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もしも大日本帝国が連合国だったら?

はじめに

 こんにちは。今回は世界史のもしこんなだったらなという空想の話から取り上げたいと思います。皆様は「日本」という国家は好きでしょうか?この問いにYesと答える人もいれば、人によってドイツのほうが好きとか、アメリカのほうが好き、イギリスのほうが好き、ロシアのほうが好きなど様々な意見が上がると思います。
 日本といえばアジア唯一の島国であり、韓国や中国との繋がりが深い国家といえます。しかしこれは欧米列強により、アジア諸国それぞれに異なったイデオロギーが露見し、以降それぞれが睨み合うようになり、第二次世界大戦ではイデオロギー同士で対立するようになりました。その中で、日本は欧米列強に負けないよう力を蓄え、立ち向かおうとしました。
 今回はそのような日本が以上のこととは違う方針を持ち始め、第二次世界大戦に立ち向かったら世界はどのように変わるのか考察していきたいと思います。

前史

 明治維新にかけて、日本はアメリカによる開国政策によりアジアだけではなく世界各国との外交を始めて行うようになり列強に立ち向かうために今までの伝統を捨て、中国や韓国などに立ち向かい、技術の差で二国を圧倒しました。
 
日本の近隣諸国であり欧米列強であったロシアは日本の動きを気に食わず、黄禍論の流行していたドイツや同盟を結んでいたフランスと共に講和会議中、日本を圧迫した。日本は他国と比べれば発展途上国であったため、欧米列強相手の戦争となれば総力戦は不可欠の状態でした。そのため国内は三国干渉の腹いせとして臥薪嘗胆を掲げる開戦論と列強諸国内でも巨大な領土を保有するロシアと戦ってもこちらが不利であり、自国の文化が破壊される可能性もあるだろうと考える非戦論に二分された。しかし、世界情勢から眺めるとこのような圧迫を行っていたのは日本だけでなく、トルコやカザフスタンなどのアジア諸国に対して広く行っていた。そのためこれをまた気に食わない国が多く存在していた。特に列強諸国内で同じ海洋国家であるイギリスとアメリカは、ロシアが海洋に面するようになれば、立ち向かう対抗策すら存在しなくなるという考えを持っているため日本の手助けとして大きな後ろ盾を得ることとなった。これにより、開戦派の主張に大きく傾くようになると日本は韓国、英国と協力しロシアに立ち向かった。特にロシア唯一の不凍港であるウラジオストクはロシアにとって最大の海軍拠点でありそれを攻略するための時間を要した。そこに軍艦を置いていなかったロシアは(とはいえ陸軍が多かったため日本軍も大きく疲弊することになった)、バルト海沿岸から日本列島へと向かうが、肝心のスエズ運河は英国により封鎖されているためかなりの遠回りをしなければならず疲弊したロシアに和平交渉を持ちかけることに成功した。
 これに驚愕したドイツやオーストリアは国内の黄禍論が更に大きくなり、ロシア国内でも共産主義革命が勃発するようになっていった。そのためロシア、ドイツ、オーストリアなどの国は大きく混乱したまま第一次世界大戦を引き起こし戦線が泥沼化することとなった。強大化したアメリカやイギリスはこの戦争に大きく貢献することができ、ドイツ不利の講和に持ち込むことに成功した。
 しかし日本は、日露戦争勝利後領土的野心を持つようになり、中国に対して二十一か条の要求を突き付けた。一方アメリカは、第一次世界大戦中の演説や講和会議にて民族自決を主張し、各々の植民地を国に戻すよう訴えた。その民族自決の考えの内の一つに日英同盟が障壁として立ちはだかったため戦後のワシントン条約にて同盟をやめさせるように忠告し、太平洋諸国を保全するよう訴えかけた。これを許せなかった日本は、中国やインド、東南アジアを領土に持つ南進論の構想を立てた。そしてドイツやイタリアも、第一次世界大戦後の講和条約に不満を持ち領土的な野心が生まれるようになった。当時インドや香港は英国が保有していた領土であり、この構想を抱いた日本に警戒心を露わにするようになった。更にアメリカを始めとした世界恐慌でこれを悪化させ、日独伊三国がアメリカに対して敵意を向けるようになり第二次世界大戦に直行することとなった。

史実での日本

 史実での日本は、満州事変を起こし国連未承認国家である満州国を建国した。リットン調査団により、日本軍による攻撃で建国した傀儡政府だと発覚するとアメリカ、英国、フランスなどの国は日本に対して強く非難し、日本自身も国連脱退を余儀なくされた。そして日本は日中戦争を起こし、南進をしていった。しかし中国の領土はとても広く最初こそ北京や南京、上海を陥落し順調に進んだものの、内陸の山間部である重慶攻略戦は、相手の軍備が整っていたため戦線が膠着していた。
 この頃中国は国民党と共産党が対立しており、それぞれ連合国(米英仏)とソ連の後ろ盾を持っていた。しかし日本による侵略が続くと、中国は一体化し日本の進撃を食い止めようと動いた。そしてアメリカ、英国、フランスはベトナムやインドに続く秘密の物資支援路である援蒋ルートを設け、中国に輸送した。
 
