アメリカ旅10
オネエおじさんに山に捨てられてしばらく立ち尽くした。
前を見ても後ろを見ても、鬱蒼とした林の中にひたすら続く真っ直ぐな道があるだけ。
車で1時間の林道をでかいリュックを背負って戻るのか、全く未知の道を進むのか。
時刻は昼前。水はペットボトル半分。食料なし。夜は氷点下。テントなし。
仮に車が通りかからんかったら戻る道は推定80km。荷物もあるし大通りまで早くて明日。遅くて明後日。死ぬことはない。
未知の道はその先に町があるのかないのか、あるなら何キロ先か、何もかも不明。
気になるのは未知の道。大変やけど安全なのは元来た道。
まだ絶対絶命ってほどではないけど、さっきまでとは違う意味でなかなかの状況になってしまった。
振り返ってもオネエおじさんの身体を受け入れる選択肢はないし、ヒッチハイクで止まってくれて乗らん選択肢もない。
反省するとしたら、オネエおじさんの性癖含めた自我を完全否定して、オネエおじさんを傷つけてしまったことに尽きる。
歪んだ自我もオネエおじさんの生まれ持っての性質やと仕方ないことかもしらんし、何よりオネエおじさんの嫌な面を引き出したのはおれの態度のせいなのは明らかやと思った。
ホピで儀式を待ってたらって頭をよぎったけど、そっちを選択したとしても、もしかしたらこのタイミングで自分の態度のせいでなにかしらのピンチが訪れてたんじゃないか?って思った。
そうやとしたら、今の未熟な精神のおれに必要な経験がやってくるのはどうせ避けられへんってことやから、ここで動物に襲われるなり、未知の道に行ったとして何もなくて力尽きるとしても、それはそうゆうもんやったってことになる。
引き返したら多分安全やけど。
。。。
頭の中会議が煮詰まってきてよく分からんくなってきたけど、ホピを離れても命の危機がやってくるんなら、もうそうゆう運命やったって思うしかない。
どうせやったら運に任せようって思って棒が倒れた方に進むことにした。
棒から手を離して目を開ける。
未知の道。
まじかよ。
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