私の面影が苦しいならば
あなたにとって私の面影が、ただただ苦しいものであるならば、すぐにでも丸ごと消し去りたい。記憶を手繰り寄せるたび、苦みしか残らないような、そんなどうしようもない思い出なら、全て手放させてあげたい。そんなことが可能なら、今すぐそうしたいと思う。
あなたにとってあの日々が、遠ざけたい過去であるならば、今この瞬間にでも全てを取り払いたい。出会いから別れまでの全てを。はじめから私が存在しなかった世界へ連れていきたい。
あなたの脳裏にある思い出などに、私の自意識を持たせられる世界線があったなら、羽かプロペラでも取り付けて、今すぐあなたから飛びたって消え去りたい。あなたの心の容量を空けて、少しでも身体を軽くするために。
でももう既に記憶から消えていると言うなら本望なので、あなたの記憶に呼び戻されることが、この先も、どうかどうか一生ありませんように。
あなたにとって、私との日々がそれなりに楽しいものであったならば、邪魔でない範囲で、頭の片隅に置いておいてほしい。
実用性や機能性は持ち合わせていないし、あなたの抱える痛みは当然消せないけれど、何かの拍子にあなたをふっと緩ませることくらい、できたらいいなと思う。あってもなくてもどっちでもいいけど羽織っておくか程度の、薄手のカーディガンくらいの存在として傍に置いておいてよ。
でも、
ほんとのことを言うよ、
あなたにとって私という存在が、苦しい色も、楽しい色も、どちらも保っているならば
無かったことには、まだしないでほしい。
手放したいタイミングがいつか訪れるのかもしれないけれど、今はまだ、そのときではないのだと思う。何目線だと、傲慢だと自分でも思うけれど。必要なときに、必要なだけ思い出の切符を使ってよ。枚数に上限も下限もないし、都合の良いように思い出にアクセスすればいい。思い出したくなくなったら、それでいいから。
だから、まだ今は
まだ今は記憶を捨てないでいて。
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