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記録的な台風から見る台風への予防方法


はじめに

 日本で起こる自然災害は地震だけではない。日本の位置する極東太平洋では、高気圧が発生しやすいため風の影響を受けて渦を巻いて西進または北上していく。では各地でそのような台風による大雨や暴風が相次ぐ中で、災害に対する備えが出来ているかと聞かれれば、以下の円グラフより「どちらかといえばできていない」という答えが多かったとされている。

 確かに、台風の方向は熱帯低気圧によって、日本に通らず、東南アジアや中国のほうに移動する可能性もある。しかし、台風が来ないとて暴風雨の被害に全く合わないかと聞かれればそうでもないだろう。
 先日、台風10号(サンサン)が西日本を中心に襲ったが、熱帯低気圧の範囲は台風の渦の範囲よりも広く、進路を把握し切れていても、範囲外である東京や静岡などの中部地方でも土砂災害や氾濫が発生するほど多量の雨が降り続いたといわれる。
 台風のことについては地理の知識でも習うことが多いが、風の動きを予測し、災害を防ぐ方法をすぐに思い付くことはとても難しい。そのため、今回は台風に関する今までの実例を挙げ、効果的な対策法を取り上げようと思う。

概説

 我々の暮らしている地球という天体の表面には、酸素などの空気が層状となって大気圏を形成し、宇宙空間内と明確に区別化している。大気はその中で圧力を増していき、やがて気圧となって気温を上昇させていく。気圧の高くなった大気が流れていく際にはもちろん風となる。高気圧であれば、風が中心部分に集まり、上昇気流を形成するため空気の密度は必然的に低くなり、雨雲が形成しにくくなる。逆に低気圧であれば上空から来た気流が中心に集まって下降気流を形成するとともに、密度が高くなるため、雨雲が形成されやすくなる。また気圧の運動は、地球と太陽の間の距離の差から生じる気温と密接な関係がある。気圧は温帯や熱帯、亜熱帯、乾燥帯のような地域であるほど軽くなっていき、寒帯や亜寒帯、冷帯になるほど重くなっていく。こうなると風の動きと温度は一定となり、亜熱帯、熱帯、温帯地域の多い赤道を中心として、風の流れが循環していく。このような空気の地球規模の移動を
大気大循環という。この熱帯低気圧が最大速となれば次第に積乱雲を形成し、風の流れで局地的に雨が降り続ける気象が発生する。極東太平洋、東アジアでは台風、北大西洋、カリブ海、メキシコ湾、アメリカ北岸ではハリケーン、南太平洋やインド洋ではサイクロンとそれぞれ呼称している。
 語源は、アラビア語で嵐を意味する「طوفان」がギリシャに伝わり、怪物を意味する「typhoon」と呼ばれたために北大西洋で発生する嵐を「タイフーン」と名付けていたが、清王朝でこの言葉が伝わると、このタイフーンという言葉を「颱風」と表現していたことから現在の台風という言葉が出来上がったとされる。
 台風は、下降気流のない台風の目を中心に風が集まっていき、どんどんと渦が大きくなっていく。発達した台風では、背の高い積乱雲が台風の目を中心に渦巻いており、これをアイウォール(壁雲)と気象学では言われている。台風の目の周辺は強い上昇気流を作っており、壁雲を取り囲もうとしている。
 また台風の階級には以下のような分類になっている。

台風の基準の比較

 台風の勢力を分かりやすく表現する目的などから、台風は「強さ」と「大きさ」によって階級が定められ分類されている。この分類基準は米軍によるJTWC(合同台風警報センター)から見るか、アジアの視点から見るかで大きく異なっている。例えば同じ台風の同時刻の観測において、米軍の合同台風警報センターが台風の強度に達したと判断しても、アジアでは強い台風の強度に達せず並の強さと判断する場合も生じる(1分間平均風速は10分間平均風速よりも1.2 - 1.3倍ほど大きく出る傾向にある)。また、最大風速で強さを分類しているが過去には中心気圧が用いられており、その名残りから、日本で発表される台風情報には中心気圧も網羅される。また、米国の合同台風警報センターでは最大強度階級130 knot(約67m/s・240 km/h)以上の台風のことを指して「スーパー台風」と呼んでいるほか、中華人民共和国(香港、マカオを含む)などでは風速100ノット (185 km/h) 以上の台風を「スーパー台風」としている。