そしてソ連との対立も大きくなり、モンゴルと満州国との間でそれが爆発した。しかし日本はソ連軍の強さや地理的不利も相まって戦線が膠着したため、日ソ中立条約を締結することによって両国間で合意した。(つまり独ソ戦で日本は介入しなくなる)
 この頃欧州戦線ではドイツがオランダ、ベルギーを経由する形でマジノ線を迂回し、フランスのパリに向けて進軍した。ドイツのあまりの強さに英国軍はダンケルクにて撤退を余儀なくされ、パリはドイツの手により陥落した。そしてドイツはフランスの領土を全て奪った。その中で仏印(フランス領インドシナ)はドイツとの交渉により援蒋ルートを遮断するため日本軍が占領することとなった。日本軍の太平洋進出に警戒したアメリカと英国は石油輸出を禁止し、ハル・ノートという最後通牒を突き付け、日本がこれを拒否したことから太平洋戦争が始まったのである。この戦争では対英戦線(ビルマなど)、フィリピン、ハワイと三正面で軍備を割かなければいけなくなった。中でもハワイは石油タンクがあり、アメリカを弱体化させる可能性があったため、日本軍はハワイ・真珠湾で奇襲をした。しかし真珠湾攻撃はアメリカの艦隊を弱体化させるだけであり、肝心の石油タンクを破壊するまでには至らなかった。そのためミッドウェー海戦以降、日本は負け続けるようになり、遂には英国や中国により大陸領土を奪還され、アメリカにより沖縄に上陸されることとなった。
 またドイツの降伏後、ヤルタ会談によりアメリカが広島と長崎に原爆を落とすことに決定し、ソ連が対日宣戦をすることで合意した。これにより北方領土や満州国、北朝鮮半島も奪い返され為すすべもなくポツダム宣言にて日本は降伏したのである。
 そして戦後世界はアメリカの統治下におかれたが、冷戦の経過につれ沖縄などを返還され、バブル経済期に戦時中の借金をアメリカに返し現在の日本となった。

もしも日本が連合国だったら?

 では、もしも日本が連合国だったらどうなっていたかを考察していこう。まず連合国になる条件には最前提としてアメリカ・英国・中華民国の条件を飲まなければならない。そして領土的な野心を無くすというのは確実だろう。中華民国はもともと民族自決の考えにより成立した国家であり、第一次世界大戦中に成立した袁世凱による独裁国家の中華帝国とは違う考え方を持っていた。そのため満州事変などを起こせば、日本が連合国になれる可能性が低くなる。しかし、日中戦争後であっても連合国になれる可能性は一回存在する。それはハル・ノートの条件を受諾することだ。ハル・ノートには以下のような条件を持っている。

ハル・ノート

第一項「政策に関する相互宣言案」

1.一切ノ国家ノ領土保全及主権ノ不可侵原則

2.他ノ諸国ノ国内問題ニ対スル不関与ノ原則

3.通商上ノ機会及待遇ノ平等ヲ含ム平等原則

4.紛争ノ防止及平和的解決並ニ平和的方法及手続ニ依ル国際情勢改善ノ為メ国際協力及国際調停尊據ノ原則

(略)

