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吐き出し、書き出し

彼と別れてみて2週間くらい経ったんだろうか。まあ多分そのくらい経ったはず。少なくとも体感時間としてはそんなもんである。

吹っ切れたかと言われれば全然そんなことなくて、いまだにだらだらと連絡をとっている。ただ、それが毎日じゃなくて、おはようとおやすみがなくて、ほんの少し丁寧な文になっただけ。彼は連絡がまめな人だったから、毎日おはよう・○○に行くね・ただいま・おやすみ全部を共有していた。付き合い始めた5年前は他のお友達(もしくは私以外の恋人)にも同じくらい連絡していたから、今も変わらずいろんな人と連絡とってるんだろうな、じゃあ私がいなくても大丈夫だね、と思ったら案外そうでもないらしい。いつの間にか毎日おはようっていう相手が私だけになってたのね。今更そんなところで彼もいい意味で変わってるんだなと知った。今更な話だけど。

5年て長くない?長いと思う。少なくとも人生の1/4を一緒に過ごそうと頑張ってきた人のことを10日そこそこで諦められたらそっちの方が嫌でしょ。

でも、思い返してみたら、楽しい思い出がほとんど思い出せなくて、ただ苦しいことばかりが思い出されてしまってそれもまた空しい。
私以外の恋人と手を繋いで帰っているのを道路の反対から眺めたこととか、私以外の恋人からもらった誕生日のマフラーを私の目の前で大事そうに抱えていたり、私に「大事なものだから預かってて」なんて持たせてきたり、ハートが書かれたお手紙を挟んだまま私に教科書を貸してくるとか。
他の恋人とはお昼にデートするのに、私とは夜に電話するだけだったり、私がずっと我慢したツーショットを私以外の恋人と、ただの女友達とは撮ったり、遠足終わったら寄り道して帰ろうって約束したのに、他の人と観覧車乗るからやっぱ無理、だったり。他の子とは別れたよって言われたのに、他の子からの手作りのお守りを見えるところに付けていたり。
私が向かいの教室から眺めてるのを知ったうえで、女の子を膝の上に載せる(これは相手の女の子もどうかと思うけれど)とか。言い出したら止められなくて、でもまだ言い切れなくて。でもね、こんなのでも好きだったのよ。

夜の電話はほとんど毎日してくれていたし、体調崩すほど無茶したら珍しく怒ってくれるし、帰り道怖いとか、疲れて一歩も動けないとかなったら迎えに来て往復2時間くらいかかるのに乗り換えの駅まで送ってくれたり。毎日私が言わずとも「好きだよ」って伝えてくれて。部活が終わって倒れかけの私を毎日駅まで引っ張ってくれて、たまに部活の後に寄り道に付き合ってくれて。

こんな書きかただとただのDV男みたいだよね。もしかしたらきっとそうだったのかもしれないな。でもこれが不思議で、こんなのでも本当に大好きだったのよ。洗脳されてたみたいだけど、こんな些細なことをぎゅっと大事にしたくなるほど、愛おしかった。大事にしたかった。

すごく優しい人で、自分が辛いことよりも誰かが助かることを優先させてしまうような部分がある人だった。たぶん彼は困っている人がいれば迷いながら話しかけるし、それが知ってる人なら私じゃなくても最寄り駅まで送り届けるんだろう。そんなところが大好きだった。いや、今も好きなんだけど。

大荷物のくせに教室をいつも最後に出て、使ってない教室でも電気を消してドアを閉めてから集まりに出るところ。吹奏楽部が全員仲良しなんてできないとわかっているだろうに「みんなと仲良く楽しく部活がしたい」って全員の前で話せるところ。頼まれたら断れなくて体育祭で余分にリレーを走っちゃったり、苦手な指示や全体統括を引き受けちゃうところ。

ぱっと見なんでも器用そうにするのに、不器用なのが隠しきれないところが愛おしかった。今は昔より器用に色々こなしたり、上手に面倒事を避けるようになっちゃったけど、その成長も嬉しかった。彼が生きやすくのびのびできるなら一番うれしい。

お互い別々の大学に入ってから、今までのしがらみがなくなったようで、彼も私ものびのびできた。特に彼はやってみたかったんだろうな、という活動をはじめて、新しいコミュニティで楽しくしているようだった。

今まで耐えてきたはずの全ての悪いことが、全て何もなかったかのように緩やかに、穏やかになっただけ。


他の女の子とデートしなくなった。他の人の頭を撫でる姿をみなくなった。元カノとのイルミネーションの写真が全部のSNSからなくなった。
他の女の子からの告白を断るようになった。
付き合って3年以上のカップルだといえば、「長続きの秘訣は?」って聞かれるようになった。彼と顔を合わせたお友達には「彼はひよさんのこと大好きなの伝わってくるね!」「優しくてめっちゃいい彼氏じゃん」と賛成されるようになった。

あんまりに順風満帆で、穏やかで、むなしかった。
今までずっと苦しかったんだよ、って言ってたのを無かったことにされてるみたいで、嫌だった。
苦しかったのを誰も知らなくていいし、幸せなことだけでいっぱいになればいいはずなのに、それができない。私だけ前に進めない。彼を心から信用できない、そんな状態で5年の記念日を迎えたくない。ってか付き合っても付き合わなくても変わらないなら、付き合わなくていいじゃん。

そんなわがままを彼は全部受け止めて、そのうえで「どうしても別れなきゃいけない?」って食い下がってきた。彼はきっと付き合っても付き合わなくても変わらないなら、このまま付き合っていようよ、ってことだったんだろうなあ。それでもワガママを飲み込んでくれる優しさがまた身に染みてくるしまだ好きだし。ああしんどいまとまらない!!それだけ!!!!

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