台風の強さ比較

 また日本の気象庁では、強さだけでなく大きさを含めて比較している。風速15m/s以上の強風域の大きさによって分類する。15m/s以上の半径が非対称の場合は、その平均値をとる。なお、以前は1,000ミリバール(現在使用されている単位系ではヘクトパスカルに相当)等圧線の半径で判断していた。

台風の大きさの階級

台風の歴史と共通した進路

 最初に、日本で記録的な台風を観測したのは989年のことである。このとき近畿地方を中心に永祚の風が襲った。記録によれば、この災害により皇居をはじめとする建物のほとんどが崩れてしまい、洪水や津波も発生し、農家のほとんどが損害を負ったという記録が成されている。また、元軍襲来時にも台風が発生し、4000隻の船が沈没したこともある。そして、近代にはオスマン帝国の軍艦エルトゥールル号が和歌山県にて遭難し、救難活動を行っていた。そして1917年に発生した東京湾台風では、フィリピン東方から北東に進んで10月1日未明に東京北方を通過した台風で、東京湾に高潮発生、死傷者およそ3,000人、全半壊流失家屋6万戸。東京で記録した952.4ヘクトパスカルという強い台風であり、大損害を負っていた。また、戦後の1959年には伊勢湾台風が発生した。潮岬に上陸し、紀伊半島から東海地方を中心にほぼ全国にわたって甚大な被害をもたらした。伊勢湾沿岸の愛知県と三重県での被害が特に甚大であったことからこの名称が付けられた。死者・行方不明者の数は5,000人を超え、明治以降の日本における台風の災害史上最悪の惨事となった。そして1979年10月に発生した台風20号は熱帯低気圧としては観測史上世界で最も低い中心気圧(870hPa)を海上において記録した台風である。この台風は日本列島を縦断して全国に影響を及ぼし、北海道にも甚大な被害をもたらた。また中心気圧の他にも、台風として数々の記録を残した。
 このように台風は確実に決まった進路を取るものの、日本本土を襲う台風は様々であり類型化は難しいが、北緯15度付近のマリアナ諸島近海で発生して西寄りに時速20km程度で進み、次第に北寄りに進路を変えて北緯25度付近、沖縄諸島の東方で転向し、北東に向けて加速しながら日本本土に達するというパターンが考えられる。台風の経路として書籍にもしばしば掲載される型であるが、実際にはこのような典型的な経路を取るものは少なく、まれには南シナ海で発生してそのまま北東進するもの、日本の南東海上から北西進するもの、あるいは狩野川台風(1958年台風第22号)のように明確な転向点がなく北上するものなどもある。さらに、盛夏期で台風を流す上層の気流が弱く方向も定まらないような時期には、複雑な動きをする台風も見られる。

台風への将来予測と対応策

 現在では地球温暖化が進むことにより、スーパー台風と呼ばれるものが増えていくと思われる。また台風による影響により暴風(強風)による人工物や樹木の倒壊、高潮・高波や大雨による水害(洪水や浸水のほか、土砂崩れ・地すべり、送電線の碍子による放電現象・停電、落雷や竜巻、高緯度地区では雪も発生する。こうなると交通機関のダイヤが乱れることはもちろん、公共施設や野外・屋内施設の使用禁止になり、基本は住宅や避難場所に避難する形が多くなっていく。
 そのために日頃から防災グッズ(懐中電灯・電池、携帯の充電器、携帯電話、ライター、ヘルメット、救急道具、着替えなどなど)や、非常食・水などを用意し、情報を交流し、住宅内で異常がないか確認することが大切だろう。

おわりに

 災害が発生している間は、平凡な生活を送ることが難しくなるだろう。災害時に必要なことやものには書いていないが、メンタルケアを保っておくことも重要だ。

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