走高跳と私。
「跳び方がわからない。」「楽しくない。」「何のためにスポーツをしているのか分からない。」
これが去年、いわゆるスランプというものに陥った私の練習中の気持ちだ。
私は体育大学の3回生で、中学生の頃から現在まで陸上競技の走高跳を8年間続けている。
走高跳に出会ったのは、中学生の初めの体験入部だった。当時の私は、両親が陸上競技経験者だということもあり、日常的にテレビで陸上競技の試合を見ていた。
テレビでは大抵、100m走や4×100mリレーなどが放送されていたため、幼い私は「陸上競技=短距離走」だと無意識に思っていた。そのため、「中学校に入ったら、陸上競技部に入部して短距離をしよう。」と決めていた。
無事、中学校に入学し、体験入部の日。
私の目に飛び込んできたのは、走高跳のバーの上をスルリと綺麗に越えていく先輩の姿だった。
それを見た瞬間、「楽しそう!やりたい!」
そう思った。あまりに私が見ていたからか、その先輩が「やってみる?」と声をかけてくれた。
「難しそう。」と思ったけれど、やはり好奇心には勝てない。見様見真似で跳んでみるとびっくり。何と背面跳びができたのだ。
私はこの瞬間、「これだ。」と思った。
家に帰り、「走高跳をやる!」と自信満々な私を見て両親はびっくりしていた。無理もない。ずっと「短距離をする。」と言っていた娘がいきなり、しかも、走高跳という専門的な種目をやると言い出すのだから。
そこから、私のハイジャンパー人生(ハイジャンプ=走高跳)はスタートした。
中学校は、指導者もおらず、遊び感覚で競技をしていた。ただただ、楽しいという思いだけだった。
高校に上がり、私は普通の公立高校の英語科に入学した。今思えば、高校で陸上競技を本格的にやるなら、いわゆる強豪校に行くべきだったかもしれない。
しかし、当時の私は、そこまで高みを目指していぬかった。だが、この高校に入学した事が人生のターニングポイントとも言える。
なぜなら、恩師との出会いがあったから。
私が入学した高校の陸上競技部は、他の強豪校のような「全国制覇」や「全国出場」などを目指すような生徒は少なかった。
しかし、走高跳を専門にしていた先生が顧問をしていた。
その先生こそ、後に私の恩師となる先生だ。
先生にとって、私は初めての走高跳をしている生徒で、私にとっても先生は、初めての走高跳の指導者だった。
そこから、私は先生の指導を受けた。先生の指導についてはまた別で記事を書くつもりだが、すごく相性が良かった。
私は、すぐに自己ベストが出た。
跳ぶのが楽しくて仕方なかった。
そこから、毎年、自己ベストを更新し、高校3年生になった時には、全国インターハイにも出場した。
そのおかげもあり、私は、無事、大阪体育大学にも入学でき、走高跳を続けた。一回生の夏には、171cmを跳び、人生で初めて170cmを越える事ができた。20歳以下の日本選手権では3位入賞もできた。
しかし、その次の年。私は、大スランプに陥る。
冬季練習も乗り越え、いざ、大学2回生のシーズンが始まるという時。私は、今までのような跳躍が出来なくなっていた。
「今までどうやって跳んでいたっけ?」
「バーが高い。怖い。」「もうわからない。」
そうなると、悪循環だ。
練習しても、「楽しくない。」「何のために走高跳をしているんだろう。」と、こればかり。
案の定、そのシーズンは力が出せなかった。
競技人生で初めて自己ベストが出せずにシーズンが終わった。
何をしていても、調子が悪いことばかり考えてしまって落ち込む。その時間が辛かった。周りにたくさん迷惑をかけているのも辛かった。
「もう走高跳を辞めたい。」
それしか考えられなかった。
辞めたら楽になるだろうし、苦しむ事もなくなるだろう。だったら早い方がいいと何度も何度も思った。
しかし、私は現在も走高跳を続けている。
なぜ、私は走高跳を辞めなかったのか。
「走高跳が好きだから。」
これしかなかった。
いくら高く跳べなくなっても、YouTubeで走高跳の動画を見たり、自分のカメラフォルダの動画を見たりしていた。
他の選手の跳躍動画を見ては、「羨ましい。」「悔しい。」「負けたくない。」と思っていた。
そして、「また、高く跳びたい。」と思っていた。
結局は、ずっと走高跳の事を考えていた。
コロナウイルスの影響もあり、大学での練習が出来なくなっても、自ら練習場所を確保して練習をした。
これも全部、「走高跳が好きだから。」
そう気づいてからは、走高跳を「やりたい」「やる」というマインドになっていた。それまでは、プライドか周りの期待か何かに「やらされていた」様に思う。
そして、現在まで競技を続けている。
現在、大学3回生でシーズン真っ只中。
シーズン初戦、大阪ICでは、優勝する事が出来た。
しかし、まだ、自己ベストは出せていない。
コロナウイルスの影響で、試合が中止や延期になる中ではあるが、私は、今シーズン、自己ベストが出せる気がする。
なぜなら、「やりたいからやる。」「走高跳が好き。」「楽しい。」という気持ちがあるからだ。
そして、この気持ちこそ、私がスポーツをする理由だ。
まだまだ、成長途中の私。
これからの成長が楽しみで仕方がない。
終。
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