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1 TEXTILE 1 STORY : SUSHI GUNKAN(2020)

お寿司シリーズ(2019)を作った後、「軍艦」も作りたい…という気持ちが沸々と湧き上がってきた。

軍艦イラスト

やるなら絶対モコモコに仕上げたい。海苔から今からこぼれそうなほどのモコモコ。数年前に作った「うにといくら」のアイディアを昇華させたいという気持ちが強かった。

いくらとうに

軍艦をやるとなればドビー機(無地やチェックなどが織れるベーシックなタイプ)ではなく次回もジャカード機(曲線が織れる)。ジャカード織りだと紋紙というデータを作ることが私ではできないので、(株)イワゼン岩田さんにお世話になります。

岩田さんがいるマテリアルセンター にはよく遊びに行っていたので、「次なに寿司にする!?」という岩田さんの問いに私は迷わず「軍艦をやりましょう!」という話になりました。

私の頭の中にはもうすでにアイディアがあって、ウーリーナイロンという素材でネタを作ったら良さそうだ、ということを岩田さんに伝えると「それはどこで買えるんやー?」という話になりました。
元々「うにといくら」で制作したときは私の師匠(有)カナーレの足立さんのおこぼれを頂いたので、ひとまず足立さんにウーリーナイロンをどこで買ったのか聞くところから始まりました。

電話すると足立さんは「ウーリーナイロンを買うのは難しいぞう〜。自分で探してみやあ」と塩対応。。自力で探すことになったのです。
私はネット等で探し、岩田さんは豊富な人脈の中で探していただきました。
やっぱりネット上には情報がなく、岩田さんが見つけてきてくれました!今回のウーリーナイロンがなぜ難しいかというと、通常はすごく細い糸のまま使うのですが、10本撚りで使用するため、別注という形になってしまうのです。ほんのちょっとのことなんですが、対応してくれるところはすごく少ないんですよ。

緯糸(よこ糸)に入れるウーリーナイロンの手配ができたことで現実的になり、早速他の糸も手配します。今回も(株)泰平商会さんで海苔のイメージの糸をご相談しました。決めたのはナイロンのスラリット。ナイロンの不織布がテープ状になったものです。これがめちゃ高い!笑

そして今回は土台にラメも入れました。ラメは泉工業さん。「最近ひよりちゃんキラキラしてないやん」と社長さんに言われ、確かに!キラキラなベースになりました。

ラメを入れるのはいいものの、ベースとなる綿の糸とラメの糸を撚らなくてはいけません!岩田さんとお付き合いのあった撚糸屋さんが亡くなってしまったので、新しいところを一緒に探そう!と車で一緒に行きました。機屋さんとか撚糸屋さんって普通の住宅街にあったりするので、「こんなところに!」と驚くことが多いんですよね。

今回の柄は当初、前回と同じように一貫ずつと考えていましたが、岩田さんに「前と一緒じゃつまらんやん!回転寿司は2貫ずつで回っとるよ!!」と2貫の柄を入れてみたらどうか、となり1貫2貫の柄となりました。

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全ての糸が揃いました。そして機屋さんに経糸をたててもらい、織りつけ(織り進める前の確認作業)へ。

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今回はカットする生地なので、織機にかかったままではよくわかりません。「切るかー??」と機屋さんが気を利かせてくれて一旦布を機から外します。

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柄が全然わかんない!笑

糸をカットして確認します。

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うんいい感じ!今回は織りつけ(おりつけ)で修正もほとんどなく進めてもらいました。「前よりかは全然織りやすいわあ」と機屋さん。SUSHIでは大変すみませんでした。。ここで大体3ヶ月ほどかかっています。

織ったものがどうなったか、どんな方に購入してもらったか、お客さんの反応などを機屋さんにはきちんとお伝えするようにしています。
自分の作ったものが誰に届いて喜んでもらったかは通常はほとんどわからないためです。「ほーきゃあ!そんなに喜んでもらえたかあ」と機屋さん。いつもありがとうございます!

さて、この生地はここからが大変。岩田さんとどのようにカットしたらいいか相談です。
「うん、ここは取り除いて、海苔はきれいに切らなかんなあ」

どれくらい糸を残すか、取り除くかを決めます。

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そこからは私1人の戦い。。高い海苔のナイロンを50%ぐらいカットするので「もったいない!!」と思いますがこれも面白い布のため。。(もちろんこの糸も捨てません)。

今回は1つのモチーフに対して海苔の部分とネタの部分をカットするため工程が多く、最初に時間を測ったときは50cm2時間もかかったほど。終わらないー!と叫びながら毎日毎日カット作業をしました。このカット作業だけで2週間かかりました。

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カットした後は生地を洗い、風合いを作る整理工程です。私はいつもみずほ興業さんにお願いしています。ウーリーナイロンは熱に反応してモコモコの質感に変わるので「ヒートセット」という加工をしていただきました。こんなに糸が出ていると整理の機械を壊さないかと私はいつもヒヤヒヤしているのですが、「軍艦できたよ!」とモッコモコの軍艦が完成!!

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ラメもきれいでゴージャス!軍艦というファニーなモチーフではあるけど、色味や風合いは最高に可愛いテキスタイルになりました。


SUSHI GUNKAN/ うに、ねぎとろ、いくら

TEXTILE DESIGNER : 小島日和、岩田義之(株式会社イワゼン)

YARN : (株)泰平商店、泉工業(株)

紋紙制作:野田紋工

WEAVER:本人様のご意向により未公開

WASH:みずほ興業(株)

デザイン・制作にかかった期間:4ヶ月

terihaeruのサスティナブルポリシー
・大量消費を目的とした大量生産はしません
・生産する上で出る、糸や布は廃棄しません
・terihaeruの商品を作る職人の幸せを優先し技術に正しい金額で生産します
・素材を吟味し、循環できる素材をなるべく使用します


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