映画『システム・クラッシャー』~ベニーの居場所

「システム・クラッシャー」とは

タイトルの「システム・クラッシャー」とは、あまりに乱暴で行く先々で問題を起こし、施設を転々とする制御不能で攻撃的な子どものことをいうらしい。
PCやAIまわりのハッカーやウイルス的なことではない。


https://eiga.com/movie/90725/

キレやすくて、狂暴で、どこも誰も手をつけられない状態になってしまった9才の少女ベニーが主人公。
どの施設もベニーの受け入れを断っている。

特に顔に触れられたら、トラウマが発動する。
自分でも制御できない怒りで、まわりを傷つけてしまう。
大人たちは、何とかしようとするが、その場所がベニーは気に入らず、すぐに逃げ出してしまう。
これを繰り返してしまう。

ピンクの服装、これがベニーのキレやすさの象徴のようだった。
履き替えたズボンが、ピンクだったり。

ベニーの居場所

見ていてとても苦しかった。
映画はベニーに寄りそうでもない。
早く、誰か、ベニーに居場所を与えてやってくれと思いながら見ていた。

通学付添人のミヒャの提案により、3週間ベニーと森の小屋で過ごす。
ここも嫌がっていたベニーだったが、いつしか心を落ち着かせ、自然の生活を楽しむようになる。
ふたりで、やまびこをするシーンがとても印象的だった。
ベニーは、いろんな呼び方で「ママ。ママ―。マーマー」と何度も何度もやまびこさせる。
泣ける。
ベニーはママと一緒に暮らしたいだけ。

それがベニーにとって幸せな場所なのだが、ベニーの狂気がそう簡単にはさせない。
母親も愛情はあるが、ベニーと暮らすことを怖がっている。

ベニーの居場所は、森の小屋にも、母親との生活でもない。

爽快感と絶望

アイススケートの最悪のシーンだった。
ベニーは流血事件にまで起こしてしまう。

観客は、ベニーの顔に触れてはいけないということを知っている。
だから、ミヒャの赤ちゃんが、ベニーの顔に触れたシーンの緊張感がたまらなかった。
でも、ベニーは笑っていた。
ベニーの成長が感じられたシーンだった。
安心感というか安堵。
それも束の間、また逃走する。

恐竜のぬいぐるみを常に持っているのもかわいいところ。
でも、ベッドに縛りつけられて、こっちを見ている目は、狂気すぎる。
殺そうとしているような眼だ。

ラストの空港でのシーン。
搭乗直前に、逃げ出し、ぬいぐるみを持って笑顔で走るベニー。

この爽快感はなんなのだろう。
同時にそれは絶望でもあるのだが。

ふと、自分の幸せの居場所ってどこなんだろうと考えた。
家族がいる家のベッドの上だろうな。





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