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【女優とゲイと私たち】1.北風と太陽

イソップ寓話の「北風と太陽」。力比べをする北風と太陽が決着をつけるため、目の前を通りゆく旅人の「上着を脱がせたもん勝ち」という勝負に挑む。

北風は、旅人に強く風を吹きつけて上着を脱がせようとするが、旅人は凍え、よりがっちりと上着を着込んでしまう。反対に太陽は、暖かく照らして旅人を包みこみ、強い日差しに汗ばんで旅人は上着を脱ぐ。よって勝負は太陽の勝ち。力技で人を思い通りには動かせない、という比喩で語られることもある。

その後、旅人はどうなったんだろうか。

真っ当に照らしてくる太陽を、恐れはしなかっただろうか。あまりの眩しさに目を背けたくなりはしなかっただろうか。暖かさから、逃げ出したくなったりはしなかったんだろうか。

強く明るく輝くものに惹かれ、引き寄せられるも、近づけば近づくほどその偉大さに慄く。奥底に隠した後ろ暗さまで照らされてしまいそうで、怖くなる。眩しさから目をそらし、背を向けたくなる。湿った後ろめたさを秘めたろくでなしほど、明るい太陽にくりかえし惹かれ、恋をする。

しのぶさんは私たちの太陽だった。
彼女を中心に集い、ひしめきあうように暮らした。そうしてひとりずつ、逃げ出すようにいなくなった。私も、逃げた。まぶしかった。汲めども尽きぬ、彼女の優しさが怖かった。所詮ろくでなし、何も返せはしないのに。

太陽から逃げ、また太陽を想っている。

月日が流れてもかわらない私の太陽・しのぶさんに、この物語を捧げます。



(一度誤って削除してしまい、今回加筆修正しました)


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