酔わない女は誘われない
下戸である。
米どころ出身であり、顔立ちか雰囲気のせいか、お酒が強いどころか樽ごと空けそうにみえるようで、まったく呑めないことを告げると大抵驚かれる。
我ながらジョッキを干す姿が様になるのだけれど、残念ながら中身は毎度ウーロン茶。
余談だが、ソフトドリンクにストローを刺されるのはさみしい。お店側でオーダー区別のために必要なのだろう。ただ、気分だけでも味わいたいのに、仲間はずれのお子様扱いはいささかしょんぼりするものである。
とにかくアルコールが合わない体質で、酵素の持ち合わせがないせいか、ほんの少量も分解してはくれない。祖母以外、家族は皆下戸揃いなので遺伝もあるのだろう。お酒は慣れだと言われるけれど、そうとも限らないことを、挑戦と失敗を繰り返した結果、身を以て知った。
お酒を飲むと、一気に全身が赤くなり、ひどい頭痛、歯ががちがち鳴るほどの寒気ののち、腰が抜ける。注射前の消毒ではかぶれて腫れてしまうし、洋酒の効いたスイーツなどでもてきめんに酔っ払う。
酒宴は楽しいし、利き酒は出来るし、ビールの苦味がたまらなく好きだ。清々しい酔っ払いを見るのも面白い。
猫アレルギーをもつ猫好きさんの辛さがわかる気がする。自分の好きなものを自分自身が拒絶するバグはジレンマとなり、気持ちに折り合いをつけるまでがとても難しい。
カウンターバー。きれいないろのカクテル。きめ細かい泡が浮かんだビール。気泡を含んだガラスのぐい呑み。 スミノフのボトル。コルク抜き。華奢な脚付きグラス。フルーツをたくさん抱き込んだサングリアのピッチャー。
お酒にまつわるアイテムはどれも禁忌を帯びた憧れであり、嗜むひとにしっくりなじんでいるのを眺めては、切なく片思いをかみしめる。
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