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水際のことば

長い間いじめられっ子だった子供時代。どこにいっても何をしてもしなくてもまとわりつくその役割に、疲れ果ててしまったことがあった。

家族には一度も言えなかった。学校へ行くのを渋ることも出来なかった。どれだけ憂鬱でも、毎日その役割のために学校へ通っていたようなものだ。ただ、1番近くにいた祖母だけは、私の異変に気づいていた。

ばぁちゃんもね、死にたいと思ったことあったよ。

家で2人で過ごしていたとき、なんの前触れもなく、ぽつりと祖母が言った。意外なその一言に、驚いて黙りこんでしまった。

私にとっての祖母は、圧倒的に強く、厳しく、誰よりも愛情にあふれた優しい女性だった。
戦争を経験し、夫を亡くし、長男を亡くし、女手ひとつで子供たちを守り育て、たくましく生き抜いてきた祖母。どれほど苦しい思いをしたのかは計り知れない。笑顔で、なにげなく差し出されたその言葉は、ものすごく重い一言だった。

祖母の遺した言葉はいつも、ぎりぎりの私を食い止める。偉大な祖母から受け継いだ血が、私を心強くさせている。

#日記 #エッセイ #祖母

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