見出し画像

鈍色フラストレイション

欲求不満である。

天候がかくも心情に影響するものか、と感心したくなる8月。日々かわりばえのしない曇天。肌寒さから選んだ長袖に霧雨が染みる。鬱陶しいと思っていたはずの蒸し暑さすら恋しい。まだ夏らしい事を何ひとつ出来ていない。

大好きな季節から完全に肩透かしを食らい、長雨によるダメージがボディブローのようにじわじわと効き始めている。心が弱っても風邪をひくのだよ、と先生が教えてくれたのは小学生の頃。熱が出るたびに今尚思い出す言葉である。咳が止まらない。

盆休み最終日、せめて外出しようと近くのショッピングモールまで足を伸ばした。足を伸ばすまで5.6時間はかかった。やる気がまるで出なかったのである。模様替えでもしようかと、ぼんやりと雑貨屋をいくつか回っている最中、

そうやって不幸ぶろうとすんな、辛気臭え!

なんでもいいから楽しもうとしろ!

と内側から罵声が聞こえて我に返った。思わぬ喝に思わずぴっと背筋が伸び、妙に姿勢よくフランフランを見て回った。いくつかアートフラワーを選び、食器を吟味し、手芸屋をひやかし、ラーメンを食べた。

あの声はなんだったのだろう。中の人が見かねて喋ったか、ただの熱ぼけだろうか。いずれにしても御説ご尤も。
海に行きたい。
島行き計画を具体的に固めようと決意したやっぱり雨の帰り道。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?