第二項「合衆国政府及日本国政府の採るべき措置」

1.英連合王国・中国・オランダ・ソビエト連邦・タイ・アメリカ合衆国間の多辺的不可侵条約

2.フランス領インドシナへの領土主権尊重、貿易及び通商における平等待遇の確保

3.日本の支那及び仏印からの全面撤退

4.日米がアメリカの支援する中国国民党重慶政府以外のいかなる政府も認めない

5.英国または諸国の中国大陸における海外租界と関連権益を含む1901年北京議定書に関する治外法権の放棄について諸国の合意を得るための両国の努力

6.アメリカによる日本資産の凍結を解除、日本によるアメリカ資産の凍結を解除

 つまり簡単に言えば「日本軍の侵略した中国やベトナムからの全面撤退、三国同盟の破棄など満州事変以前の条件に戻せば、アメリカとの貿易凍結も解除するし、中国の保全は守るぞ」という脅し兼提案のようなものだ。もし、これが受け入れられるようになれば満州国についての話となるだろう。しかしこれを受け入れてしまえば日本国内による反乱も大きくなり、民主主義者による蜂起で内戦が起きる可能性も生じる。世界情勢的にも現実的ではないため、ワシントン会議による交渉で日本側がアメリカの条件を受諾し、中華民国に対して宥和政策を進めること。つまり前者を条件にして話を進めようと考える。
 まず日英同盟は破棄することには変わりないだろう。なぜなら、この場合日本側や英国側も植民地主義を放棄することを前提に話を進めているため、これを破棄しない理由も無くなったからだ。しかし、その分アメリカと英国と日本と中国国民党は関係が良好のまま保全されることになる。その証拠に世界恐慌では、日本は韓国、台湾、南樺太と千島列島以外の領土を持たないため経済が一時的に困窮するものの、英国やアメリカからの支援で回復すると想定される。しかし、この世界の中華民国は日本が味方となる代わりに中国共産党と中国国民党による国共内戦が史実よりも早く行われる可能性が高い。この場合日本は高確率で国民党の味方につき、ソ連は国際的に非難されることとなるだろう。そのためドイツ、イタリアは日本ではなくソ連に近づく可能性が高い。また他にもドイツが中国と同盟を結び台湾奪還に動き出す想定も考えられるが、このタイミングで中国国民党がアメリカなどに敵意を剥き出しにする可能性はないに等しいため、おそらく史実通り中独防共協定は破棄されるだろうと考える。そのため構図はこのような感じになるだろう。

第二次世界大戦陣営図

 史実でもそうだが、日本はドイツの同盟国になる必要性は無意味だと思われる。なぜならドイツは大陸国家でありソ連に敵対しているのに対して、日本は海洋国家でありアメリカに敵対している。これはこの陣営でも発生し、枢軸国内でも裏切りが発生することになるのは間違いないだろう。
 流れとしては、ドイツがフランスを占領し、バトル・オブ・ブリテンが起こるまでは史実と代わりなく進んでいくだろう。このあと日本はシベリア戦線か、アフリカ戦線、またはその両方に向かう選択肢に絞られるだろう。これは英国やアメリカの対応にもよるが、アフリカ戦線ではイタリアはともかく砂漠の狐、ロンメルに苦戦を強いられることになり、英国が日本に派遣を求める可能性がある。この場合を取ると英国の目論見は「ドイツとソ連が同士討ちとなるかもしれないので、まずアフリカ戦線にいるフランスを奪還してヨーロッパを奪い返そう」と考えるものだろう。これを取ると史実通りにイタリアやドイツは陥落し、東西分断することになるのだが、日本は距離的にアフリカまで遠いため、比較的近いアメリカに頼む可能性が高い。またアメリカ側もF.ルーズベルトが選挙で選ばれれば、独ソ戦の戦況を見て積極的に連合国側で参戦する可能性が高くなるのでアフリカ戦線に動くだろう。その場合は日本側はシベリア戦線に動く可能性が高い。まずドイツは必然的にフランス、英国、その他諸国の攻略に石油を多く使うことになるため石油不足が発生する。ドイツにはルーマニアの石油資源を活用していたが、やがてその資源に限界が来るのは確実だろう。そのため中東にある石油資源地帯か、ソ連にある石油資源地帯を欲しがるはずだ。またドイツは東方生存圏や共産主義の殲滅を目指している。中東の英国軍による抵抗が強くなれば、同じ枢軸国であるソ連を裏切って攻撃する可能性は高くなるだろう。英国としても、「アフリカ戦線と日本本国の間は距離がある。軍の配備も間に合いそうにない。今ドイツはソ連を攻撃しているのか.....。そうだ、なら日本はソ連を挟み撃ちにさせよう。」と目論む可能性もある。ここで中国、日本はソ連に向けて動き出す可能性が高く、新疆、満州、樺太などから大規模攻勢をする可能性が高いだろう。そうなればソ連も二正面作戦を強いられるため降伏すると考えられる。そして、日中連合軍と米英仏伊連合軍がドイツを挟み撃ちにするとも考えられる。またドイツ、ソ連いずれかの戦闘に核兵器も使われる可能性が高いだろう。
 さてここまでの戦闘での講和条約でもいくつかパターンが生じる。
 まずソ連が白紙講話する、または連合国になる場合は史実と同じく、東ドイツと西ドイツで分割しソ連とアメリカの冷戦を起こすだろうと想定する。しかし、韓国と北朝鮮はもちろん中国の国共内戦もこの時点では中国共産党は倒されている可能性が高いため、ソ連は1970年代までという早い段階で崩壊することは間違いないだろう。
 次にソ連が日本、中国相手に無条件降伏した場合、土地を分割統治・傀儡化し欧米vsアジアの冷戦に突入する可能性を想定する。この場合は中国・ロシア・中東を舞台にして冷戦が繰り広げられると想定する。もしかしたら途中で中華民国と大日本帝国が仲間割れという展開もあるかもしれない。しかし、どちらにせよアジア側は広大な土地を保有しなければならず、結局は今のような(ただし共産主義国は存在しない)世界になっているだろうと考えておく。

おわりに

 もしかしたらこのような世界線になるかも?とかというものは他にも考えられるだろう。世界では何が起こるかわからない。しかし大抵の事柄は世界情勢を見ればヒントが湧くものだろう。第二次世界大戦もそのうちの一つだ。時には事実から離れた考え方を持つことも未来を生きるためには重要なことだと私は考える。

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