社会経験をしてから大学に入っているので、他の子に比べ少しだけ歳が近い。イタリア訛りの英語で、まくし立てるように喋り、小柄だけどエネルギッシュで、たまにシャイで、ボディーランゲージが大きくて、胸元にイタリア語で「流れるままに」とタトゥーを入れている。確かに「流れるままに」って子だ。
マヤは、シアトル出身。きゃしゃで、大人しそうな雰囲気だけど、実は芯が強い。というか、頑固だ。実技の授業で一緒になってから、よく話すようになった。印象的な思い出がある。一年目の最終学期、「どんな形式でも良いから、授業内容に対する理解を10分で示せ。」という試験があったのだが、それぞれパフォーマンスをしたり、描いてきた絵を発表したり、詩を朗読したりするなか、彼女は「前衛演劇」に対する理解を示すために、覆面を被った同級生にナイフを突き付けさせて、「残酷な天使のテーゼ」を流しながら、一言も喋らずに、10分かけてスイカを一個丸々食うという、かなりアヴァンギャルドな作品を発表し、教室を爆笑の渦で飲み込んでいたのだ。

ピクニックは、日が暮れるまで続いた。
冷たい春の風が心地よくて、つい飲みすぎてしまった。

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